不可視の攻撃。
やっぱり主観がおかしい……
舌打ちが聞こえた方向には誰もいない。
そんな不可解な現象を前に、
「まあ、見えないなら無視だ無視」
僕は普通に歩き出した。
さも、宝石だと思って近寄ったらガラス片だったから興味を失ったという風に。
戦っていられるほど、僕らには暇がないかもしれない。
勇者という名前の奴隷を召喚させてはならない。
そんな使命感をぼんやりと抱きつつ、ミライは歩いた。
◆
ふとミライが後ろを振り返ると、2人が居なかった。
「嘘だろ……」
数十分も歩いておいて一度も振り返らない自分を省みて、薄情なやつだと思ったが2人を探さないわけにはいかない。
最悪、勇者は僕が倒せばいいか―そんな呑気な事を考えながら、そのまま目的地の反対方向に向かって歩く。
結界を吸収した。
ここしばらくは、結界が張られていなかったので敵が近くにいるのでは、と当たりを見回す。
何処もおかしな様子はない。
ただ、風にこすれる葉音が鳴るばかりである。
ふと思いついて、鎧のスキルである《魔法吸収》を発動できる限界まで発動させてみた。
結果―アルトの悲鳴っぽいのが割と近くから聞こえた。
この鎧もチートかよ。
どの範囲で、って書いてなかったからもしかして範囲指定でも行けるんじゃね、と思ったらいけたよ。
鎧だよな。
「アルト、モモカ大丈夫か!」
そう叫んで声の方向に駆け寄る。
更に結界を吸収するが、そこには2人共居なかった。
ついでに、なんか結界以外の魔法を吸収したので、《残留思念読取(10m)》で読み取っておく。
■発動された魔法(新着順)
・音波伝送…音のみを術者周辺から指定の場所に転送する。魔力をより多く消費して、双方向通信も可能。
・光学偽装…光を屈折させて対象を周囲から見えなくする。触れたり聞いたりすることは出来る。結界に付与することも可能。
・マスタースパーク…設置型。仕掛けた場所に敵が踏み入ると、地面から無数の紫電が走り気絶させ、じわじわ命を奪う。
罠かよ。吸収してなかったら終わってたな。
《残留思念読取(10m)》で、音声伝送の元を特定できそうだし、《転移》っと。
あ、やっぱりか。
敵と思われる人数十人と2人が対立している。
敵は強そうだが、空間系の結界を使える奴はいなさそうだ。
早速見える範囲の結界を総て吸収し、お得意(いつの間に)の《圧縮光球弾幕》を放つ。
数十人を瞬殺すると、僕は2人のもとに駆け寄った。
「無事か!」
「無事よ!」
「というか、置いてかれるほうが傷付きますから!」
「ごめん…」
僕は平謝りした。
え?表現の仕方が反省してる風じゃない?
それは流石に傷つくよ僕も。
「うん、もう置いてかないから!」
僕はそう言って、2人と手を繋いで歩き出した。
「反省したのは分かったけど、もっとやり方というものはないの…?」
モモカのつぶやきは、ミライには聞こえなかったみたいだ。
再会シーンが軽うございました。




