初めての圧倒!
ここが(ブクマ登録数と更新頻度的に)山場になると思います。
(2016/03/14追記)斧の材質が突然白銀から鉄にランクダウンしている不具合を修正しました。
俺の名前はトモヤ。釣鐘智也。ネーミングセンスはいつもの通りだ。
この世界に来てから盗賊をしている。
まあ、転生した直後が盗賊のねぐらだったのもある。
しかし、この世界では盗賊をやっていてもなかなか捕まらないと聞いて、その時は「よっしゃあ!暴れてやる!」と意気込んだものだ。
そんな口調をしているのは心のなかだけだけどな。
そんな俺の相手は、いつも何かの商業団体の荷馬車だ。
あいつらは、何度強奪しても来るのでいいカモだ。
今日も新しい荷馬車が来るらしい。食料もあるとのことで、絶対に確保しておきたいところだ。
俺のところの盗賊は小さな畑を持っているが、それと討伐した魔物では飯が足りない。それで強奪した分を足しているわけだ。
おっと忘れてた。
俺は、この世界に転生…いや転移か?をした時に特殊な能力を手にした。
それは、武器の耐久力を一瞬で減らしたり魔法を吸収する能力だ。
スキルというらしいが、俺にはあいにく《鑑定》が無いため確かめられない。難儀なことで。
他にも魔法の才能はあるみたいだが、正直どの属性が適しているかわからないので試したら、火属性と聖属性だった。
回復できるのは素直にありがたい。
そういったことから、俺は今日もボスに命じられて荷馬車を襲いに行く。
ボスによると、昨日も一応幹部が襲いに行ったが戻ってこないという。
まあ、俺は大丈夫だろう。
無駄口を叩いていると荷馬車が通ろうとするので、道を封鎖し立ちふさがる。
今回の荷馬車はいろんな意味で豪勢だな。
護衛の数も多い。
テンプレに従い、一応総て置いていくように言うが、まあこれは通らないだろう。
想定内だ。むしろその方が良い。
その時、奥に座っていた初心者装備の奴が光球を飛ばしてきた。
相手の実力を見るため、回避せずに受けてみる。
これで全吸収したら、それはそれで絶望感を与えられるしな。
果たして、その光球は俺の能力の前に吸収されていった。
ただ、ちょっと痛かった。ちょっとダメージを食らったか?
ただあの程度ならどうってことはない。いつも通り殲滅するまでさ。
斧使いが飛び出してくる。
しかし間違いない、あんな白銀製の、しかも使い込まれた斧なら――
ガッシャーン!!
そら、やっぱり……斧は粉々に砕け散った。
呆然としてしまった戦士さんには申し訳ないが、ここは瞬時に決めさせてもらう。
瞬間的に加速し、短剣の届く位置まで滑るように移動。
斧使いが反応しようとしたので、念のため背後に周り振り上げた右上から斜めに斬りつけた。
若干斬りつけが甘かったらしく、即死には至らなかった。まあ、即死はやったこと無いしな。
しかしもうあいつは死ぬ。残りは6人。
次の瞬間、悠長にも「大丈夫か?」と戦士に声をかける初心者装備の男。いや、男って言うレベルじゃないな。青年…少年か?
とにかく、戦士に声をかけているがそいつはもう助からないぞ。
と思っていたら、戦士は尋常ならざるスピードで回復し始めた。
「ふーん…回復魔術師持ちとは、贅沢なパーティだな。面倒だ」
思わずそんな感想が漏れたが、よく見たら背後に見える魔術師―白っぽい服から回復系だろう―はひどく戸惑った表情でオロオロしていた。
どういうことだ?まさか、回復しているのはこの初心者装備の少年?
何かしているようには見えなかったが?
考えている間にも戦況は動く。ここは先手必勝だ!
余裕そうに見える少年に向かってスライドジャンプ(自分で命名)。後は斬りつけるだけなのだが―
ヤバいものを見てしまい、とっさに引いて回避した。
それは、俺も見たことがないほどの威力を持ってそうな光球だった。
本能が「あれは無理だ」と叫ぶ。
しかし予想に反して光球は、あろうことか俺を自動追尾して激突した。
スキルは発動したが、吸収しきれずに体力が持っていかれる。
まじかよ。反則だな…俺もか。
今度は速度に任せる。
見よう見まねだけど、俺ほどのチートスペックがあれば楽勝だろ。
少なくとも、AIMをずらすことはできる。
機会を伺って、斬りつける。
かわされる。
あれ、見えてる?
もう一回、ぜんぜん違う角度から斬りつける。ここは視界範囲内ではないはずだから、かわせない。
かわされる。
ちょっとまて。
何度も挑戦するが、全然当たらずにこちらのフラストレーションばかり貯まる。
あ゛ーイライラする!!
とその時、少年は先程の野球ボールサイズの光球をノーアクションで十数個同時起動し、適当に投げてくる。
さらに悪寒がして、脱出すると、光球は総て爆発を起こした。
あの中にいたらやられてた自信があるな。
飛びのいて、体制を立て直す。
この距離は魔法使い系の得意射程とはいえちょっとは考えないといけないかもだ。
しかし相手は考える間を与えてくれなかった。
《ライトメイス》と詠唱が聞こえた直後、数えきれないほどの歪な…いや、ラグビーボールみたいな形大きさの光球が出現し、それが一斉に俺に向かって降ってきた。
俺が負ける。
それを自覚した時、しかし悔しさはなかった。
満足だ。
短い間だったが、楽しい異世界生活だった。
俺は流れ星に身を任せた。
―まあ、死ぬ直前に全身を引き裂くような痛みに遭遇したのは、予想外だったが。
でも書き溜めはあんまりしてないです。
最近は何故か眠いので。




