お買い物。
面白い話は短いという悲しさである
アルトが新しい装備品が欲しいとのことで、街で買い物をすることになった。
ブルーの方が良い品は多いと思うんだけどな。と言うと、
「グリーンにだってありますー!!少ないだけですーーー!!」
ムキになって怒られた。
なんか気に触るようなこと言ったかな、僕。分からない。
まあいいか。
アスカは前からそこを知っているかのような軽い足取りで、いや小走りで路地裏を進んでいく。
それをちょっと遅れて追いかける僕とモモカ。
途中何回も大通りに出て、大通りは1本の筈なのでなるべく直線距離で行けばいいのにと思っていると、どうやら道を忘れたらしい、悲壮感漂う表情で立ち止まってしまった。
「グスッ…ヒック…」
泣き出すアルトを適当に抱いて慰める。道が分からなんだなら、僕に聞けば良かろうと思うのだが。
すると、泣いていたはずのアルトは僕からスッと離れ、
「……きゃああああぁぁぁぁ!!?」
……奇声を、じゃなくて悲鳴を上げながら全力疾走していった。
顔を真っ赤にして。
「あっ、ちょっと待て思い出したなら言えよ!」
僕も彼女の後を追う。
取り残されたモモカは一人、
「うわ…あんなに、引くほど鈍感な人今時いるんだ……」
と呟いた。
鈍感ともちょっと違う気がするが。
◆
日の傾きかけの時。
そろそろ日光に鮮やかな色がつき始める、そんな時に一行はようやくその防具屋とやらに辿り着いていた。
ちなみに、防具屋ではなく鍛冶屋で、ここの職人が凄腕とアルトの中では評判らしかった。
そんな馬鹿な。
表通りに近い裏通りなんかに店を構えてたら、あっという間に人気が出ちまうだろ。
とか、脳内愚痴を口から零さないように注意しながら店内に入る。
外観は雪国のログハウスだったのだが、内装は和風だった。どっちかにしてくれよ。
手前から土間、畳っぽいもの、ちゃぶ台風の机が並んでおり、奥に年配のおじいさんが寝ていた。
「おじいちゃん、おじいちゃん!」
アルトが呼びかけると、おじいさんは「今起きる~」と気の抜けた返答を返した後、
次の瞬間には起き上がって店員モードになっていた。
速っ。
「なんのようじゃ?アルトとその連れよ」
「新しいローブ買いに来たの!」
「ベースはあるかの?」
「これ!」
「おお、エレメンタルウルフの毛皮じゃな。しかも、割りと上等じゃ」
「お願いします!」
そう言って代金として60万円を受け取ったおじいさんは、その毛皮とやらを持って奥の扉に消えていった。
そして響く金属音。
カーンカーンカーンカーン……
「毛皮だよな!?」
ついツッコんでしまう僕。いやこれはツッコんでもバチは当たらないと思うんだ。
ローブ作るのにカンカン音がなるのは新しいな!中で何をやっているのか是非見たい!
更に響く、懐かしの道路工事の音。
ギュイインガガガガガガ……
「ローブだよな!?」
なんか布製品にはあるまじき音がするぞ!大丈夫か!?
ちなみにローブでした。
「自分、描写下手だな」と思うと、泣いているシーンの「グスッ…ヒック…」が酒飲みながら蕎麦すすってる人にしか聞こえなくなった。




