ちーと!
あり?他人始点の表記間違ってた?
今回の話、アルト視点のはずなんだけど下書きが「。」になってた。
「どういうことですか国王様!」
デルタ国王はモモカに詰め寄られていた。
「どうしてミライが帰ってこないんですか!」
モモカの顔は泣いてはいなかったが、怒りに満ちている状態だった。
怒るのも当然か、と冷静に見る余裕が私アルトには残っている。
でも、私の中も何も感じていないという訳ではない。
私の心の中には、「何故?」という疑問で溢れている。
ミライはとても強いし、それを鼻にかけて自慢したり、油断したりすることがない。
獣人国の国王も、ミライやモモカほどではないが充分に強いはず。
なのに、何故帰ってこないのか。
敵にやられたとしたら、どんな攻撃で?
しかし、ミライがやられている姿は想像できない。
あれから寝るときは一応確認してるけど、結界が張ってなかったことはないし。
(にしても、《完全障壁》に《遮音》に、いくつも重ね掛けしてるのが謎だけど)
ということは、無力化された…?
そういえば、モモカとミライは、自分の強大な能力のことを"ちーと"って呼んでた気がする。
独自の技ではなく、何か共通の技を持ってたとしたら…それを封じる手段があるかも知れないということ。
「モモカ、モモカ!」
「何?」
モモカは怒鳴るのをやめていたが、なお機嫌が悪いようだ。
「ミライが使ってるのは"ちーと"っていう能力なんでしょ?敵は、もしかしたらそれを打ち消す能力を持ってるかも」
「はい…?…ああ、そういうことね。まあありえなくはないけど…」
モモカは腰に手を当てて悩む。
敵の能力を把握することは、敵を倒す上で重要な事項である。
知れば、対策を打つことが出来るから。
しかし、予想に反してモモカはこういった。
「もしそんな能力があったら、どうにもできない…」
実に困り顔だった。
先ほどのような怒りの表情は見受けられない。どうやら片付けたようだ。
しかし、どうしてだろう…確かに、強大である"ちーと"を封じる能力は脅威だが、ならそれを使わずに戦えば良いんじゃ?
「チート能力を封じる…チート能力…そんなの、まるで最初からこの世界にチート異世界転移者が居るのが分かってたみたいな能力じゃない…」
不意に呟いたモモカの言葉を、アルトは聞き逃した。




