真実を爆発オチで隠して
悪将軍「はっはっは!今遊び盛りで社会の厳しさを知らない青二才のリア充ども
に人気のこのキャンプ場は我々ショッカー軍が占拠した!」
辺りはすっかり薄暗くなり、そろそろ山の夜が訪れようとしていたキャンプ場に一人の男の声がこだまする。
彼こそ謎の破壊集団、ショッカーを率いる悪将軍と呼ばれる仮面をつけ、正体を隠した男である。
悪将軍「ショッカーども!一帯にひしめく人生楽しんでるくそリア充どもをとら
えろ」
ショッカーたち「キキー!」
リア充「キャーーー!!!」
悪将軍の言葉を合図にショッカーたちがリア充に襲いかかった。
しかし、何名かのショッカーは呆然としたまま、立ち尽くしていた。
櫻井「本当に…ショッカーなんだな」
気がつけばショッカーをさせられていた櫻井は受け入れ難い現実を直視できなかった。
やがてだいたいのリア充どもは捕らえられ、拘束され、広場に集められた。
悪将軍「はっはっはっ!!憎きリア充をこうやって並べて見るのはいい眺めだな!!」
捕らえられたリア充どもはみな黙り込み、いまの状況を嘆いていた。
みんなまさか自分がテロに巻き込まれるとは思ってなかったのだろう、恐怖に怯え、震えていた。
自分たちはもうダメだ、おしまいだ…そう絶望した時、希望の光が現れた。
レッド「そこまでだ!!悪将軍!!」
それは全身に真っ赤なタイツを纏い、赤いヘルメットをかぶった正義の味方、まもるんジャーレッドであった。
リア充「まもるんジャーだ!!まもるんジャーが助けに来てくれたぞ!!」
リア充2「助けて!!まもるんジャー!!」
正義の味方の登場に捕らえられていたリア充どもは歓喜した。
レッド「この世にあふれる悪をぶどうにみたてるなら!きっと俺はそれらを材料
にしてできた情熱の真っ赤な赤ワイン!まもるんジャーレッド!!」
リア充「出た!!まもるんジャーレッドのよくわからない例え!!」
リア充2「通称、レド例と呼ばれるまもるんジャーレッドがよく多用するよくわからない例えだ!!」
リア充3「キャー!!生でレッドのレド例を聴けるなんてサイコー!!」
ブルー「この俺が来たからにはせいぜいあの世で反省するがいい、悪将軍!まもるんジャーブルー!!」
リア充「出た!!まもるんジャーブルーの普通な登場のセリフ!!」
リア充2「特にヒネリも個性もない登場のセリフだ!!」
リア充3「キャー!ステキー!!」
イエロー「生き別れた愛し、溺愛する親愛なる妹を探すべく、三千里の旅の果て、とうとうお兄ちゃんはヒーローになったぜ、妹よ!!まもるんジャーイエロー!!」
リア充1「出た!まもるんジャーイエローのシスコン発言だ!!」
リア充2「三千里旅してヒーローになる前に普通に妹を探した方がいいだろってツッコミたくなるようなシスコン発言だ!!」
リア充3「キャー!ウレシー!!」
悪将軍「なんで捕らえられたお前らが解説役に回ってんの?」
ピンク「…ピンク」
リア充1「出た!!まもるんジャーピンクの超シンプルなセリフ!!」
リア充2「自分の正体を最も的確に表した一言だ!!」
リア充3「キャー!カッコイイー!!」
グリーン「べ、別にカレーが食べたいだけなんだからね//まもるんジャーグリーン//」
リア充1「出た!まもるんジャーグリーンのとってつけたようなツンデレ発言!!」
リア充2「作者が特にキャラが思いつかなかったがためにとってつけたかのようなツンデレ!!しかもさりげなくイエローの担当であるカレー好きキャラも付け加えてる!!」
リア充3「キャー!ガンバレー!!」
レッド「5人そろって」
レッド、ブルー、イエロー、ピンク、グリーン「政府戦隊!!まもるんジャーファイブ!!!
」
華麗に決めポーズを決めた全身単色タイツに包んだ五人組に悪将軍は声をかけた。
悪将軍「そこまでだ!!まもるんジャーファイブ!!この見てると俺って負け犬だなって思ってしまうぐらいイチャイチャしてるリア充どもがどうなってもいいのか!」
悪将軍はリア充どもを人質にまもるんジャーを脅した。
レッド「く!卑怯だぞ!足が三日間ぐらいほっておいた二日目で洗剤で洗ったイ
タリアンレストランの餃子のドリアンみたいなにおいの悪将軍!!」
悪将軍「ふふ、なにを言いたいかよくわからんが、卑怯とはいい響きじゃないか。そこの余ってるショッカー3人!209番と210番と211番だ!まもるんジャーどもを殴れ!」
突然、自分の番号を呼ばれた櫻井たちは困惑した。
レッド「卑怯だぞ!発酵させた納豆と発酵したヨーグルトを混ぜて発酵させた加
齢臭がする悪将軍!!」
悪将軍「…どれだけ発酵してんだ?ワシ」
悪将軍は再び櫻井たちの方に向き直ると209と番号が書かれたショッカーに向かって再び命令した。
悪将軍「さぁ、209番!そいつらを殴れ!」
ショッカー209「…で、できません!!」
ショッカー209は恐怖に震えながらも力強くそう言った。
悪将軍「…お前今なんて言った」
ショッカー209「自分には、罪のない人を殴ることはできません!!」
悪将軍「そうか、残念だ」
ショッカー209「…すいません」
悪将軍「お前には……死んでもらうしかないな」
ショッカー209「え!」
ショッカー209の腕についていたリストバンドから閃光が走ると、次の瞬間、ショッカー209の周囲3,4mほどの範囲を巻き込む爆発が起きた。
やがて爆発で舞った土煙が晴れると、そこには2,3mほどのえぐれた地面しか残っていなかった。
あまりにも一瞬で、軽々しく行われたその行為を櫻井はしばらく理解できずに、ただただ呆然としていた。
加藤「…櫻井?」
櫻井「………」
加藤?「しっかりしろ!櫻井」
悪将軍「さぁ!210番、211番!そいつらを殴れ!さっきのやつみたい爆発
したくないならな」
加藤「櫻井…行くぞ」
櫻井「………」
加藤の呼びかけも虚しく、櫻井はただただショッカー209がいたはずの場所を見つめるだけだった。
加藤「昔お前の兄がショッカーに殺されて以来、お前がショッカーを嫌ってるのは知ってる!お前がむやみやたらに人を殴るのが嫌いなのも知ってる!でも命にはかえられないだろ!命令に逆らったら俺たちは死んじゃうんだぞ!!」
櫻井「ショッカーとして生きるくらいなら…死んだ方がましだ」
加藤「バカなこと言うな!」
悪将軍「早くしろ!!死にたいのか!!」
加藤「俺は生きるぞ!!生きる理由があるからな!」
櫻井「………」
生きる理由?
そんなもの僕にあるのか?
ショッカーになってでも…悪の手先に成り下がってでも生きる理由が…
そんなものはない。だけど…
加藤「すいません、失礼します」
加藤はまもるんジャーレッドの前に立つと拳を振り上げ、容赦なくレッドを殴った。
レッド「………」
リア充どもを人質に取られたレッドはなんの抵抗もせずにその拳を受け入れた。
悪将軍「いいぞ!その調子だ!、さぁ!早く211も殴れ!!」
櫻井「………」
加藤「櫻井!このままじゃお前は犬死だぞ!殴ったって相手が死ぬわけじゃない!」
櫻井「犬死か…そうだな、それはダメだよな…」
櫻井はそう呟くとゆっくりとレッドの方に歩いて行った。
悪将軍「そうだ、それでいい」
そして櫻井はレッドの前に立ち、拳を振り上げた。
そして、そのまま全力で…悪将軍を殴った。
悪将軍「グハッ…」
突然の櫻井の拳に反応できなかった悪将軍は体勢を崩し、地面に倒れそうになった。
しかし、櫻井はとっさに悪将軍の胸ぐらを手で掴んだ。
悪将軍「貴様…なにをする!!」
櫻井「…死んだ方がましだ…」
櫻井は小さな声でそう呟いた。
悪将軍「…お前今なんて言った」
櫻井「ショッカーになるくらいなら、死んだ方がましだ!!!!」
悪将軍「そうか……ならお望み通り、殺してやろう!!」
櫻井「やってみろよ!!だがここで爆発させたらお前ごとドカンだぜ!!」
櫻井は全力で悪将軍の胸ぐらをつかんで離さなかった。
手を離し、悪将軍と距離をとった瞬間、自分の腕に付いてるリストバンドが爆発することを知っていたからだ。
悪将軍「き、きさまぁ!!」
イエロー「そこまでだ!悪将軍!!」
気がつけばまもるんジャーイエローが悪将軍の真後ろに立っていた。
悪将軍「な!き、貴様いつの間に後ろに…」
イエロー「俺の能力だ、おぼえとけ」
そして間髪入れずに悪将軍に蹴りをかました。
悪将軍は10mほど吹き飛び、そのまま地面に激突した。
櫻井はイエローが蹴る瞬間にとっさに手を離していた。
悪将軍「くそ!ショッカーども!退却だ!!」
櫻井の逆襲、イエローの乱入により完全に体勢を崩した悪将軍は敗北を悟り、ショッカーに退却の命令を出した。
命令と同時にショッカーは辺りに四散し始める。
そこに逃げ出した人質も混じり、辺りは混乱し始めた。
悪将軍「くっくっく、今回は敗北を認めてやるぞ、まもるんジャーよ!!」
悪将軍はそのセリフを残してその場から消えたかのように姿を消した。
ブルー「くそっ、また逃げられた」
ピンク「どうするの?…残党を狩る?」
レッド「いや、ショッカーは追わなくていい!!まずは人質の安全を優先しろ!避難を誘導するんだ!!」
イエロー「了解」
たくさんの人が散りじりになって逃げ惑う中、櫻井はその場に突っ立っていた。
逃げたってしょうがない、悪将軍に逆らった自分はどうせ死ぬんだ。
そう考えていた櫻井に逃げるという選択肢はなかった。
せめてなんでもいいから自分に出来ることをやろう。
そう考えた櫻井はゆっくりとまもるんジャー達の方に歩き出した。
自分に出来ることは…正義に下り、できる限りの情報を残すこと。
しかし、まもるんジャーピンクは櫻井がこちらに近づいてきたのを視認するや否や、こちらに駆け出してきた。
ピンク「まだ残っていたか、ショッカーめ!!」
櫻井「ま、待ってください!!」
櫻井はまもるんジャーピンクをなだめようとするが、敵意を全力でむき出していたピンクは聞く耳を持たなかった。
櫻井の元まで近づくと、そのまま渾身の力で櫻井を蹴った。
超人的力をもつまもるんジャーに蹴られた櫻井はそのまま10m以上後ろに吹き飛び、雑木林の中に突っ込んだ。
櫻井「ははっ…話も聞いてもらえないのか…そりゃあそうだよな…悪党の話なんかに耳を傾けないよな」
櫻井は死を覚悟した。
このままかつて自分が憧れたヒーローに殺されるか、反逆の罰として爆死するか…櫻井はそんなことを考えていた。
生き残る術も無いし、何より…
櫻井「悪に下ってまで生きる意味もない」
櫻井は溢れる涙を拭おうとしたその時、声が聞こえた。
イチマル「そんなことはない」
それは10番の番号の覆面をかぶったショッカーだった。
櫻井「あなたは…イチマルさん?」
イチマル「君は生きなきゃダメだ」
櫻井「…どうして?」
イチマル「君にしか出来ないことがあるから」
そう言うとイチマルは被っていた覆面をとり、櫻井に正体を見せた。
櫻井「あなたは…中山さん!!」
イチマルの正体は櫻井が知っていた人物であった。
中山「君は生きなきゃダメだ。僕の命を無駄にしないためにも…僕の代わりにしっかり生きてくれ」
櫻井「…一体なにを言ってるんですか?」
中山「まず君はその覆面を被って211の番号を捨てて10番として生きてくれ、そうすれば悪将軍に反旗を翻した罪は消える」
櫻井「で、でもそれじゃあ…中山さんが…」
グリーン「ダメじゃない、悪の手下は悪の手下らしく小悪党に徹してもらわないと困るんだからね//」
そのとき、まもるんジャーグリーンの声が聞こえた。
姿は辺りの暗闇のせいで見えないが近くに歩いてきているのが分かった。
グリーン「そうじゃないと計画に支障が出ちゃうんだからね//」
中山「どうやら時間切れのようだ。櫻井君は逃げてくれ」
櫻井「で、でも相手はまもるんジャーですよ?どうやって逃げれば…」
中山「大丈夫、僕に作戦がある」
中山はそう言うと腕につけた爆弾入りのリストバンドを見せつけた。
『イチマル「うん。この覆面をとって正体が他の人にバレてしまったり、自分の正体をバラしたり、またそれに関する情報を話すと爆発する仕組みになってるんだ」』
櫻井は中山がトラックの中で言っていた言葉を思い出した。
櫻井「まさか…中山さん!!」
中山「僕の代わりに生きて止めてくれ、悪将軍を…そして、まもるんジャーを」
中山はそれだけを残すと暗闇に消えていった。
櫻井「中山さん!!」
暗闇に燃える大きな炎とやけに耳に残る爆発音だけを残して…。
レッド「一通り人質の避難は終わったな」
ピンク「…もうこのヘルメットもとっていい?」
レッド「まぁ、もう一般人もいないし、いいぞ」
ピンクはヘルメットをとった。
レッド「ヘルメット嫌いなんだな」
ピンク「うん…私…カブるのは嫌いなの」
夜の闇にピンクのスーツをまとった佐藤の姿がそこにはあった。