早めの到着。
結界新幹線に付与した《圧縮光球》によって、魔物相手に手軽にリアル奥スクロールシューティングを楽しんでいると、向こうに壁が見え始めた。
壁と言っても、この世界の街を囲むように配置されているアレだ。
その壁には、黄色によく分からない模様のついた旗が等間隔に設置されており、他の3国より主張が強い印象だった。
城門は他国より固く閉ざされており、衛兵数十人が守りを固めていた。
ここの魔物は弱くないが、グリーン周辺と比べると半分ほどの難易度のはずなので衛兵の数がいささかに多すぎる気もする。
結界新幹線のまま上空を通っても良いのだが、それだとこの結界新幹線の強度上突き破ってしまうので修復が面倒そうである。
ミライは、それよりも穏便な策として、門を吹き飛ばすことにした。
不可視の直方体の中に入っている関係で、衛兵には「人が馬車の数倍の速度で飛んできた」ように見えたろう。
槍や剣を構える衛兵の前で、3人は着陸して結界を取っ払った。
「あー、やっぱり警戒されるよな…」
「「そりゃそうでしょ!」」
2人同時にツッコミを食らったミライは、心なしか嬉しそうに見える。
ミライはMじゃないが、ツッコんでくれるのは嬉しいのだ。
ほのぼのした雰囲気とは裏腹に、衛兵の緊張感はピークに達していた。
なにせ、ミライは結界が消耗しなかった分の魔力を手に集めていたからだ。
その魔力、軽く1万超え。
そこまでの異様な魔力が一点に集められていたら、嫌でもそれを認知できる。
衛兵たちは冷や汗を流した。
しかし、ここまであからさまな脅威が目の前に居るというのに、討伐しないのは衛兵の名が廃る。
衛兵たちはお互いにアイコンタクトで連携を取ると、一斉に動き出した。
しかし、3人は―正確にはミライは―RPG気分でこの場に望んでいる。
つまりは、ただ倒すだけに飽きたらなかった。
「うおおおぉぉぉ!!《回転槍》!!」
「君が一人目の犠牲者か!おめでとう《[Nice! RPG Editor]技能編集》!」
その瞬間、発動された《回転槍》は跡形もなく虚空に消え去り、その代わり
「ぐはぁっ!き、貴様……」
衛兵が真っ赤に染まった。
■鑑定:《[Nice! RPG Editor]技能編集》
ある衛兵の持っていた《回転槍》の効果を、
「魔力を乗せて槍を回転させることで、貫通力を増す。回転する力は魔力依存」
から
「魔力を槍に込めると自爆する。爆発威力は魔力依存」
に書き換えました。
手品の種はこういうことだ。
衛兵からすれば、使えば一騎当千となれるスキルを使っただけで殺されたように見えたろう。
いや、そう言えば思いっきりスキル名叫んでたっけ。
口止めのために、一応抹殺しておこうか。
聖光属性魔法の数々で衛兵を抹消した。
聖なる魔法使ってるのに、やってることは限りなくブラックだな。
穏便とはなんだったのか




