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悪の手先の風上にも置けぬ  作者: なおほゆよ
第3章 ラストバトル編
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ただ一人、忘れないと誓った人

今回も過去編の回想から始まります。

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なにがあっても、お前のことだけは忘れない


工藤「決着をつけるぞ、まもるんジャーグリーン!!」


グリーン「まだ私に勝つ気でいるの?」


恵のことだけは…


工藤「うおおおおおお!!!」


叫びと共に工藤は飛びたした。


全てはいま、目の前にいる最強の敵を倒すため


ここでこいつを倒さないと、ライトパウアーの作戦が失敗する。


グリーン「バカね。正面から突っ込んでくるなんて」


工藤が距離をつめ、あと一歩で攻撃が届くところで、工藤の動きが止まった。

そして、わけもわからぬまま、地面に倒れた。

工藤はなにがどうなったのかがわからなかった。

立ち上がろうと足に力をいれようとするも、それができない。

なぜならば、力を入れるべき足がなかったからだ。


工藤「うわああああ!!」


自分の足がなくなっていたと認識するや否や、激痛が工藤を襲った。


グリーン「もうおしまい?つまんない」


苦痛に悶える工藤を背にし、グリーンは立ち去ろうとする。

しかし、後ろから飛んで来た一発の弾丸がそれを遮る。

グリーンはそれが見えていたのか、首を横に傾けてそれを回避した。


グリーン「危ないわね…」


再び工藤の方に体を向けると、そこには足を切断したはずなのに、五体満足の姿の工藤が立っていた。


グリーン「ふーん、それが細胞変化の能力か」


工藤「はぁはぁ…」


工藤は足を再生させ、再び立ち上がったが、顔は苦痛に歪めていた。


グリーン「いいわね、おもしろい」


その瞬間、再び工藤の足が飛んで行った。

しかし、今度は素早く足を再生させ立ち上がり、持っていた銃を構えた。


グリーン「まだまだ遅い」


工藤が引き金を引くよりも早く、今度は工藤の腕が吹き飛んだ。


工藤「まだだ!!」


苦痛に歪めた顔からは汗が滝のように吹き出し、目は虚ろでいまにも倒れそうになりながらも腕を再生させた。


負けるわけにはいかない!!


工藤「うおおおお!!!」


何度切り裂かれようと、何度倒れようとも、工藤は立ち上がった。


グリーン「しつこいわね、そろそろオーバーワークで記憶が飛ぶわよ」


工藤「そうだな…もうだいぶイかれてるよ」


もはや銃を持ち上げる力すら残っていなかった。


工藤「それでも…忘れない限り、戦える」


あの人を…誰を?


でも約束したんだ


なにがあっても、忘れないと


工藤「…恵」


グリーン「もう飽きたわ、眠りなさい」


その瞬間、工藤の全身、いたるところに無数の切り傷が刻まれた。

気力だけで立ち上がっていた工藤は、為す術もなく、地にひれ伏す。

もはやそれは人の形を保っていたのかも疑うほどの、残骸と化していた。


グリーン「サヨウナラ、元まもるんジャーピンク」


もはや誰とも区別もつかぬ肉塊は、静かにその瞳を閉じた。




暗闇の中で、女の子に出会った。

彼女は明るく、ひょうきんな性格で、何よりも天然であった。

彼女は私に笑いかけてきた。

彼女は…めぐみだ、知ってる、いろいろと、覚えている、鮮明に。

でも、私は…だれ?

めぐみは相変わらず笑いかけてくる。

変わることのない笑顔で。

大丈夫、ちゃんと覚えている。

なにもかも忘れたけど、それだけは覚えている。

でも、私は…。だれ?

めぐみは笑った、よく知ってる。

めぐみは転けた、よくあることだ。

めぐみは失敗した、いつものことだ。

めぐみは…だれ?

私は…だれ?

わからない、思い映るのはめぐみだけ。

めぐみ、めぐみ、めぐみ、めぐみ、めぐみ、めぐみ。


…して…え…ん


めぐみ、めぐみめぐみめぐみ恵めぐみ恵めぐみめぐみ恵恵恵


を…さまして…ねえちゃん


恵恵恵恵恵恵恵恵恵恵恵恵恵恵恵恵恵恵恵恵恵恵恵恵恵恵恵恵恵恵恵恵


彩「目を覚まして!!恵お姉ちゃん!!」


恵を呼びかけるこえに導かれ、目を覚ます。

やがて脳は光を認識し、目に映る映像を流す。

気がつけば映像は立体となり、声の主を映し出す。


彩「よかった、目を覚ましたんだね、恵お姉ちゃん」


めぐみ…


声に反応し、体を起こす。

周りがそれを制す声をあげたが、認識できなかった。

白い色に包まれた部屋でふいに取り付けられていた鏡に目をやる。

そこには自分がよく知っている人、恵の姿が映っていた。


あぁ、そうか…


恵は私だったんだ。







櫻井の手をとったメグミョンは光に包まれていた。

やがて光は力を弱め、その正体をあらわにした。


櫻井「あなたは佐藤恵ではありません」


光が完全に消えると、メグミョンがいた場所には、一人の青年が立っていた。


櫻井「あなたは…工藤樹です」


工藤「………」


工藤は驚いたように自分の手を眺めた。

少しすると、小さく、しかしよく響く声で言った。


工藤「…鏡はあるか?」


櫻井は少し考えたあと、工藤に携帯を手渡した。

携帯のカメラを駆使し、工藤は自分の姿を認識した。


櫻井「あなたは変身能力をもつまもるんジャーピンクでした。それがどういうわけか、記憶を失い、自分を佐藤恵であると思い込んでいたんです」


工藤「………」


櫻井「俺のピグマの力を封じる能力であるSEALであなたの変身を解除しました。いまのあなたがあるべき姿なんです」


工藤「…そうか…そうだったのか。いま全てを思い出した」


俺はあいつに敗れたんだ。


工藤「通りで茜からどんなに話を聞いても記憶が戻らないわけだ」


櫻井「姉ちゃんから話を聞いておかしいと思った。変身能力をもっていなかったはずの恵さんがまもるんジャーピンクのように変身できるはずがなかった」


工藤「つまり変身能力をもっていたメグミョンは誰かが恵に変身したもので、本物はどこかにいると」


櫻井「そういうことです。そして本物の恵さんはおそらく…今のまもるんジャーブルー」


工藤「そうか…。ありがとう、恩に着る」


櫻井「いいんです。その代わり、約束は守ってください」


工藤「約束?」


櫻井「はい。一緒に、スペキュレーションと戦ってください」


工藤「そういえばそういう話だったな。だが一つ条件がある」


櫻井「なんですか?」


工藤「…できれば死人は出したくない。殺さずに拘束する形をとってほしい」


櫻井「はい。もちろんです」


工藤「ありがとう。これからよろしく」


櫻井「いえ、こちらも心強いです」


工藤「そんなに畏まらなくてもいいぞ。これでも昔はたまに遊んだ中じゃないか」


櫻井「そうですね。でもあなたにはなにかトラウマを植え付けられたような気がするので遠慮しときます」


工藤「…やっぱりコスプレがいけなかったのかな」


櫻井「それとひとつ確認したいんですが、あなたは記憶を失う前にまもるんジャーピンクを佐藤彩に委ねましたか?」


工藤「そうだな。記憶が失う前に彩に渡したな」


櫻井「通りで佐藤さんはピンクだったと」


工藤「しかし…信用していいのか?。ついさっきまで俺は敵だったんだぞ?」


櫻井「そうですね…それを判断するためにも、一緒にライトパウアーの集まりに来てもらえますか?」


工藤「ライトパウアー?。それって…」


櫻井「どういうわけか、俺たちのチーム名はそうなったんです」


工藤「…そうか」


櫻井「じゃあ、さっそく行きましょう。ライトパウアーに」


工藤「…和」


お前の願いは、まだ途絶えてなんてないんだぞ。






部長宅


カトウ「断固反対だ!!」


珍しくカトウが強い口調で反発を示した。


カトウ「忘れたのか?櫻井。こいつにいままでなにをされてきたのかを」


櫻井「待てよ。前も言ったことがあると思うけど、メグミョンである工藤には何度も助けられたことがあるんだって」


カトウ「前のライトパウアーでの出来事を忘れたのかよ?。こいつらの裏切りのせいで失敗したんだぞ」


櫻井「それは…」


工藤「言い訳にしか聞こえないかもしれないが、お前たちをライトパウアーに引き入れたのは櫻井に近づいて洗脳するためだった。当時の俺は奴らには逆らえない身分だったからどうしようもなかった。それに悪将軍を倒したところでなにも解決しなかったんだ」


カトウ「いくら言いなりになってたところで、お前は許されない悪事をしたんだ」


マヤ「許されない悪事をしてたのは私たちも同じじゃないですか。ねえ、幼女強姦犯先輩」


櫻井「俺たちだってショッカーとして命令とはいえ悪事を働いたんだ。っていうか、また懐かしいネタを…」


カトウ「だが、こいつはいま悪将軍になって人を殺している。しかも言いなりになっていたのは自分の記憶のためだぞ?」


部長「それについてなにか言うことはあるか?」


工藤「実は俺が悪将軍となってからは爆発で人は死んでいない。三谷の瞬間移動を発動することで、ショッカーを安全な場所に飛ばしてから爆発しているようにしているんだ」


マヤ「いまさりげなく言いましたけど、お兄…三谷光は生きているんですか?」


工藤「ああ、中毒者となってイエローをしている。知らなかったのか?」


マヤ「いいえ、なんとなくは分かってました。どうしてイエローをまたやることにしたか知っていますか?」


工藤「それは…」


マヤ「私が人質に取られているからだとハッキリ言ってください」


櫻井「え?人質?」


工藤「…その通りだ。君を中山グループで保護する代わりにイエローをやらされている」


マヤ「そうですか…わかりました。すみません、わたしはやるべきことがあるのでここで失礼します。あとわたしは工藤さんを仲間に入れるのは反対ではありませんよ」


道場をお借りします、マヤはそう神崎に言い残して部屋を去った。


部長「さて、話を戻すが…カトウは工藤を仲間にするのは反対派か?」


カトウ「反対だ。こいつがいつどんな理由でまた裏切るかはわからない。むしろいますぐ牢屋にぶち込むべきだ」


部長「お前の言ってることは間違ってはないが、お前らしくない、言葉が感情的だ」


カトウ「部長はどうなんだよ?」


部長「わたしか?。わたしは使えるものなら使うし、使えないなら肉壁にしてでも利用するつもりだぞ?」


カトウ「つまり賛成派か」


部長「まぁ、そうかな」


カトウ「神崎さんは?」


神崎「…そうだな。工藤、久しぶりだな」


工藤「お久しぶりです、神崎さん」


櫻井「そういえば二人はどちらも初代まもるんジャーか」


神崎「少し痩せたな。随分やつれたんじゃないか?」


工藤「………」


神崎「だが、瞳は前のままだな…」


工藤「…ありがとうございます」


神崎「俺は賛成だ」


部長「だそうだ、カトウ」


カトウ「…俺は納得しない」


部長「だがカトウも意見も一理ある。だからここは同盟で手を打たないか?」


工藤「同盟?」


部長「同盟というよりは一方的な支援だな。私たちはお前の言うことを信用しよう。だか、お前を信頼はしない。だから仲間にはしないが、協力してほしい」


工藤「具体的にはなにを?」


部長「知ってることを洗いざらい吐け。そして要請があれば協力しろ」


工藤「一方的だな」


部長「不服か?」


工藤「いや、かまわない。もともと知ってることは教えるつもりだったし、一人でもやる気だったし」


部長「そうか、ありがとう。協力感謝する」


工藤「それで、なにが聞きたい?」


部長「そうだな…まずはいまのまもるんジャーについて教えてくれ」


工藤「だいたい知っての通りだ。レッドは櫻井和、ブルーは確証はないが佐藤恵、イエローは三谷光、ピンクは佐藤彩。そしてグリーンは俊と呼ばれる青年なんだが…」


部長「あぁ、知ってる。私が聞きたいのはレッド、ブルー、グリーンの能力のことだ」


工藤「和の…レッドの能力はレーダーの能力と言っていた」


櫻井「レーダー?」


工藤「半径50メートルいないいる人物の位置を特定できるらしい。また、特定の人物がどこにいるかがわかるとのことだ」


櫻井「つまり、不意打ちはできないし、逃げることもできないと?」


工藤「いや、常に範囲内の人物の位置がわかるわけじゃない。集中力が必要だから常に発動しているわけではない。それに特定の人物が国外とか遠くにいる場合は判断できないと思う」


部長「つまり逃げられないわけではないと」


工藤「そうだな。次にブルーの能力だが、テレパシーだ。自分の声を相手の脳に直接送り込める。超大音量の声を送り攻撃したり、常に暗示のように声を送ることによって洗脳したりと応用がきく」


カトウ「やっかいな能力だな」


工藤「ただし、誰にでもテレパシーを送れるわけではない。条件はその人物の涙を見ることらしい」


櫻井「涙?」


工藤「泣いてるところを見る必要があるらしい」


カトウ「ふーん、つまりはある程度親しいやつにしかテレパシーを送れないんだな」


工藤「そうだな」


櫻井「そういえば、俺泣いてるところ見られたことあるかも」


工藤「うん。以前のライトパウアーは君を泣かせて、洗脳するために仕組んだものだからな」


櫻井「でもなんで洗脳されないんだろう?」


部長「お前の能力のおかげだろうな」


櫻井「なるほど」


カトウ「グリーンの能力は?」


工藤「すまない。知らないんだ」


神崎「そうか、残念だな」


カトウ「結局大した情報はなしか」


部長「いや、待て。大事なことをまだ聞いていない。スペキュレーションの黒幕は誰だ?」


工藤「…もう予想はついてるんだろ?」


部長「そうだな。高価なピグマを大量に生産できるほどの材料。政府に指示してまもるんジャーを作らせるほどの権力。数多を犠牲にしてでも手にするという強い意志。これらの持ち主にひとり心当たりがある」


櫻井「いったい…それは…」


部長「中山グループ代表、中山政夜」


櫻井「政夜さんが!?」


工藤「俺も直接命令を受けるわけではないのでそうとは言い切れないが、スペキュレーションに加担していることは間違いない」


櫻井「………」


工藤「特に初代まもるんジャーグリーンである、中山のメイド長は相当強いぞ」


神崎「グリーンが?」


工藤「まったく歯が立たなかった」


櫻井「中毒者かな?」


工藤「いや、中毒者相手なら勝つまではいかずとも手も足も出ないほど苦戦はしない」


神崎「中毒者のさらに上か…」


カトウ「どうだか。適当なこと言って士気を下げる気かもしれないぜ」


部長「うーむ、父さん、なにか知らないか?」


神崎「うーむ、初代グリーンは得体の知れないやつだったからな。実力はわからなかった」


部長「中山家のメイドならマヤがなにか知ってるかもな。話を聞きに行こう」


神崎「いまは道場にいるらしいが…」


神崎は道場の方へ行こうと部屋を出た瞬間、


ドオオオオオオン!!!


道場から爆発音がなり響いた。


櫻井「なんだ!?」


カトウ「行こう!!」






櫻井たちが道場に訪れると、道場は竜巻が直撃したかのように半壊していた。


櫻井「マヤちゃん!!」


マヤ「こ、ここです」


瓦礫の中からマヤと思われる声がした。


カトウ「今掘り起こすから!」


適合者数名の迅速な対応によってマヤはすぐに救出された。


マヤ「すみません、道場壊してしまいました」


神崎「いいから医務室に運ぶぞ」






どうやらマヤの怪我は大したことはないようで、神崎の手当もあり、すぐに治るとのこと。


櫻井「あの爆発音はなんだったの?」


マヤ「あれは…わたしがちょっと技を強くしすぎてしまって…」


カトウ「あの爆発はマヤちゃんがやったの?」


マヤ「はい。すみません、道場を壊してしまって…弁償します」


神崎「いや、それより無事でなによりだ」


櫻井「それよりいまの爆発はどうやって?」


マヤ「…ちょっと新しい技を開発してて」


櫻井「…新しい技?」


部長「まぁ、無事でなによりだ。今度からは気をつけるんだぞ」


神崎「それはそうと、中山家のメイド長について知ってるか?」


マヤ「メイド長ですか?」


部長「そいつは敵側の中毒者なんじゃないかという疑いがある」


マヤ「中毒者かどうかはわかりません。でもかなりの力があります」


櫻井「用心しておくに越したことはないか…」


工藤「他に聞きたいことはあるか?。正直言うと俺も知らないことが多すぎる」


部長「んー、もう大丈夫かな。とりあえず連絡先を教えてくれ」


工藤「わかった。なにか聞きたいことがあったらここに連絡をくれ」


部長「うむ、受け取ったぞ」


櫻井「そういえばやつらのアジトに忍び込んだときになにか得たものはないんですか?」


部長「そうだな、これといってなかった。まぁ、爆発させて機能は停止させたからしばらくは動けまい」


工藤「どうだろうな?。やつらの計画はすでに最終段階に入ってる。無理にでもやってくると思うが」


神崎「そうか…」


部長「…最後の質問だ。まもるんジャーの潜伏先を教えろ」







とあるビル


神崎「ここの地下にやつらが…」


工藤「あぁ、間違いない。いまのまもるんジャーはここに潜伏している」


部長「佐藤もここにいるのか?」


工藤「はっきりとは言えないが、おそらくはそうだ」


櫻井「なら行こう。佐藤さんが待ってる」







カトウ「暗いな」


地下に侵入すると、光は足元の非常灯しかついていなかった。


マヤ「というか、こんなに堂々と侵入してよかったんですか?」


部長「向こうには居場所がわかる能力持ちがいるからな、不意打ちはできまい」


神崎「待て、人の気配がする」


神崎がそう言うと、通路の暗闇の奥から野太い声が響き渡る。


?「動くな!!貴様らはすでに包囲されてる!!」


すると、暗闇は突然の光にかき消され、辺りを照らす。

思わず目を細める一同は、しだいに声の正体に気がついていく。

全方の謎の人物は迷彩柄の服に身を包んだガタイがいい男だった。

しかもそれは一人ではなく十数人いて、皆武器を構えていた。


部長「軍人か?」


工藤「おそらくな」


軍人「妙な抵抗や、反抗をするな。怪しい動きをした瞬間に射殺する!!」


櫻井「どうすんだよ?。逃げるか?」


カトウ「まさか。ここは俺に任せろ」


そう言うとカトウは一歩、また一歩、軍人の方に歩き出した。


軍人「最終警告だ!!3秒以内に止まれ!!さもなければ撃つぞ!!」


櫻井「どうする気だよ?」


軍人「3!!」


カトウ「いいから俺の後ろにいろ」


軍人「2!!」


カトウ「さてと…」


カトウは深呼吸をし、準備を整えた。


軍人「1!!」


カトウ「能力…発動!!」


軍人「撃てええええ!!!」


指揮官のGOサインと同時に十数丁の武器が一斉に火を吹く。

そして、それら全てが凄まじい炸裂音とともにカトウに襲いかかる。

しかし、どういうわけか、その全ての弾丸がカトウの目の前でどこかに消えた。

しばらく炸裂音が続いたあと、弾薬が尽きたのか、攻撃が止まった。

通路には凄まじいほどの銃痕が残ったが、カトウの後ろにはそれがまったくなかった。

敵も味方も困惑していると、今度は櫻井の隣にいたマヤが口を開いた。


マヤ「次は私の出番ですね。カトウ先輩はわたしが合図したら、さっきの技を使って防いでください」


カトウの前まで前進したマヤは腕を軽く前に差し出し、祈るように目を閉じた。

すると、さっきまで無風だった通路に風が流れた。

風はマヤの方に集まり、やがて彼女を中心に渦をなした。

渦は力をまし、何かを飲み込むかのように大きくなる

やがて風はマヤの手のひらの上で収束し、透明な球体と化した。

チラリとカトウの方を見た後に、マヤは大きな声で叫んだ。


マヤ「死にたくない人は伏せてくださいね!!」


そして透明な球体を前方に投擲し、小さな声でつぶやいた。


マヤ「能力…解放」


その瞬間、抑えられていたものが爆発し、溢れ出すかのように爆風が軍人たちを襲った。

風は屈強な男たちをいとも簡単になぎ払い、あらゆるものを吹き飛ばした。

気がつけば、前方には瓦礫の山が積もっていた。


マヤ「ふう、これでも手加減したんですけどね」


櫻井は口を半開きにしてポカンとするしかなかった。

なにがなんだかわけがわからなかった。

とりあえず頭を整理させ、一つずつ疑問を解消することにした。


櫻井「ええっと、マヤちゃん、いまのはいったい?」


マヤ「私の能力、ものを小さくする…正確に言うと、ものを収縮させる能力なんですけど、その能力で大量の空気を収縮させ、一気に能力を解除することで、空気の反発力を利用した爆弾を作ったんです」


櫻井「淡々とすごいこと喋るな。カトウのはいったい?」


カトウ「俺の能力は知ってるよな?」


櫻井「触れたものを10分後に送る能力だろ?」


カトウ「いや、それが触れなくても発動できるようになった。さっきのは俺の目の前に触れたものを10分後に送る壁を作ったのさ」


櫻井「壁?」


カトウ「そう。その壁に触れた銃弾が10分後の未来に送られるってことだ」


神崎「つまり10分間は身を守れるバリアを作ったということか?」


カトウ「そういうことだ。そういうわけだから早くそこから離れた方がいいぜ。さっきの全部飛んでくるから」


櫻井「二人ともすごいな。バトル漫画みたいじゃないか」


カトウ「ふっ。ちなみに俺はこの技を『約束された10分間』と書いて『カトウバリア』と呼ぶことにしたぜ」


櫻井「ルビがダサいぞ」


カトウ「お前に言われたくねえ」


マヤ「いいですね。ならば私はさっきの技を『主人公は私』と書いて『ヒーローブレイク』と呼ぶことにします」


櫻井「さりげなくその席を狙わないで欲しい」


神崎「しかし、いくら場所がわかる能力者がいると言えど、敵の準備が良すぎる。まるであらかじめ私たちが来ることを知っていたかのような…」


ブルー「裏切り者でもいたんじゃないですか?」


突然の、瓦礫の山の向こうからブルーの声が聞こえた。


工藤「…恵」


ブルー「…どうやら本当に真実を知ってしまったようですね、樹。もう姿を隠す必要もないですね」


そう言うとブルーはヘルメットを取った。

そこには10年前の姿の面影を残した佐藤恵が現れた。


マヤ「裏切り者とはどういう意味ですか?」


恵「言葉の通りです。あなたたちの内の誰かが教えてくれたんです」


カトウ「………」


カトウは後ろにいた工藤を一瞥した。

その目には疑心の念が感じられた。

裏切り者と聞いて真っ先に思い浮かんだのが工藤だったからだ。

しかし、相手の対応に工藤も少し動揺しているように見える。

カトウはまだ答えを出すことはできないと考え、恵へと視線を戻す。


部長「私たちを混乱させるための言葉かもしれない。いまは相手に集中しろ」


部長の言葉にはっとし、全員が恵の方に振り向く。

しかし、神崎と工藤は後ろに気配を感じて、振り返った。


通路の暗闇の中からまもるんジャーイエローの三谷光とグリーンの俊が現れた。


カトウ「挟み撃ちか…」


恵「あらかじめ教えてもらったおかげで準備が捗りました」


さらに恵の後ろから櫻井和が姿を現した。

その後ろからフラフラとしたおぼつかない足取りで佐藤彩が現れた。


櫻井「佐藤さん!!」


櫻井が呼びかけに佐藤はまったく反応を示さなかった。


カトウ「無駄だ。佐藤の目を見てみろ」


佐藤の目からは生気が感じられず、焦点があっていないように見えた。


櫻井「恵さん、あなたは実の妹さえも利用すると言うんですか?」


恵「そういうあなたも兄弟でなんども殺しあってるじゃないですか?」


櫻井「望んでやったことじゃない!!」


恵「故意にやってなかったら許されるとでも思っているんですか?」


櫻井「そういう問題じゃない!!」


カトウ「辞めとけ、櫻井。説得したって無駄だ。何年やつらがやってきたと思ってるんだ」


恵「そうですよ。話し合いでは解決しません。もうわかってると思うので話しますが、中毒者を生かすためには高額で入手が難しいピグマを定期的に摂取しなければいけません。しかしそれは普通ではできないんですよ。いまやってることを続けなければ生きていけないんです」


そこで恵は話すのをやめ、少し間を置いてから櫻井を睨みつけ、静かに言い放った。


恵「あなたは和に死ねと言うんですか?」


櫻井「………」


カトウ「それ以上耳をかすな。お前は佐藤を助けることに集中しろ」


神崎「とは言ったものの…こう囲まれてしまってはな…」


カトウ「俊!!お前もこのままこいつらの言いなりになっていいのか!?」


俊「………」


カトウ「部長、お前からもなんか言ってやれ」


部長「………」


カトウ「…くそ、部長らしくもない」


櫻井「どうする?」


神崎「レッドは私がなんとか食い止めよう」


工藤「じゃあ俺は後ろのやつを…」


マヤ「決まりですね。櫻井先輩とカトウ先輩は佐藤先輩を助けてください。工藤さんはまもるんジャーグリーンをお願いします」


櫻井「マヤちゃん?」


マヤ「まもるんジャーイエローは、私が倒します」


櫻井「本気で言ってるの!?」


マヤ「大丈夫ですよ、私には必殺技があります」


カトウ「櫻井、ここはマヤちゃんに任せよう。俺たちは佐藤を助ける」


櫻井「わかった…死ぬなよ、みんな」


恵「ふふっ…あれだけ忠告したのに…」

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