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悪の手先の風上にも置けぬ  作者: なおほゆよ
第3章 ラストバトル編
89/95

神崎薫の最後の日

Write85


櫻井「神崎さんの様子は?」


カトウ「意識不明。それに筋肉組織の故障が全身中に見られるらしい」


櫻井「ピグマの副作用か」


カトウ「だろうな。もともと命がけの行動だったんだ、生きてるだけ得だ」


櫻井「…ごめん、俺が途中邪魔したせいで…」


カトウ「…気にすんな」


カトウの顔に一瞬曇りが見えた気がした。


カトウ「櫻井」


櫻井「なんだ?」


カトウ「お前の兄貴ってどんなやつだった?」


櫻井「ん…俺みたいなやつだったかな」


カトウ「そうか…」


櫻井「どうかしたのか?。お前はただでさえシリアスが似合わないのに、そんなスタンスでいられたらきもい」


カトウ「キモいは言いすぎだろ。なんていうかさ、わかってたことなんだがさ、相手も人間なんだなって思ったんだよ」


櫻井「つまり?」


カトウ「好きでやってたわけじゃなかったってこと」


櫻井「それは恵さんのテレパシーを聞いて思ったのか?」


カトウ「まぁな、前々から頭ではわかってはいたんだけどさ、いざ実感してみると…」


櫻井「それで、和を殺したことに罪悪感でも感じてるのか?」


カトウ「いや、違う。俺が気にしてるのはお前の言葉だ」


櫻井「俺の言葉?」


カトウ「方法なないなんて、途中で考えるのをやめたやつにはわからないってやつ」


櫻井「アレがどうした?」


カトウ「なんかグサって来てんだよ」


櫻井「その割りにはお前そのタイミングでドロップキックしてきたよな?」


カトウ「そんときは別にだけど、あとあとグサって来たんだよ」


櫻井「ふーん、お前が俺の言葉にね…」


カトウ「櫻井」


櫻井「どうした?」


カトウ「ごめん」


櫻井「…なぜ謝られたんだ?。そしてお前のマジ謝罪初めてかもしれないな」


カトウ「俺のせいで…お前の兄貴が死んだから」


櫻井「は?。そんなわけないだろ。なんでお前のせいなんだよ?」


カトウ「俺がもっと考えていれば!!」


櫻井「…わかったよ。許すよ、それでお前の気が晴れるなら」


カトウ「………」


櫻井「でもなんでそんなに責任感じてるんだよ?」


カトウ「俺なら…お前の兄貴を救えたからだ」


櫻井「はい?」


カトウ「なんでもない、忘れてくれ。…そういえば、お前が手に持ってるやつ…」


櫻井「あぁ、これか。なんか和が最後にくれたんたんだよ。いつか必要になる的な感じでくれた」


カトウ「それはまもるんジャーレットに変身するためのやつだな。その腕輪を付けてスイッチを押せば変身できるぞ」


櫻井「ははっ、いまさらヒーローごっこなんかしてどうすんだよ?。一応形身代わりに持っとくけどさ」


カトウ「お前さ、兄貴死んで悲しくないの?」


櫻井「もともと死んでたやつだったからな…」


カトウ「そうか…」


病院が崩壊したあと、捜索が始まったが、和と恵さんは見つからなかった。


おそらく和は死んだ。オレはそう思ってる。


問題は姿が消えた恵さんの方だ。


和がいなくなったいま、彼女がどう動くのかがわからない。


生きる希望をなくし、絶望して自ら命を絶つのか、それとも和を殺した復讐のために生きるのか…。


櫻井「そういえば、工藤さんはどうした?」


カトウ「ん?なんか気になることがあるっていってどっかに行ったぞ」


櫻井「気になること?」


カトウ「もしかしたらもう戻ってこないかもしれないとも言ってた」


櫻井「は?なんで?」


カトウ「さぁな、詳しくは知らん」


櫻井「もしかして恵さんを探しに行ったのか…」


カトウ「まぁ、あんな味方が敵かもわからんやつ、どうでもいいだろ」


櫻井「あんなに一緒に戦ったのにまだ疑ってるのか?」


カトウ「用心するに越したことはないさ」






学校


佐藤「声が止んだの」


櫻井「声?」


佐藤「そう。私を操ってた声」


櫻井「恵さんのテレパシーか」


佐藤「そう。お姉ちゃんは…死んだのかな?」


櫻井「わかんない。ただ…」


和が死んだ時、恵さんは異常に強力なテレパシーを使った。


あのかつてないほどの破壊力をもち、能力の条件を無視して発動したあの技は間違いなく、脳に多大な負担をかけるオーバーワーク。


もしかしたら、彼女は能力の使いすぎで記憶を失っている可能性がある。


記憶を失っていないにしろ、なにかしらの甚大な被害を受けているのは間違いない。


となると、どういう行動を取るにしろ、しばらくは動けないハズ…。


佐藤「どうかした?」


櫻井「いや、なんでもないよ」


佐藤「私と離れ離れになってさみしいって思ったの?」


櫻井「いや、そういうわけじゃないけど…」


佐藤さんを操っていた声が聞こえなくなったいま、佐藤さんと常に一緒にいる理由もなくなった。

そのため、一緒に暮らすことはなくなったが…


櫻井「いや、やっぱり少しさみしい」


佐藤「そっか…嬉しい」


最近、佐藤さんは少し元気が出てきた気がする。


でも…。


佐藤「じゃあ、わたし先に帰るね」


櫻井「あ、うん…じゃあね」


どこか距離を置いてる気がする。







櫻井「もしもし?姉ちゃん、どうしたの?」


姉「いま電話大丈夫?」


櫻井「大丈夫?。どうしたの?」


姉「あのね…話しておきたいことがあるの」


櫻井「なに?」


深刻な面持ちで話す姉の声に櫻井は予感がした。


勘のいい姉はもうすでに和のことがわかっているんじゃないかと。


姉「あのね…見つかったの」


櫻井「見つかった?」


もしや…


姉「この間ドブに落とした100円が見つかったの!!」


櫻井「切るわ」


姉「待て待て待て、それが姉にとってどれだけ嬉しかったと思ってるんだ!?」


櫻井「飛び跳ねるくらいかな」


姉「飛び跳ねて奇声あげて通報されるくらいに決まってるでしょ!!」


櫻井「マジで自重しろよ、アラサー!!」


姉「いや〜、童心に帰ったひと時でしたね」


櫻井「うん、家にも帰れて本当よかったね」


姉「警察の人は不審者にも優しいよ」


櫻井「その慣れてる感じやめて」


姉「そういえばもうひとつ聞きたいんだけどさ」


櫻井「なにさ?」


姉「和…どうなった?」


姉の口調が突然、なにかを感じたかのように重くのしかかる。


櫻井「…死んだ、かな」


姉には嘘をつけないな、そう悟った櫻井は正直に話した。


姉「そっか」


姉の口調からは驚きは感じられなかった。


姉「そっか…」


二度目の和の死を告げられた姉がなにを思い、考えているのか…口調はどこかそっけなく感じるが、長年ともに暮らしてきた櫻井にはそれがわかっていた。


でも、自分ではどうしようもなかった。


櫻井「じゃあ、切るよ、姉ちゃん」


姉「おう、気をつけてな」


姉ちゃんは悲しくて泣くことはない。


どんなに悲しくても、どんなに苦しくても…その思いを吐き出すことはできない。


泣けないから…。


だから俺が代わりに泣こう。


じゃなきゃ、和が可哀想だろ。


誰かが泣いてやらなきゃ、可哀想だろ。


櫻井「バカ兄貴め…」


最後の最後まで、俺たちを悲しませるなよ。







翌朝、学校


クラスメート1「おはよう、部長。もう体調は戻ったの?」


部長「あぁ、むしろ元気になった」


クラスメート2「大変だったな。2週間くらい休んでたもんな」


部長「すまないな。迷惑をかけたようだ」


カトウ「…部長」


佐藤「………」


部長「どうした?カトウ」


カトウ「わざわざ言わせんなよ。言いたいことわかるだろ?」


部長「まぁ、待て。櫻井たちが学校に来てから話をしよう」


クラスメート3「おいおい、どうした?。朝から険悪なムードだな」


櫻井「おはよう…って、どうして部長がここに!?」


部長「来たか。場所を変えて話をしよう。こっちに来い」




カトウ「さてと…話を聞かせてもらおうか」


部長「まぁ、そうカッカするな、実は私は敵のアジトに侵入するために二重スパイをやってるだけなんだ」


カトウ「そんな見え透いた嘘を話に来たんじゃないだろ?」


部長「さすがカトウだな」


カトウ「舐めんな」


櫻井「部長…どうして俺たちを裏切ったんですか?」


部長「もう知ってると思うが俊のためだ」


カトウ「それで、裏切り者がよく平然とこんなところに来れたな」


部長「はっ、平然とこんなところに来れたなはこっちのセリフだ。私は政治的に権力を持った団体下で正義のために働いているだけだ。むしろ世間一般から悪いことしてるように見えるのはお前たちの方だぞ」


佐藤「確かに…そうだね」


部長「まぁ、それはいいとして…ここに来た理由だが…お前たちを説得するために来た」


佐藤「説得?」


部長「あぁ、もうこの件から手を引けと説得しにな」


櫻井「いまさら引くわけないのはわかってますよね?」


部長「まぁな。だが、ショッカーによる襲撃は実は次が最後なんだ」


櫻井「最後?」


部長「そう、最後なんだ。この襲撃が終わればもう二度と襲撃はない。だから次の一回だけは目をつぶってくれないか?」


カトウ「ふざけるな!!」


部長「それにな、下手に邪魔されると襲撃の回数が増えるかもしれないんだ」


佐藤「そんなの関係ない。私は止めに行くよ」


部長「まぁ、そうだよな…。一応最後の忠告をしておく。今度の襲撃を邪魔したらもう社会的に生きることは難しくなるぞ」


櫻井「社会的に?」


部長「そうだ。国家権力を敵に回すんだ、それくらい覚悟しとけよ」


カトウ「命をかけてるんだ。もとより覚悟はできてる」


部長「やっぱり無駄だったか…」


佐藤「そのくらい部長ならわかってるでしょ」


部長「最後に今さら厚かましいが、友人としてのお願いを聞いてくれ。…お願いだ、この件から手を引いてくれ」


そして、部長は頭を深々と下げた。


櫻井「部長が俺たちのためを思って言ってくれてるのはわかりました」


カトウ「でも引くわけにはいかないんだよ」


佐藤「私も戦う、例え相手が部長でも」


部長「そうか…」


そういうと、部長は櫻井達に背を向け去っていこうとした。


櫻井「部長、最後に聞きます。マヤちゃんは無事なんですか?」


部長「安心しろ、マヤは無事だ」


そして部長は去っていった。


カトウ「お互いなにを言ったって無駄さ」


櫻井「おれ…やっぱり悲しいな。ずっと仲間だって信じてたのに…」


カトウ「俺と部長は昔からお互いをライバル視しててな。昔は仲が悪かったんだ。でも中学に入ってからヒョンなことから手を組むことになってな、それがキッカケでつるむようになったんだ」


カトウは突然淡々と昔話を始めた。


カトウ「いまや親友と言ってもいい仲だが…」


櫻井「だが?」


カトウ「いや、やっぱりいいや。とりあえず部長は俺らのこと心配はしてくれてる。ただ、なにに代えても譲れないものがあるんだ」


佐藤「………」


カトウ「いくら言葉を並べたって、部長を説得することは出来ねえよ。無理やり力でねじ伏せるか、それとも俊をどうにかするかしかねえよ」


櫻井「それでも俺は…あきらめない」


カトウ「…まぁ、止めはしないさ、ダメ元でやってろ」






昼休み


櫻井「部長、お昼一緒に食べませんか?」


佐藤「一緒に食べよ」


部長「…人の恋路を邪魔するのは無粋ってもんだ。二人で食べな」


櫻井「そろそろ佐藤さんにも飽きたので部長とお近づきの印にお昼を一緒にどうですか?」


佐藤「わたしも櫻井に飽きたのでそろそろ新しい道を開くためにも一緒にどう?」


部長「ふっ…仲良いな。だが遠慮させてもらうよ」


枝加「佐藤さあああん、今日こそは一緒にゴミのない世界でお昼でも…って、部長!!。お久しぶりです!!」


部長「枝加か…久しぶりだな」


枝加「ずっと体調悪くて休んでたって聞いてたんですけど、もう大丈夫なんですか?」


部長「あぁ、心配かけたな」


枝加「治ったお祝いにお昼でもどうですか?」


部長「すまないが私はボッチ飯が好きなんだ。誘ってくれてありがとう、みんな」


枝加「…なんか、様子が変ですね」


櫻井「まぁ…病み上がりだしな」


枝加「…なんか、様子が変ですね」


佐藤「ちょっとまだ病み上がりだから…」


枝加「そうですよね、いくら部長とは言えど、病み上がりじゃしんどいですよね」


櫻井「…すごいナチュラルに無視された」






放課後


先生「夏風邪が流行ってるから、手洗い反省文、それと反省文とかあと反省文も気を付けて帰れよ」


クラスメート1「なに言ってんだよ、先生。手洗いの前にまず反省文だろ」


先生「そうだな、先生としたことがうっかり忘れていた。じゃ、解散」


クラスメート「さよなら」








病院


夕日の西日に照らされた病室に一人の女性が入室する。


彼女を迎え入れたのは痩せこけ、変わり果てた姿になった神崎護であった。


部長「ごめん、お父さん」


カトウ「お前に謝る資格なんかねえよ」


部長が部屋に入る前からカトウは部長が来ることがわかっていたかのように待っていた。


カトウ「ほんとに謝る気があるならいますぐ俺らの元に戻って来い」


部長「そんな説得、私には意味がないことがわかっているだろ」


カトウ「俺もそう思ってた。全てを捨てて俊の元に行ったお前を説得しても無駄だと思ってた。だからお前が神崎さんの見舞いに来るなんて思ってなかった」


部長「………」


カトウ「でも見舞いに来たってことはまだ未練があるってことだろ」


部長「まぁ、今日が私が私でいれる最後の日だからな。今日くらいは父親に顔を見せないと親不孝だろ」


カトウ「私が私でいれる最後の日?」


部長「そうだ。あとで母の所にも寄る予定だ」


カトウ「…神崎さんはもう目を覚まさないかもしれない」


部長「そうか…その方がいい。娘が前代未聞の大犯罪者に成り下がるのを見るよりもずっといい」

カトウ「さすがの俺もお前がなにする気かわかんねえな」


部長「お前も知らない方がいい。身内が二人も地に落ちるところなんて見たくないだろ?」


カトウ「…部長、一つだけ聞かせてくれ」


部長「ものによっては答えてやろう」


カトウ「いや、はいかいいえかを答えるだけでいい。それで全部分かる」


部長「…いいだろう」


カトウ「部長の能力は相手の技をコピーする能力。発動の条件はわからないが、おそらくコピーできるのは一つの能力に付き一回のみ、ちがうか?」


部長「どうしてそう思う?」


カトウ「部長が俺と戦った時、部長は複数の能力を使った。神崎さんの刀の生成能力、佐藤恵のテレパシー、そして俺の未来に送る能力。こんな複数の能力を使いこなすなんてありえない。だから俺はコピー能力だと踏んだ」


部長「一人に付き一回のみは?」


カトウ「部長が俺との戦闘中、出し惜しみしてる場合じゃないと口に出した。だからおそらくはこの能力に使用回数が制限されていると踏んだ。その回数が一回のみである理由は…今日の部長の話から推測した」


部長「…さすがカトウだ」


カトウ「…馬鹿野郎!!そんなことしたらお前は…薫は…神崎薫は…」


部長「あぁ、元より死ぬ気でやってるからな」


カトウ「…いまの話を聞いて素直に行かせるわけにはいかなくなった」


部長「じゃあどうする?」


カトウ「四肢をはいででも止める!!」


部長「…そうか。私は嬉しいよ、こんなに友達思いの友がいて」


その瞬間、カトウが懐から拳銃を取り出し、構える。


だがそれよりも先に部長は見覚えのある模様が描かれた紙を取り出して、つぶやく。


部長「能力発動」


そして、部長は一瞬にして姿を消し去った。


カトウ「…くそっ、瞬間移動か!!」


いてもたってもいられず、カトウは病室を飛び出した。


カトウが神崎しかいないはずの病室から出た後、ごめんねという声が響いた。








僕は今、ハワイにバカンスに来ていた。


KASU「いやー、久々の登場がハワイだなんて…僕が主役になる日も近いな」


僕は、ショッカー研究部の元顧問だ。


もちろん読者のみんなも覚えているだろう、数々の僕の活躍を。


そんな僕がハワイのビーチでのんびりしている。


これは絵になる、間違いない。


まぁ、ふだん教職で忙しい僕も今日くらいはゆっくりしよう。


読者のみんなも僕が出てくるならどんな場面でも大満足間違いない。


しかし、ほんと…この目に写るすべて、青い海に、白い砂浜、戯れるギャルも、脇のトロピカルジュースも、空飛ぶ少女も、みんな僕のために存在しているように見える。


ほんといいところだ、ハワイ。


あれ?でも…空飛ぶ少女?。


ハワイの女性って飛ぶんだっけ?


ってか、こっちに落ちてきてない?気のせい?


さっきよりも大きく見えるけど…


そして、ドスンッ!!という音と砂埃と一緒にその少女は現れた。


?「まさかこんなところで知ってる人に出会うなんて思いませんでした。あ、とりあえずこのジュースもらいますね」


返事を聞く間も無く、その少女はトロピカルジュースを飲み干した。


?「いやー、3日ぶりの水分は美味しいですね。3日間ずっと飛びっぱなしでしたから。あ、あと食べ物あります?もうお腹ぺこぺこで…」


KASU「えっと…フリスクならあるけど…」


?「しけてますね。まぁ、腹の足しにはなるでしょうし、もらっておきましょう」


元顧問は不条理にもフリスクをカツアゲされた。


?「それじゃあ、私は失礼します。あ、その前に…日本ってどっちですか?」


KASU「いや、知らないけど…」


?「ほんととことん使えませんね。まぁ、太陽の方を辿ればそのうち着くでしょう」


そう言うと、少女は再び空を舞った。


そして、空の上で足を着き、走りながら消えて行った。


KASU「いまの子…どこで会ったっけ…そうだ、確か元ショッカー研究部にいた…森、だっけ?」


それはものの一、二分の突然の出来事。


KASUは夢でも見ていたのかと疑ったが、飲み干されたトロピカルジュースがそれを否定していた。






海の塩ののった風がマヤをいく度となく貫いた。


鳥たちと肩を並べ、走るマヤはふと、さっき会った人って結局誰だったっけ?と考えていた。


マヤ「まぁ、いいか」


そう言うとマヤはさらに加速し、鳥たちを追い抜いていった。


マヤ「…もうちょっとかな、日本まで」


強い思いを秘めたマヤは、日に輝く海を尻目に、今日も空をかける。







闇の中、光り輝く夜の街を見下ろせる一室に恵は現れた。


恵「佐藤恵、ただいま戻りました」


メイド長「ご苦労様」


政夜「よく戻ってきてくれた、恵くん。それで、和くんはどうなった?」


恵「…死にました」


政夜「そうか…大変残念だ。あとほんの少しで全て終わったというのに…」


メイド長「………」


政夜「しかし…本当によく戻ってきてくれた。和くんが亡くなったいま、君がここに戻ってくる意味などないと思っていたが…」


恵「和の命を無駄にしたくはありません。本意にせよ、不本意にせよ、和はこのことのために10年も生きてきました。その意味をここで途絶えさせたくなかったんです」


政夜「そうか…ありがとう。本当にあと少しだったのに…」


?「甘い」


謎の声とともに一発の銃声が部屋に響いた。


政夜「な…」


左胸を撃たれ政夜はドサリと床に倒れこんだ。


政夜「ま、さか…」


恵「どうして…あなたは死んだはずなのに…中山卓!!」


中山「そう、死んださ、社会的にな。ああでもしないと親父の目をごまかすことはできなかった」


中山は倒れた政夜に歩み寄った。


中山「中山政夜、あなたは甘かった。まだ冷酷になりきれなかった。たとえ小さな火種でも早々に潰しておくべきだった」


政夜「…小さな、火種…ウキクサ君達のことか…」


中山「そう、彼らを容赦無く消せば、もっとスムーズにことが進んだ」


政夜「ふっ…確かに、私は非情になりきれなかった」


中山「私はあなたのように甘くない。あなたに教えてもらった通り、残酷という才能が私にはある」


そして、中山は政夜に拳銃を向ける。


政夜「目的のためなら…肉親をも殺すというか…」


中山「ああ、それが中山家に生まれた私の義務だ」


政夜「…それでいい」


そして、放たれる弾丸は政夜を貫く。


政夜は野心を秘めた笑みを浮かべ、この世を去った。


メイド長「お帰りなさいませ、ご主人様」


中山「あぁ、待たせたな、メイド長」


恵「これは一体…」


恵はあまりの自体に状況が飲み込めなかった。


中山「君が知る必要はない、工藤樹」


恵「な…なぜ分かった?」


恵はそう言うと姿を変え、工藤の姿になった。


中山「和が死んだいま、どんな理由であれ恵がここに戻ることは絶対にない。そしてそれを見透かしてお前が恵の姿でここに来て、内部から攻め込むことも想定済み」


工藤「くっ…」


中山「久しいな、10年ぶりか?」


工藤「悪いけど、こんな再会は喜べないな」


工藤はすぐさまキメラの姿に変形し、全力で逃げ出した。


中山「やれ、メイド長」


メイド長「かしこまりました、ご主人様」


メイド長は命令を全うすべく、工藤を追いかける。


普通に逃げては追いつかれると判断した工藤は窓から身を投げる。


工藤「飛んで逃げれば追い詰めまい!!」


大鷲の翼を広げて、飛び去ろうとした工藤にメイド長が飛びかかる。


工藤「速い!!」


あまりのスピードに逃げ場を失った工藤はメイド長が振り下ろした拳をもろに受けた。


メイド長に叩きつけられた工藤は重力の加速により、一気に地面へと落下する。


そのまま一気に地面に叩きつけられるかと思いきや、途中で謎の影が工藤を捕まえ、消え去った。

空中まで工藤を追い詰めていたメイド長は周りに掴まれるものもなく、ただ落ちて行くしかなかった。


高さ60mはあろう場所から落ちたにもかかわらず、軽やかに着地したメイド長は謎の影をただ見守るしかなかった。


メイド長「逃がしたか…」


中山「あれは…」


夜の闇にとけ、はっきりと影を目視することはできなかったが、中山はその影に見覚えがあった。


中山「…用心するに越したことはないな、例え小さな火種でも…。もう戻ってきたか、速いな、メイド長」


メイド長「はい。申し訳ありません。目標を見失いました」


中山「まぁ、いい。それより、防衛省に至急連絡を入れてくれ」


メイド長「はい、なんと連絡しましょうか?」


中山「大至急捕まえて欲しいやつがいる、と」


メイド長「かしこまりました」


夜の街は何事もなかったかのように、静寂に包まれていた。








大都市の公園の茂みにマヤは降り立った。


マヤ「突然人が降ってきたので思わずキャッチしましたけど…」


マヤは工藤を地面におろし、一息ついた。


マヤ「まさかこんなところで工藤さんを拾うとは…」


マヤ「まぁ、道がわからなくて困ってたところですし、ちょうどいいですね」


工藤「うっ…」


マヤ「あ、目が覚めましたか?工藤さん」


工藤「君は…マヤ、か…」


マヤ「大丈夫ですか?」


工藤「大丈夫だ。それより…どうして君が?」


マヤ「まぁ、なんというか、たまたまですね」


工藤「そうか…」


自分が助かったことをようやく自覚した工藤は安堵のため息をついた。


工藤はふと視線を上げると、ビルに設置された大型モニターに目がいった。


工藤「な…どういうことだ!?これは」


工藤の声に反応してマヤもモニターの方を見る。


マヤ「…なるほど、そうきましたか」






櫻井家


カトウ「櫻井!!いるか!?」


櫻井「おいおい、チャイムくらい鳴らしてから入れよ、お前といい姉ちゃんといい…」


カトウ「なにも言わずに表の車に乗れ!!」


櫻井「は?なんだよいきなり?」


カトウ「説明してる時間がない、早く!!」


櫻井「わかったよ」


櫻井の家の前には一台のパトカーが停車していた。


櫻井とカトウが乗ったのを確認すると、パトカーは走り出した。


カトウ「工藤は居場所がわからんし、自分でなんとかできるだろうから、次は佐藤の家だな。頼んだ、さかもっちゃん」


さかもっちゃん「はいはい。あ、久しぶりだね、櫻井君」


櫻井「…どうも」


カトウ「心配なのはマヤちゃんだな…。どこにいるかわからないからどうしようもない…」


櫻井「で、なんだよ?。みんなでドライブにでも行くのか?」


カトウ「もうすぐ放送が始まるだろ。お前はラジオを聞いてろ」


ラジオでは臨時ニュースが流れていた。


アナウンサー「ニュースです。つい先ほど入った情報によりますと、複数人のショッカーの身元が割れたことより、以下のものを国際指名手配するとのことです」


櫻井「これは…」


櫻井は以前、マヤちゃんが指名手配されたことを思い出し、嫌な予感がした。


アナウンサー「今回指名手配されたのは、櫻井萍、佐藤彩、佐藤恵、加藤勝、工藤樹。以上5名を国際指名手配犯とし、警察は市民の協力を要請しております」


このとき、一つだけ確信したことがある。


アナウンサー「なお、警察は多額の懸賞金をかけており…」


僕たちはもう…


アナウンサー「繰り返します…」


日常には戻れない、と…

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