シルエットとエンドロール
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あれから8年の月日が過ぎました。
部長「しっっっっっっっっかし…意外だな!!。まさかお前らが結婚するだなんて…」
マヤ「はははっ…こんな貧乏くじ引くとは思いませんでした」
カトウ「夫を貧乏くじ呼ばわりするなし」
私…中山マヤはこの度、結婚しました。
部長「マヤは最新の媚薬でも飲まされたんじゃないのか?」
マヤ「そうだと信じたいですね」
カトウ「媚薬っていうとアレだろ?俺の魅力っていう媚薬だろ?」
マヤ「死ねよ」
カトウ「いきなり未亡人希望ですか!?」
相手はなんとあのカトウ先輩です。
部長「高校のときはまさか二人が…っていうかカトウに2次元以上の彼女ができるとは思ってなかった」
カトウ「その言い方だと、2次元の彼女すらできない計算なんですが…」
マヤ「1次元ですら危ういですよ」
カトウ「線状の人間をどうやって愛せと?」
部長「まぁ、とにかく結婚おめで…これは祝うべきなのか?」
マヤ「どうですかね?」
部長「まぁ、なんだその…結婚は人生の墓場とかなんとか言うし…その…御愁傷様」
カトウ「素直に祝えよ!!」
部長「でも、まあ、披露宴は良かったぞ」
マヤ「そうですね、部長の計らいのおかげで楽しめました」
カトウ「俺の黒歴史が公衆にさらされていたな」
マヤ「…櫻井先輩たちもいればよかったのに…」
部長「………」
カトウ「………」
部長「まぁ、いないやつらのことを言ってもしょうがないだろ」
カトウ「うんうん」
マヤ「そうですね。それはそうと、国務大臣のお仕事はどうですか?」
部長「まぁ、ボチボチやってるよ」
カトウ「中山が総理大臣やってから国は良くなったと思うか?」
部長「どうだろな?。利益と損害というものは常に表裏一体だ。なにかが良くなればなにかが悪くなるものだ」
マヤ「それでも…8年前よりは元気になった気がしますよ、この国は」
部長「…まぁ、そう感じられるのなら、それはいいことだろうな」
カトウ「まだ見守るつもりか?」
部長「あぁ、わたしが安心できるまでは見守るつもりだ。…安心しろ、お前たちのサポートはしっかりする」
カトウ「頼むぜ、スポンサー様よ」
私とカトウ先輩…いや、勝はピグマの研究をしています。
部長が株で儲けたお金を寄付してもらえるので、研究費にはあまり困りません。
おかげで自由に研究ができます。
部長「あと2年で成果を出せよ?」
カトウ「まかせろ。中毒者を完全に完治させることは無理そうだが、ピグマを安く量産することはできそうだ」
勝の目的は父親の研究成果を無駄にしないこと、そして、父親を超えることです。
一方、私はなんか興味を惹かれてやってるって感じです。
部長「そうか、楽しそうでなによりだ」
夜空には星空が散りばめられていた。
その星空の光に負けない強さの輝きが茜の眼下には広がっていた。
中山「ごめん、待たせた」
茜「いいよいいよ、総理大臣様はお忙しいからさ」
二人は高層ビルの最上階のレストランにいた。
二人以外に客はいない貸切状態であった。
茜「いや〜、こんなええとこで飯食えるなんて夢みたいだよ」
中山「喜んでもらえてなによりだ」
茜「…頑張ってんじゃん、グルグル」
中山「…まだ高評価をもらえるような結果を出してない」
茜「そんなことないよ、あんたはすごい。わたしが保証する」
中山「…なぁ、茜、俺を恨んでないか?」
茜「…どうだろね、よくわからないや。でも…あんたのことは信じてるからさ」
中山「…ありがとう」
中山は、この胸に秘めた想いを口にすることはないだろう。
それは彼なりのケジメと決意の表れなのだろう。
自分を殺し…国を立て直すと誓った彼の。
茜「だから…あんたは頑張ってるよ」
茜は目の前に広がる夜景に目をやった。
夜景の中の一つに、生徒が下校し、多くの部屋の明かりが消えた校舎があった。
その職員室で、その男は山積みの書類に向き合っていた。
先生「…いい反省文だ」
そんなことを言っていた先生の元に、一人の男性が歩み寄る。
工藤「また反省文読んでにやけてるんですか?」
先生「お前も一人前の教師になれば反省文の偉大さがわかるさ」
工藤「どうだか…」
工藤もまた、自分のクラスのテストの答案に追われていた。
マヤ「…櫻井先輩たち、今頃どこでなにをしてるんでしょうかね…」
部長「まぁ、いなくなったわけじゃないんだから、そのうちひょっこり会えるさ」
カトウ「あの沖縄旅行からもう8年か…」
マヤ「『一緒に泣いて、一緒に笑って、一緒に生きて、一緒に年老いて、そして…一緒に死のう』。よかったですよね、櫻井先輩のあのセリフ。私もあんな感じにプロポーズされたかったですよ」
部長「お前はなんて言ってプロポーズしたんだっけ?」
カトウ「絶対幸せにしゅるから」
マヤ「ほんと…大事なところで噛まないで下さいよね…」
部長「ほんと…いまごろなにやってんだろな、あの二人…」
カトウ「どこにいようが…同じ空の下にいるさ」
マヤ「いいセリフですね。おかげで体感温度が15℃下がりました」
カトウ「…これからの新婚生活も冷え切りそうだ」
目の前には雄大な草原が広がっていた。
小高い丘に立ち、過ぎ行く風を感じていた。
その男は腕を組んで上に伸ばし、軽いストレッチをした。
後ろを振り返れば、その人はそばにいた。
「そろそろ行こうか」
男は手を伸ばした。
差し出された手を握りしめ、そして…その人は笑ってみせた。
私があなたを信じている限り、あなたは私のそばにいる。
だからこれは…決して不幸な終わりなんかじゃない。
これは、ハッピーエンドなんだって。
fin




