売られた。
自分の体験したこと無い体験を記述するには、それを頭のなかで映像化して具体的体験化、イメージで言うなら表現対象人物に憑依する感じで擬似的な実体験にするのが得策だと思う。
なので、プロットも重要だが書いている世界の地図を作成しておくのは非常に効果的。
え?私は両方共やってませんよ?
奴隷商人に引かれていく僕。
何故こうなったし。
あの2人のことだからなにか考えてるとは思うんだけどな、だからここまで従順についてきてる訳だし。
と言うか引きずられてる。おい、強引すぎやしないか。
何回か引っ叩かれたが、装備品の機能でダメージがクリップされているので一定以上の痛みはない。効かないのが分かったのか彼はむんずと首輪本体を掴んで歩き出した。
これには僕も大弱りである。呼吸出来るだけの余裕が残されていようがいまいが、弱くない力で首を絞められるのは大変な苦痛なのだ。
必然的に首輪を両手で支えて首が絞まるを防ぐと、自然に手の拘束となってしまった。
なんということでしょう。
◆
裏路地ばかり、何十分経ったろうか。
目に見えて日の傾きが変わったくらいは歩いただろう、いや僕じゃなくて僕を引っ張っていた人が。
体重が軽い上に軽量化までされているせいか、彼はかなり楽そうだった。
ちなみに僕の方はなかり辛かった。
まず、奴隷商人が引く力で引っ張り返すと非常に腕が疲れる。
それを治癒するために用いる魔法には、少なからずイメージが要る。
僕の場合は、魔法でイメージを補助しているので一般人よりはマシだが、それでも気を抜くと拷問に近い体験をする中で魔法を使うのは簡単ではない。
そして現在位置は、四方を高い建物(何かの会社だろうか)に囲まれた暗い行き止まりだ。
もっとも、今は僕の装備がかぐや姫の如く光り輝いているので、暗い印象はあるものの暗くはない。
あと、回復に必死だった僕は道順を覚えていないが、それは《[地下の迷宮] オートマッピング》があるから大丈夫だろう。
奴隷商人は今まで真剣な表情だったが、スッとにやけ顔が戻り、
「よし、ここまで来れば大丈夫だ――安心しな、お嬢ちゃんは高い性奴隷になるぜ」
いや、嬉しくないんだが。それに18禁方向に持っていくのを止めろ。
キレたら街が無いとか冗談にならない。それに起きたら小説が無いとか洒落にならない。
いや、おっとメタい話はここまでだ。
どうやら無線通信系の魔法を心得ているらしく、何処からともなく仲間と思われる人が現れた。
空間魔法まで使ってるのか。正直接続するだけなら簡単なので術者は貴重というほどでは無いはずだが、それにしてもこんな事に使うとは…
僕をここまで引きずった奴隷商人の男は、出てきたそいつ(奴隷商人の従業員らしい)に鎖の持つ部分を渡すと、どこかに消えていった。またお得な商談でも探しに行ったのだろうか。
そんなことを考えていると、すぐに奴隷管理の部屋に転移させられた。
自分以外の意思によって景色が変わり、若干戸惑っている所に腕が荒々しく掴まれ、そこに謎の焼き印が押される。
――あ、これ奴隷紋だわ。
なんだか、流れ作業のような小説である




