あの夏よ、もう一度だけ…
櫻井「カトウ」
カトウ「…えっと…櫻井君だっけ?なんか用?」
櫻井は学校に到着するなり、勉強をしていたカトウに話しかけた。
櫻井「これ、お前から託された」
そういうと櫻井はカトウに一本のUSBメモリを渡した。
カトウ「…これは?」
櫻井「さあ?。記憶をなくす前のお前から今のお前へのプレゼント」
カトウ「…ふうん」
櫻井「用ってのはそれだけだ」
櫻井はカトウの席を離れようとした。
櫻井「あ、あと…お前がガリ勉キャラなんてヘドが出る」
櫻井はカトウの席を後にした。
カトウ「ヘドが出る、ねぇ…。お前どれだけ嫌われてたんだよ…」
カトウは手に持ったUSBメモリを見つめながら言った。
櫻井「あ、マヤちゃん」
マヤ「あ、えっと…櫻井先輩と佐藤先輩、こんにちは」
佐藤「………」
櫻井「マヤちゃんはこれからお昼?よかったら一緒にどう?」
マヤ「先輩はぼっち推奨派ではなかったんですか?」
部長「まぁ、そう言わずにマヤも食べよう、櫻井が奢ってくれるぞ」
櫻井「そんな約束はしてません」
マヤ「そういうことなら先に言ってくださいよ。ご一緒します」
マヤ「奢ってくれるって…先輩の手作り弁当のことなんですか?」
櫻井「もともと俺と佐藤さんの二人分作るつもりだったんだけど…作り過ぎたから食べて」
部長「はぁ…野郎の手作り弁当ほどテンション下がるイベントはないな…」
マヤ「ギャルゲーならバッドエンドまっしぐらですね」
佐藤「………」
お弁当の中には彩りがバランスよく敷かれた美しいものであった。
部長「しかも見た目が良いのがムカつく」
マヤ「櫻井先輩って料理上手なんですね。私記憶ないので知りませんでした」
部長「私は記憶は戻ってるが知らなかった」
櫻井「なんで俺の料理上手な設定って定着しなかったんだろう」
部長「作者の陰謀かな」
部長は櫻井の弁当に手を出した。
櫻井「お味はどうですか?」
部長「…美味しくないな、お前のキャラって」
マヤ「主役としてそれは不味いんじゃないでしょうか?」
櫻井「いや、俺の評価をされても」
佐藤「………」
部長「ところで…マヤはほんとうに記憶が戻ってないのか?」
マヤ「…ないですね」
部長「それにしては変化ないな」
マヤ「そうなんですか?。まぁ、なんと言いますか…そのうちひょっこり思い出すと思いますし」
部長「それもそうだな」
マヤ「でも…私たちって部活でどんなことやってたんですか?」
櫻井「えっと…なんて言えばいいんだろ…」
部長「いろいろやったぞ、ほんといろいろ…」
マヤ「具体的には?」
部長「…そうだな。マヤが部活に入って来た時のことから話そうか」
櫻井「あぁ、入部試験の時ですね。あれは傑作だったな…」
部長「入部試験ってのをやったんだがな…」
放課後
櫻井「去年の夏休みはみんなで沖縄行ったりしたんだよ」
櫻井と佐藤は二人並んで帰っていた。
佐藤「………」
櫻井「でもその前にいろいろあってさ、そのとき佐藤とは気まずい仲だったんだよね」
佐藤「………」
なんの反応も示さない佐藤に、櫻井は楽しそうに話しかけていた。
櫻井「ほんとすごい楽しかったんだよ。空は綺麗だったし、海で溺れたし、花火もしたし…」
こうして話していれば、いつか何かのきっかけを掴んで、記憶が戻るかもしれない。
そう思った櫻井はできるだけ佐藤に思いで話をすることにした。
櫻井「また行きたいね、みんなで」
佐藤「………」
佐藤はただ静かに櫻井を見つめるだけだった。
櫻井「…いや、行こう、みんなで」
翌朝
カトウ「………」
カトウは相変わらず勉強に勤しんでいた。
櫻井「ほんと似合わないな、ガリ勉なお前は」
そこに櫻井と佐藤が近づいてきた。
カトウ「朝っぱらからリア充とは…爆死すればいいのに」
櫻井「カトウ、もしかしてお前記憶が…」
カトウ「って、前の俺なら言ったんだろうな」
櫻井「………」
カトウ「お前からもらったやつ、中身見せてもらったよ」
佐藤「………」
カトウ「俺がいままで何をしてきたか…そして、これから何がしたいのかがよくわかった」
櫻井「…記憶は?」
カトウ「まだハッキリとは戻ってない。ところどころって感じだ。でも…」
櫻井「でも?」
カトウ「前の俺はもういなくなったって思ってくれ」
櫻井「なんでだ?」
カトウ「なんていうかな…もうそんなキャラにはなれない」
櫻井「…イメチェンか?」
カトウ「そういうわけじゃなくてだな…人が変わったってやつだよ」
櫻井「なるほどな、お前はこれを機にイメチェンしようって魂胆だな」
カトウ「いや、だから…」
櫻井「だが残念だな、しょせんカトウはカトウだ。それ以上でも以下でもない。そしてお前はどうあがいても変態からは逃れられない」
カトウ「…もうイメチェンでいいや」
櫻井「それはそうと…夏休みに沖縄行かないか?」
カトウ「沖縄?」
櫻井「そう。前にみんなで行ったろ?」
カトウ「悪いけどパスで。それよりもやりたいことがある」
櫻井「勉強か!?どうせまた勉強なんだろ!?。ダメじゃないか!勉強ばっかりしてちゃ」
カトウ「言っておくけど、俺たちもう3年だからな」
櫻井「………」
カトウ「お前が過去に囚われて何をしようが自由だが、そろそろ先のことも考えろよ」
部長「沖縄?」
櫻井「そう」
部長「沖縄か…」
櫻井「行きません?」
部長「うーん…行きたいのは山々だが…」
櫻井「なにかあるんですか?」
部長「父さんの看病があるからな」
櫻井「神崎さんの…まだ意識は戻らないんでしたっけ?」
部長「まあな。いまはちゃんとした病院に入院してるから、わざわざ私が看病する必要はないのだが…」
櫻井「心配なんですか?」
部長「そういうことだ」
櫻井「…それなら、しょうがないですよね」
部長「悪いな、櫻井」
マヤ「沖縄ですか?」
櫻井「そう。前もみんなで一緒に行ったことあるんだけど、どう?」
マヤ「いいですね、行きたいですね、沖縄」
櫻井「でしょ?。いいでしょ?」
マヤ「部長さんとカトウ先輩も来るんですよね?」
櫻井「あ…うん…誘ったんだけどさ…」
マヤ「来ないんですか?」
櫻井「ちょっと無理そう」
マヤ「え?。じゃあ私と櫻井先輩と佐藤先輩だけですか?。リア充に挟まれて私肩身狭くないですか?」
櫻井「そんなことないよ」
マヤ「いやいや、二人が砂浜でキャッハウフフしている最中、一人砂浜で寂しく砂の城を築く私が目に浮かぶんですが?」
櫻井「いやいや、そんなことないよ」
マヤ「とにかくそのメンバーなら私はちょっと辞退させてもらいます」
櫻井「うまくいかないもんだね」
佐藤「………」
櫻井「…もう、無理なのかな」
佐藤「………」
櫻井「みんな…元には戻れないのかな…」
佐藤「………」
病院
部長「…父さん、ただいま」
神崎「………」
部長「今日は櫻井に沖縄行こうって誘われたんだけどさ、父さんおいて行くなんてできかったよ」
神崎「………」
部長「…行きたかったけどね」
神崎「…なら、行けばいい」
部長「父さん!?」
神崎「俺は…もう大丈夫だから…行っておいで、薫」
マヤ「それじゃあ、沖縄に出発です!!」
5人を乗せた小型飛行機は陸を離れ、空へ飛びたした。
カトウ「降ろせ!!お前らなにやってるかわかってんのか!?」
カトウは最後の最後まで行くことを拒んだので、櫻井のSEALでピグマを封じ、歩けなくなったところを無理やり連れてきたのだ。
部長「まぁまぁ、旅は道ずれってやつだろ?」
カトウ「これは立派な犯罪行為だぞ!?わかってんのか!?」
マヤ「いやぁ、私の家って自家用ジェットあるくらい金持ちなんですね」
カトウ「人の話を聞け!!」
櫻井「まぁまぁ、沖縄に行けばこの女性陣の水着姿も拝めるんだぞ」
カトウ「はっ!?興味無えよ!!」
カトウはこの後ボコボコにされました。
櫻井「しかし楽しみだな、沖縄。カナヅチだけどさ」
部長「そういえばそうだったな。去年はあんまり乗り気じゃなかったのに、今回はウキウキだな」
櫻井「だって、久しぶりですもん、こうやってみんなで遊べるのも」
部長「そうだな…」
佐藤「………」
マヤ「沖縄といえばあれですよね、青い海、白い砂浜、そしてヤンバルクイナ」
カトウ「そのラインナップはどうなの?」
部長「そうだぞ、イリオモテヤマネコを忘れるな」
カトウ「絶滅危惧種を列挙するのやめよ」
マヤ「わたし沖縄に来るにあたってヤンバルクイナだけは徹底的に調べて来ましたからね」
カトウ「なんなの?そのヤンバルクイナ押しは?」
櫻井「はははっ」
部長「どうした?櫻井」
マヤ「頭強打しましたか?」
櫻井「いや、一年前もマヤちゃんおんなじこと言ってたからさ」
部長「…そういえばそうだな」
マヤ「まぁ、忘れてるだけで、変わったわけではないですから」
櫻井「そうだね」
部長「だってさ、カトウ」
カトウ「…わかったよ、今日くらい一緒に楽しんでやるよ」
佐藤「…」
沖縄
マヤ「先輩、海が青いです」
櫻井「そうだね」
マヤ「先輩、砂浜が白いっていうほど白くないですけど白いです」
カトウ「そこは素直に白いでいいだろ」
マヤ「去年は沖縄来てなにやったんですか?」
櫻井「まずカナヅチの俺を海に投げ込んでた」
マヤ「そういえばそんなことやったような記憶が薄っすら…」
部長「ちょっとは覚えてるのか?」
マヤ「はい。もうちょっとで思い出せそうなんですけど…あぁ、去年とおんなじことをやってくれたら思い出せそうなのにな〜、どこかの誰かが海に放り込まれれば思い出せるかもしれないのにな〜」
部長「櫻井、ご指名だ」
櫻井「はっ!?いやいや、絶対嘘でしょ!?」
マヤ「沖縄、櫻井、溺れる…うっ、頭が…」
櫻井「やめんか!!」
カトウ「よくわからんが海に飛び込むくらいいいだろ。拉致されるより数倍ましだ」
櫻井「正論言うなよ、反論できないだろ」
部長「いいから入れよ。つうか沈めよ」
櫻井「なんか怨みでもあるんですか!?」
部長「お前は私がせっかく手料理を作ってやったのに…それをマズイと…」
櫻井「去年もおんなじことを言ってましたね!!。っていうか、何十話前の話だと思ってんですか!?。そんなの誰も覚えてませんよ!!」
嫌がる櫻井の後ろからマヤのドロップキックが襲いかかる。
マヤ「ああ!!足が滑って先輩に全力でドロップキックしてしまったあ!!!」
とぼおおおおおん!!!
部長 カトウ「ざまああああ!!!」
幸いなことに足が付く深さだったので、櫻井は落ち着いて、水面から顔を出した。
陸から眺めていた3人は笑っていた。
気がついたら櫻井も頬が緩んでいた。
たぶん、僕が見たかったのはこうやって、笑ってるみんなの姿なんだろう。
…ことわっておくが、Mではない。
あとは…
佐藤「………」
佐藤さん、あなたが笑ってくれれば…。
部長「…櫻井、ほら、受け取れ」
そう言うと部長は櫻井にお茶を差し出した。
櫻井「あ、ありがとうございます」
櫻井はお茶を口に含み…全力で吐き出した。
櫻井「ブフェ!!」
部長「なんだ貴様!!私の入れた茶が飲めんというのか!?」
櫻井「なんでこのお茶こんなに辛いんですか?」
部長「私が愛情込めて調合したからな」
櫻井「愛が刺激的すぎです」
部長「お前にはまだ早かったか」
そいいうと部長は浜辺の方を見た。
浜辺ではカトウとマヤが何の反応もない佐藤を無理やり連れ出し、遊んでいた。
部長「…佐藤の記憶、戻すんだな?」
櫻井「はい」
部長「それで佐藤がどうなろうが…覚悟はできてるんだな?」
櫻井「今度こそ…全力で守り切ります」
部長「うん…ならいいんだ」
櫻井「…そういえば、部長って高校卒業したらどうするんですか?」
部長「実はな、私の知識と技術と実力を買われて、中山卓から誘いを受けているんだ」
櫻井「誘い?」
部長「国務大臣にならないかと誘われてる」
櫻井「え?」
部長「国務大臣は文民であれば誰でもいいかなら、別に私でもいいんだ」
櫻井「それ本気ですか?」
部長「あぁ。中山の抑制のためにも必要なことだとは思う」
櫻井「…俊はどうするんですか?」
部長「待つさ、いつまでも。あとはカトウがなんとかしてくれる。まぁ、スポンサー的なサポートくらいはするつもりだがな」
櫻井「…すごいですね」
部長「櫻井はどうするんだ?」
櫻井「………」
部長「まぁ、お前はまずは目の前のことを頑張れよ。そうすればいずれ見えてくるさ」
櫻井「だといいんですけどね」
部長「…そういえば、私も一つ聞きたいことがあるんだが」
櫻井「なんですか?」
部長「お前はどうやってあの中山卓を説得したんだ?。並半端な勝敗ではこの結果は生まれるはずがないぞ」
櫻井「それは…たまたまですよ」
部長「…そうか、まぁ、別になんでもいいがな」
そう言うと部長は浜辺の方に歩き出した。
部長「お前はすごいやつだよ。私が保証するんだから自信を持て」
櫻井「そうですかね…」
部長「たまたまでみんなを救えるくらいにはすごいやつだよ」
そして部長は浜辺のへと消えていった。
カトウ「…このお茶飲んでいいやつか?」
櫻井が一人で荷物番していると、カトウがやって来て、部長の愛の結晶茶を指差していた。
櫻井「ああ、いっぱいあるからグイッと飲んでいいぞ」
カトウ「おう、サンキュー」
カトウがグイッとやると、ブシュッと吐き出した。
カトウ「なんじゃこりゃあ!!」
カトウは2、3回咳き込んだ。
櫻井「部長の愛の結晶だよ」
カトウ「ああ、部長のか…あいつならやりかねんしな」
櫻井「めっちゃ辛いよな」
カトウはお茶を地面に置き、一息ついてから口を開いた。
カトウ「ありがとな、今日連れてきてくれて。おかげていい気分転換になった」
櫻井「どういたしまして」
カトウ「それと…悪かった。お前らのこと冷たく扱って」
櫻井「いいんだよ。キャラ変えならしょうがない」
カトウ「キャラ変えって…。でも、これからは無理やり連れ出すのはやめてくれ。俺にはやりたいことがあるんだ」
櫻井「ああ、俺も悪かったよ、無理やり連れ出して」
カトウ「記憶とか、そういうのが全部戻ったわけじゃないからはっきりとは言えないけどさ、仲良かったんだな、俺たちって」
櫻井「そういうのキモいからやめろ」
カトウ「ははっ、わるかったな。しゃあ、俺戻るわ」
櫻井「あ、そうだ、カトウ」
カトウ「ん?なんだ?」
櫻井「前から思ってたけど、絶対言いたくなかったことがあるんだけどさ」
カトウ「なんだ?」
櫻井「お前って結構かっこいいよな」
カトウ「…お前もキモいな。前の俺が聞いたら多分卒倒するな」
マヤ「喉乾いた。…このお茶もらいますね」
櫻井「それはやめたほうが…」
櫻井の元にやってきたマヤは、部長の愛の結晶に口をつけた。
マヤ「…美味しいですね、このお茶」
どうやらマヤちゃんは記憶と一緒に味覚までどこかに飛ばしたようだ。
マヤ「先輩はこんなところでいつまでボッチしてるんですか?。あ、そういえばボッチ好きなんでしたっけ?」
櫻井「いや、そういうわけじゃないけど…」
マヤ「そんなに荷物が心配なんですか?だったら私が見てますよ」
櫻井「いや、そうじゃなくて…海にはトラウマがあるから…」
マヤ「…なんで沖縄誘ったんですか?」
櫻井「なんでだろうね」
マヤ「仮にも私の命の恩人らしいのでそこんとこはしっかりしてくださいよ」
櫻井「命の恩人?」
マヤ「はっきりとは思い出せないですけど、私が初めてショッカーの襲撃に参加したときに助けてくれたそうじゃないですか」
櫻井「そういえばそんなことあったね」
マヤ「いまこうやって楽しんでるのも先輩のおかげなんですよ」
櫻井「なんか重いよ。もう1年以上前のことなんだし…」
マヤ「それでも…事実ですから」
櫻井「………」
マヤ「まぁ、なにが言いたいかというと…なんなんですかね?」
櫻井「いや、俺に聞かれても…。そういえばさ、マヤちゃんの家にメイド長っているよね?」
マヤ「あぁ、はい、いますよ。戦ったらしいですね」
櫻井「淡々と言うな…」
マヤ「でも、私、一人暮らし始めようと思うんです」
櫻井「一人暮らし?」
マヤ「はい、バイトとかしてお金を稼いでなるべく自立したいんです。全部を自分一人でっていうのは難しいと思うんですけど、なるべく自分の力で生きたいんです」
櫻井「…どうしてそう思ったの?」
マヤ「前の私は病弱で…一人じゃなにもできなくて…でも今は自分一人で立ち上がる力を手に入れました。だから…自分の力で立ち上がって…この世界を感じたいんです」
櫻井「…なんか、詩人みたいなこと言うね」
マヤ「はは、ぽかったですか?。まぁ、私はこの辺で失礼します」
そう言うとマヤは立ち上がり、浜辺へと歩き出した。
櫻井「マヤちゃんなら大丈夫。自分の力で立ち上がれる」
マヤ「ありがとうございます」
そして、日が落ち、夜になった。
部長「やっぱり夜は花火だろ」
マヤ「待ってました!!」
カトウ「マヤちゃん…なんでいっぺんに10本くらい持つの?」
マヤ「花火に大切なものは、火力です」
櫻井「いや、ダメでしょ?」
マヤ「え?10本じゃたりませんか?じゃあ20本で…」
カトウ「火力不足を心配してんじゃねえよ!」
櫻井「とりあえず30本以下は話になんないだろ」
カトウ「爆発魔多すぎだろ!!」
佐藤「………」
櫻井「はい、佐藤さんもこれ持って」
櫻井は佐藤に花火を渡す。
櫻井「楽しいよ」
そして…花火にそっと火をつけた。
マヤ「もう花火ないんですか?」
部長「ああ、もう打ち上げしか残ってない」
カトウ「マヤちゃんが使いすぎなんだよ」
マヤ「どうしてみんな花火に火力を追求しないんでしょうか…」
カトウ「言っとくけど、花火は兵器じゃねえよ」
部長「まぁ、打ち上げ花火をやろう」
カトウ「俺が火を付けるよ」
部長「頼んだ」
カトウ「じゃあ、火を付けるぞ」
部長「カトウ、筒の上から覗き込んでみろ、面白いものが見れるぞ」
カトウ「あの世とか?」
そして、カトウは火を付けた。
櫻井「………」
佐藤「………」
櫻井と佐藤は隣に並んで座っていた。
櫻井はなにかを探すように手を動かし、そして佐藤の手を握った。
冷たく、硬い…それでも、静かに脈打つ手をギュッと握りしめた。
目を閉じれば様々な光景が蘇る。
初めてショッカーとして襲撃に参加したこと、マヤちゃんを助けたこと、佐藤さんと決別したこと、悪将軍と戦ったこと、仲間を失いかけたこと、和と戦ったこと、メイド長と戦ったこと…そして一年前、この場所で約束をしたこと。
櫻井「…約束、守ったよ」
そして、破裂音とともに大きな花火が空に舞った。
マヤ「たまやああああ!!」
続けてもう一発…また一発…。
櫻井は花火に照らされてる佐藤が泣いているのに気がついた。
花火が花咲くたびに、大粒の涙を流していた。
佐藤「…ごめんね」
櫻井「…佐藤さん?」
佐藤「本当はね…ずっと前から記憶は戻ってたんだ…」
櫻井「………」
佐藤「でも信じたくなかった…自分はこんなズルくて、汚くて、弱いなんて信じたくなかった」
カトウ「………」
佐藤「だけど…現実からは逃げられなかった。これが私なんだって悟ってしまった」
部長「………」
佐藤「死ななきゃって…生きてちゃダメだって…思った。でも…それでも櫻井の隣にいたかった!!」
マヤ「………」
佐藤「だから…記憶が戻らないフリをしてた…そうすれば誰も責められないって思ってた…」
櫻井「………」
佐藤「でも…ダメだよね?こんなんじゃ許されないよね?。でもね…どうしても櫻井と離れたくなかった」
櫻井「………」
佐藤「もう私…どうしたらいいのかわからないよ。死ななきゃいけないのに、櫻井のそばにいたいの…」
櫻井「………」
佐藤「だから…お願い、櫻井。…一緒に死んで…」
櫻井は静かに目を閉じた。
そしてひと時の間を置いた後、静かに口を開いた。
櫻井「…いいよ」




