押される戦線。
完全詠唱の説明、ここのま前書きに書けばよかった。
さて、戦場に来てみたのだが……なんじゃこりゃ。
その場はカオスな事になっていた。
順序立てて説明すると、こちらの最前線がグリーンの兵士と冒険者の近接戦闘系で構成されており、兵士は訓練通り、冒険者はパーティーと連携を取りながら戦線を維持している。
そのすぐ後ろは、グリーンお抱えや冒険者の回復魔道士や付与術師が待機し、更に後方にグリーンの弓兵が攻撃を仕掛けている。
対して敵側は、総ての人員&魔物が総当りで攻撃しており、前線から魔法を使っているのがここ―弓兵ポジションからでもよく見える。
そして、その後方には相手の魔術師が数人おり、そのすぐ後ろに敵将と思われる男性が居た。
さて、サラッと言ったが実は敵には人が混じっていた。
この世界には、違う大陸に獣人も居るらしいが今回の敵は人だ。
敵も、こちらの兵士のように統一された鎧ではないが、同じような鎧を着ている。
戦力的には僕がこの国の戦いぶりを見ていないので不明だが、人数的にも戦線的にもこちらの分が悪い気がする。
段々戦線の目安となる魔術師たちがこっちに近づいてきてるんだよね。
今更感は物凄くあるが、チート能力は大人数の前で行使したくない。
そうなれば英雄として崇め奉られ、不自由な生活を送った後暗殺されるか生殺しの人生を送るハメになるかもしれない。
…うん、今さら感あるな。商人にも見られてるし。
「アルト、モモカ、行くよ」
「「OK!」」
2人に声をかけ、前線に走る。走力は日本に居た頃から変わっていないが、体力が異様に上がっているため息切れ無しで全力疾走できた。
僕の付与スキル《HP自動回復》の副次的効果で、2人もあまり疲れていないようだ。
「じゃあいくよ――罪人に裁きを《聖火》」
アルトの先制攻撃で、前に居た敵が夕張色の炎で燃え盛る。
燃え盛った魔物は十数秒で息絶え、戦線を押し上げる。
それでも、一度に殲滅できるのは15体前後、相手の僅か1%にも満たない。
減り具合から察するに、前線の敵の数は単純計算で15×100=1500体。
―アルト強くね?
と思ったが声には出さないでおく。
「じゃああたしも―《炎槍》!」
モモカの短縮詠唱後、繰り出されるのは上級魔法である大きな炎の槍。
それは前に居た敵を楽々蒸発させ、貫通して後ろの方にも攻撃が届く。
うーむ。キルスピードは速いけど、技数が必要だな。
相手の魔道士はモモカの魔法がすぐそこまで飛んで来ることに危機感を感じたのか、そこを集中砲火し始めた。
だが、彼女もチート転生者、この世界の魔術師に経験の深さ以外では負けない。
飛んできた魔法の槍やら斧やら球やらを総て《反転》で跳ね返す。
ペナは大丈夫か聞くと、そんじょそこらの奴よりはよっぽど多いけど大体1分くらいで良いようだ。全部をこれで受けるのは無理だが、半分ぐらいはいけそう。
まるで北極のオゾンホールのように、僕らの居るところの敵が薄くなって―否、居なくなっていく。
召喚系の魔法なのか、それとも従属系の魔法なのか分からないが人&魔物は怖気づく事なく突っ込んでくる。
そこを難なく刈り取るうちの自慢の娘達。いや僕の子供じゃないけどね。
強すぎだろ。僕の出番ないぞ?
と思っていると、見事にフラグ回収を果たした。
「調子に乗るなよチート野郎共―いつもより強く物や人を引きつけよ《重力強化》」
詠唱適当すぎるだろ!
ちなみに集団戦法については詳しくないです。
戦線にしか人が居ないのはそのせいです。
実際にそんな並び方をすれば、フレンドリーファイアのオンパレードだと思います。




