トリックリバース
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姉「誕生日おめでとう」
櫻井「…姉ちゃん…」
姉「どうした?いまにも泣きそうな声して。まさか…振られたか?」
櫻井「…いや…」
姉「そういうときは泣くべきだ。姉ちゃんも失恋したときは恨みを連ねて泣いたもんだ」
櫻井「…だから違うって…」
姉「そういうとき、姉ちゃんには話を聞いてくれる友達がいたんだ。おかげで立ち直れた」
櫻井「友達…か…」
姉「ウキクサにもいるだろ?そういう友達がさ」
櫻井「…いたよ」
姉「…過去形?」
櫻井「ちょっといろいろあってね。…信じれなくなっちゃった」
姉「お前は…嫌いなのか?そいつが」
櫻井「…わかんない。いや、わかんなくなった」
姉「…まぁ、そういう時もあると思う…でも早めに仲直りした方がいい。遅くなったら…もう戻れない」
櫻井「…うん、わかった」
姉「それに姉ちゃんあんたに言ったよ、仲間は大事にしろって」
櫻井「そういえばそんなこと言ってたっけ…。でも…仲間かどうかも…わかんないんだ…」
姉「…なら、問いつめろ。じっくり話し合え。絶対に現状維持で終わるな」
櫻井「…うん、わかった」
姉「で…それはさておき…なんだ?あの留守電メッセージは?」
櫻井「なんだっけ?」
姉「結婚式で赤飯炊いてやるってやつ」
櫻井「ああ、あれね」
姉「彼氏がいない姉ちゃんに対する皮肉か?」
櫻井「いや、違うけど…」
姉「婚活中の姉ちゃんに対する悪意か?」
櫻井「いや、違うけど…」
姉「あんた姉ちゃんのこと嫌いだったのか!?」
櫻井「いや、違うけど…」
姉「まったく…ようやく電話が使えるようになったからあんたの留守電メッセージ聞いてなんか言い返してやろうと受話器を手に取ったときにそういえば誕生日だなってきずいたからよかったものの…」
櫻井「電話通じなかったら忘れてたんだ…」
姉「正直言うと、ゴメンね」
櫻井「いや、いいんだよ。オレみたいな出来損ないの生まれた日なんて忘れても…」
姉「大丈夫か?」
櫻井「いや、忘れて。存在した記憶さえも」
姉「…重傷だな」
10月10日
部活
人
それは抽象的なものでしかない
なぜならば人と動物の境界線は曖昧だからだ
そう、だから言ってしまえばオレなんて
ただの二酸化炭素製造機みたいなもので
ミカンの皮と身の間にある白いやつとなんら変わりなく
もっと言うならば
ミカンの皮と身の間にある白いやつとなんら変わりない
しかし、二酸化炭素製造機にもいろいろな役割がある
そしてこの世界を演じている
オレなんてただ主役というスポットライトを当てられた二酸化炭素製造機にすぎなくて
たまたま劇場の段上のど真ん中に落ちてあったミカンの白いやつにすぎない
さて、この無能なミカンの白いやつにこの劇場を華やかに彩ることはできるだろうか?
否、運命という掃除員にあの世というゴミ箱に捨てられるのがオチだ
このオレの一番の反省点はこの人生というゲームが始まったときに
職業を白いやつにしてしまったことだ
そしてこのゲームのもっとも難しいことは
リセットボタンがないことだ
だが、このゲームに製作者はひとつ、我々に選択肢を与えた
それはゲームの電源を切ること
つまり…死ぬことだ
オレは今日も死に場を求め、さまよい生きるミカンの白いやつ
部長「いつまで引きずっとんだ!!!!お前は」
オレはいま、死ぬ前にせめて下等との関係くらい元通りにしようと部活に来たが…
部長「下等なら歯医者があるから帰ったぞ」
約束の日まであと二日
なんとものんきなものだ
まあ、オレが言うのもなんだがな
…ため息でもついてみようかな
それで世界が変わるかもしれない
櫻井「はぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
部長「…長っ!」
櫻井「2分52秒か…記録更新だ」
部長「すごっ!」
櫻井「もう一回やってみようかな。今度は3分超えそうだし」
部長「やめてくれ、こっちの息が詰まる」
櫻井「はぁーーーー…」
部長「ストップ!ストップ!…なんだいきなりすごいため息なんてついて?」
櫻井「最近のマイブームなんです」
部長「どれだけ番外編引きずってんだよ!?」
櫻井「はぁーーーー…」
部長「だからやめろって、窒息死する気か?」
櫻井「ため息しすぎて窒息死…それも悪くない。はぁーーーーーー…」
部長「アホか!?目の前で自殺される身にもなれ!!」
櫻井「…それもそうですね」
部長「で、なんのため息だ」
櫻井「番外編に登場できなかったため息」
部長「…それだけじゃないだろ?」
櫻井「はい?」
部長「だから番外編のことだけじゃなくて…他にも悩みがあるんだろ?」
櫻井「………」
部長「まぁ、無理に話せとは言わないが…助けは多いに限るんじゃないか?」
櫻井「…それもそうですね…まぁ、しいて言うなら…この世にリセットボタンがないことが悩みですね」
部長「…お前は…この世にリセットボタンがないと思ってるのか?」
櫻井「そりゃあね」
部長「じゃあ、どうしてないって思うんだ」
櫻井「どうしてって…ないもんはないでしょ?」
部長「だから…どうしてないって言い切れるんだ?」
櫻井「それは…わかんないけどさ…。じゃあ部長はあるって言うの?リセットボタンが」
部長「ある…って言ったらどうする?」
櫻井「えっ?」
部長「押してやろうか?お前のリセットボタン」
櫻井「………」
部長「………」
櫻井「…いえ、なんか怖いんで遠慮しときます」
部長「…そうか…」
櫻井「…あるんですか?リセットボタンって」
部長「さあな、わからん」
櫻井「なんだそりゃ?」
部長「わたしはただ、人から正しいって言われたことを鵜呑みにしたくないんだ」
櫻井「なんか難しそうですね、それ」
部長「そうでもないさ。信じるものは自分で決めるっていうだけのことだ」
櫻井「…自分で…決める…」
部長「…なんか変な会話になっちゃったな…すまない」
櫻井「いや、ありがとう…」
信じるものは…自分で決める…
櫻井「部長、ひとつ聞きたいだけどさ」
部長「なんだ?」
櫻井「もし…もし、オレが人を誘拐しなきゃならないって言ったらどうする?」
部長「唐突にものすごい例え話をするんだな…」
櫻井「………」
部長「その例え話…お前は誘拐しなかったらどうなる?」
櫻井「…死にます」
部長「誘拐されたものはどうなる?」
櫻井「…改造されます」
部長「お前は誘拐さえすれば助かるのか?」
櫻井「一応は…」
部長「…なら、そのときは…わたしをさらえ」
櫻井「は?」
部長「わたしならお得意のピッキングなりなんなり使って改造とやらをされる前に脱出してみせるさ」
櫻井「部長…」
部長「わたしは今日、帰りに近くの公園のベンチで夜遅くまで本でも読んで過ごそうかな」
櫻井「なにを言って…」
部長「でもあの公園、夜には人がいないから誘拐現場には最適なんだよな…でもまさか誘拐なんてないな」
櫻井「なに言ってんだ!?」
部長「どうした?急に怒鳴って」
櫻井「そんなことできるわけないだろ!?」
部長「怒るなよ。例え話、だろ?」
櫻井「………」
部長「それに…わたしを信じてみないか?」
櫻井「……でも…」
部長「櫻井」
櫻井「なに?」
部長「わたしを信じろ」
櫻井「………」
部長「………」
櫻井「…オレが信じるものは…オレが決めます」
部長「誰の言葉だ?それは」
櫻井「…部長」
部長「なんだ?」
櫻井「オレはあなたを信じてます」
部長「ありがとう」
櫻井「…ちょっと用事ができたんで行ってきます」
部長「うん…気をつけて…」
櫻井「部長こそ」
部長「…行ったか…。隠れてないで、そろそろ出てきたらどうだ?」
下等「ツラかった、隠れんの…」
部長「気まずいからって隠れんなよ」
下等「それより…本気かよ?部長」
部長「そりゃああそこまで言ったら本気だ」
下等「…部長まで…巻き込みたくない…」
部長「…ありがとう…でもお前が背負ってるもの、わたしにも背負わせてくれ」
下等「…でも…」
部長「わたしを信じてくれ。それにわたしは、転んでもただでは起きないさ」
ショッカーアジト
悪将軍「ほう、やるのか?」
櫻井「やってやるよ」
悪将軍「ゼロ、用意してやれ」
ゼロ「了解」
悪将軍「誘拐道具を用意してやろう」
ゼロ「スタンガンと手錠だ」
悪将軍「それと車も出そう。運転してやれ、ゼロ」
ゼロ「…了解」
車の中
ゼロ「どこに行けばいい?」
櫻井「桜田北高校に」
ブロロロロ!!(車の音)
ゼロ「………」
櫻井「………」
ブロロロロ!!
気まず!!
ゼロ「………」
櫻井「………」
ブロロロロ!!
ここはもしかして…オレから話しかけるべきか?
櫻井「あの…」
ゼロ「話しかけるな、気が散る」
櫻井「すんまへん」
やっぱ怖い、この人
っていうか…気が散るってどういう意味だ?
ブロロロロ!!
キキーーー!!!!(ブレーキ音)
櫻井「おわっ!!……ちょっと、安全運転して!」
ゼロ「うるさい、殺すぞ」
こわっ!!
運転荒いな…絶対事故起こしたことあるな、この人
…っていうか…そもそも…
櫻井「あの…免許って持ってますよね?」
ゼロ「………」
櫻井「なぜ無言!?」
ゼロ「うるさい、殺すぞ」
櫻井「…持ってないの?」
ゼロ「運転はこれが初めてだ」
櫻井「降りる!今すぐ降ろせ!!」
ゼロ「うるさい、気が散る」
櫻井「気が散るってそういう意味かい!!!」
桜田北高校の近くの公園
部長「………」
櫻井「…いた…本当に本読んでる…」
部長「………」
櫻井「…信じてます、部長」
ビビッ!(スタンガン)
車の中
ゼロ「誰にも見られてないよな?」
櫻井「………」
ゼロ「行くぞ」
ブロロロロ!!
吐き気がする
車酔いなんかじゃなくて
罪悪感で
もし、部長が逃げられなかったら
オレは…彼女の一生を台無しにしてしまう
そう思うと怖かった
逃げ出したかった
自分でもとんでもないことをしたと思ってる
でも、もう逃げちゃいけない
背負って行き続けなきゃいけない
もう、あとには戻れないから
…下等には、悪いことを言ってしまったな…
人を道連れにして生きる
最低だな、オレたち
ショッカーアジト
悪将軍「ほう…ほんとにやってくるとわな…」
面接官「…やってしまったんだね、櫻井君」
櫻井「…すみません」
面接官「謝る相手が違うだろ?」
櫻井「…そうですね」
悪将軍「あとは頼んだぞ」
面接官「…五分後に改造の準備ができる、それまでこの部屋に閉じ込めておいて」
櫻井「あの…改造って具体的には何をするんですか?」
面接官「ある薬を投与して、背中に爆弾をつける…それだけだ」
櫻井「ある薬?」
面接官「わたしもよくわからないが…人の潜在能力を発揮させる薬と聞いた」
櫻井「…人の潜在能力を……うっ!」
面接官「今日は疲れただろ?医療室で休んどけ」
櫻井「…わかりました」
ここがショッカーのアジトか…
まったく…この程度でわたしを閉じ込めたつもりか?
カチャッ!(鍵が開く音)
さて…転んでもただで起きない、それがわたしだ
部長「行こうかな…」
医療室
ツラい
一人の人生を台無しにした
彼女のために何ができるのだろうか?
こんなところで寝ていてもいいのだろうか?
いや、オレにだってなにか出来ることがある
寝てなんていられない
放送「緊急事態!緊急事態!アジト内のショッカーに継ぐ!本日捕らえたエモノが逃げ出した!探し出して捕まえろ!」
櫻井「部長が…」
放送「なお、エモノの生死は問わない!必ず探し出せ!!」
櫻井「生死は問わない!?」
マズい、早くどうにかしないと
でも、どうすればいいんだ?
…まずは部長を探さなきゃ
どこかの部屋
ショッカー「…やっぱり、部長だったのか」
部長「その声…下等か?」
下等「ショッカーについて調べるなら…悪将軍の部屋だ。あそこはショッカーは入れない。なにかあるとすれば、そこだ」
部長「…どこにあるんだ?」
悪将軍の部屋
部長「…ここか…」
さてと…まずはカギを開けますか
カチャッ!
中は…薄暗いな…
誰もいない…よし、調べるとしますかな…
櫻井「どこにいんだよ…はぁはぁ…」
下等「こっちだ、櫻井」
櫻井「下等…なんでお前がここにいんだ?今日は襲撃の日でもなんでもないから普通は…」
下等「いいからこっち来い」
悪将軍の部屋
カタカタ(パソコンの音)
悪将軍のパソコン…調べればなにかわかるはず…
パソコン[パスワードを入力してください]
部長「パスワードか…」
ハッキング出来ればわかるのに…パソコンがない
部長「部屋を調べれば…わかるかもな」
櫻井「このアジトに侵入するためにわざと誘拐されたのか!?部長は」
下等「ああ、いま悪将軍の部屋にいる」
櫻井「そのためにわざわざこんな危険なことを…」
下等「そういうやつなんだ」
櫻井「ピッキングの技術といいただ者じゃないよな。なにものなんだ?部長って」
下等「…そっか、お前は知らなかったな。まぁ、何者っていうほどではないが…」
悪将軍の部屋
部長「写真?」
!!!!
…どうして、この写真が…
まさか…パスワードって…
カタカタ
パソコン[パスワード入力完了]
部長「くそがっ…」
櫻井「まもるんジャーの最高責任者の一人娘!?」
下等「そう」
櫻井「…でもなんでピッキングやらハッキングなりできんの?」
下等「さあ?」
櫻井「いいの?正義の味方の責任者の娘が犯罪者の申し子でも」
下等「しょうがないよ、昔からぶっ飛んでたから」
写真といい
パスワードといい
悪将軍はもうあの人しかいない…
でもどうして…
やっぱり…そういうことなのか?
悪将軍「いいか!捕まえたら連れて来い!」
マズい!悪将軍が戻ってくる!
パソコンは消して…
隠れるしかない!!
カチャッ!(ドアが開いた音)
悪将軍「………」
大丈夫、見つかってはない
悪将軍はこの部屋の中でも仮面をつけているのか?
もしかしたら…仮面を取るかもしれないな…
あ!仮面を取る!
スウッ(仮面を取る音)
…やっぱり…あなただったんですね
櫻井「でも…大丈夫なのか?」
下等「なにがだ?」
櫻井「部長は…無事にここから逃げれるのか?」
下等「そのために今日、オレはここに来たんだよ」
櫻井「どういう意味だ?」
悪将軍の部屋
悪将軍「………」
もうすぐ…約束の15分だな…
『下等「15分、調べるのはそれだけにしてくれ。それが約束。15分後、悪将軍の部屋の前で待ってる」』
頼むぞ、下等
わたしだけじゃない
多くの命がかかってるんだから
櫻井「…ほ、ほんとにやるのか?」
下等「本気だ。やらなきゃ殺されるぞ、部長が」
シンジルナ!!
櫻井「…信じていいんだよな?」
下等「…信じてくれ」
シンジルナ!!
…黙れ
シンジルナ!!
オレが信じるものは
シンジルナ!!
オレが決める!
シンジルナ!!
黙れ!!
シンジルナ!!
櫻井「黙れえええええ!!!!」
下等「どうした!?」
櫻井「下等」
下等「なんだ?」
櫻井「オレはお前を信じてるぞ!」
下等「ああ、任せてくれ」
悪将軍の部屋
『下等「このアジトはある山の地下に作られていて、出口はひとつしかない。つまりそこさえ見張っていれば、普通には出ることはできない」
部長「地下に作られているなら通気口のひとつやふたつないのか?」
下等「ないこともないが…常人には通り抜けることはできないだろうな…」
部長「じゃあどうやって?」
下等「おれに考えがある…」』
さて…15分たったが…
悪将軍はまだ部屋の中にいる…
どうやって部屋から出ようか…
ジリリリリ!!!!!!!(火災警報機の音)
悪将軍「…火事?」
バタン!!(悪将軍が出て行く音)
部長「危なかった…」
これで出られるな
バタン!!(部長が出て行く音)
下等「部長…よかった…無事だったのか」
部長「警報機はお前の仕業か?」
下等「正確に言うと櫻井の仕業だな」
部長「で、手に持ってるものはなんだ?」
下等「見ての通り…」
アジトの出口
下等「………」
櫻井「………」
面接官「下等君、櫻井君。彼女を見なかったかい?」
下等「いえ…」
面接官「そうか…」
櫻井「………」
下等「ちょっと外に出て気分展開しようと思います」
面接官「わかった」
櫻井「………」
下等「それじゃあ、ちょっと行ってきます」
アジトの外
櫻井「………」
下等「ここまで来れば大丈夫だな」
櫻井「ふぅー…」
部長(櫻井のショッカースーツを着てる)「ひとまず上手くいったな」
下等「部長が櫻井のショッカースーツを着て、櫻井を装って外に出てくる作戦成功だな」
部長「なんだ?その妙に説明口調な作戦名は」
下等「オレは読者に優しくありたいだけ」
部長「それより、いいのか?櫻井はまだアジトの中なんだろ?いくらあいつもショッカーとは言えどもアジトを出るところを見られたのに、アジトの中にいたら怪しまれないか?」
下等「大丈夫…多分」
アジトの通気口
ほんとに大丈夫なのか?この通気口
『下等「櫻井、一応お前はこの通気口から外に出てくれ」
櫻井「…出れるのか?この通気口」
下等「おそらく…適合者のお前なら…」
櫻井「おそらくって…」
下等「とにかく頼むぞ」』
櫻井「他にいい方法はなかったのかねぇ」
ああ…私服が汚れる…




