後払い式防御。
最後、もうちょっとなにかないのか、と思ってしまう。
結界を張ってからおよそ1時間。
猛攻とも呼べる攻撃を1時間も止まらずに続けた彼女は尋常ではないが、それを受けて耐久力がありあまっている結界もまた尋常ではなかった。
《反転》の効果を切らしたら修復に時間がかかるというか、できるか不明なので僕は耐久力が9割を切った頃に一回だけ修復した。
否―修復ではない、強化である。結界は、これで晴れて元の2倍の強度に成り上がった。
元々突破に十数時間を要するものを強化されたのだ。ひとたまりもあったもんじゃない。
現在は、ミキは切りつけを止めて様子を見ている状態だ。
時折こちらを見るのだが、何故か気まずそうに?顔を逸らす。
何故ハテナなのかと言うと、ちょっと見ている位置が高すぎて表情がよく見えないのだ。
「進展ないなぁ…」
思わず呟く。そう、暇だ。
暇だと言いたくなるくらいには暇だ。
耐久勝負のはずが、なんだこの静けさは。
無敵だって話だから、消耗させてそこを襲おうと思ったんだけど。
ちょっとこっちからけしかけてみようかな。
適当に魔力を集め、それにイメージを入れる。
すると無属性魔法の詰まった魔力玉が出来上がる。
これをミキに向けて放つと―ドーン!!
派手な音がして、ミキが吹っ飛んでいく。
すぐに結界にぶつかって跳ね返る。
お、結構面白いぞ。人じゃなかったら楽しんで見てたな。
ちなみに今使った魔法は、「対象を轟音とともに吹き飛ばす」イメージだ。
僕には今のところ、運動属性系統も音系統も使用できないが、相応の魔力を消費すれば同様の現象を起こすことはできる。
もちろん、使用魔力が10倍以上になるのが確実とか、不可視化不可能とか、遠隔起動や詳細操作が超高難易度とか色々制約は有るけれど、僕にはあまり消費魔力は関係ないのでぶっ放せる。
ぽよぽよ跳ね返るミキを見ながら、ありゃ、やり過ぎたかな…とか思うが、止める気はない。
跳ね返ってるだけではダメージないし、さっきの魔法も攻撃じゃないし。
彼女にはまだ一切のダメージを与えていない筈だ。
更に1時間経過。
30分前にようやくぽよぽよが終了したものの、ちょっと疲れてるみたいだった。僕も見てるだけで疲れた。
それからまた攻撃を開始しているが、どうやら一点を集中的に攻撃して割る作戦に出たようだ。
正直、多分最善策だと思う。ただし、《反転》の影響で結界が決壊するような雰囲気はないが。
寒い?ごめんね。
ところで、防御が強いやつを倒すのって面倒くさいな。
ゴリ押しが効く攻撃系統の方が扱いやすい。




