案外。
「ナメやがって……」
「どう考えても自業自得だよね」
「やかましい!」
勇者一行の戦士と3人は対峙していた。
その周囲に他の勇者一行の姿はなく、しかし地下から音が近づいてきていることから数分でここに勇者がたどり着くであろうことが予測される。
一方、何故か捕まっていた2人は無事で今普通に立っている。
神殿の石材が特殊だったらしく多少魔力を吸われていたが、僕が魔力をある程度開放するとすぐに全回復した。
戦士の男は憎々しげな目線で僕らを見回すと、気が違ったように大声を発して戦斧で殴りかかってきた。
結界で弾く。どうやら結界を斬ることが出来るのは勇者の剣だけみたいだな。
ただ結界を破れないだけで、耐久度は物凄そうな斧だ。
結界は僕のイメージではバリ硬なのだが、刃こぼれ一つしていない。
魔法の産物だから刺さらなかったが、金属の塊にもやすやす刃を通しそうだ。
次に、光の球を使用して攻めてみる。
こちら側にはオリジナル杖しか武器がないため、基本的には攻撃は魔法となる。
ただ、相手の動きが素早い。
こちらが能力値に物を言わせているのに対して、相手は技量が高い。経験が深いのだろうか。
初心者視点で見ても、パターンがあるようには見えない。システム的なアシストではないのか。
手を緩めるとすぐに襲いかかってきそうで、さっき数分固まっていたナルシストの面影など何処にもない戦士は、その戦斧を棒しかないみたいな軽さで振り回す。
斧の扱いを知らないから振り回しているだけに見えるが、きっと無駄の省かれた洗練されたスタイルなのだろう。
埋め尽くすほどの弾幕を《仮想自動化》を用いて維持すると、今度はオリジナル杖で叩いてみようと画策する。
《AI行動》の付与を使用して、自動で相手を叩かせる。
叩くというか、触れるだけで大丈夫だが。
多量の光に混じって、棒きれが飛んでゆく。
太さを削って整えた以外はなにも加工していない、普通の棒だ。
見た目は恐ろしくショボい。
それが戦士の人に一直線に飛んでゆく。
それを戦士は戦斧でぶった斬る!
棒は真っ二つになりました。
……が、何かが起こる気配がない。
もしかして、あの斧武器の付与を無効化するのか?
『そうみたいね』
「おお、突然だな。闇のドームの調べはついた?」
『あったわよ。あのドームは闇属性魔法で作られた《地獄球》というモノね』
「名前がダサいな」
『それには意味があるわ。あれの特徴は、触れたものの耐久度を減らす。正確には、高速で時間を経過させながら劣化させるみたいだけど』
「時間属性混じってるじゃん」
『その辺りは術者のイメージ次第でしょ。それに、そんな風に他の属性の要素を入れると消費魔力がどんどん膨れ上がるからあんまりしないみたいなのよね』
「そう……だな」
『で、話は戦斧に戻るけど。あの斧は実際は棒しか無いわ。つまり、刃の部分は反転属性の魔法で形作られ、光属性で金属に見せているだけのモノ。斧本体部分は付与魔法よ』
「まじか」
一瞬で物凄い量の情報が入ってきたな。
聞いている間は魔法を発動させる余裕がないので、弾幕を維持したままア●スの手鏡を取り出して身構える。
付与が削除されたであろう棒きれは、斧によって真っ二つになって地面に転がっている。
もう使えなさそうだ。
そこに、戦士の背後の方向、神殿内部から足音が聞こえた。
もう来たのか。




