Answer
こうして、二人は──
「『──という、ささやかな物語を終えた。』……ふぅ。ねえおにいさん、どうだった? ……おにいさん?」
「へっ?」
「……お話、聞いてた……?」
「お、おう。あたりまえだろ」
「どう思った……?」
どう思うと聞かれても困る。この感情をどう思うかだなんて、俺だってわからない。わからないものを答えることは誰だって出来ないだろう。
ただ幸いにも、曖昧なことをかなり曖昧に褒め称える言葉は、子供でも扱えるものとして日本語に用意されていた。
「す、凄かった」
「良かった……」
照れくさそうに微笑む、幼い従妹。その笑顔に鼓動を弾ませる、幼かった俺。木芽の一挙一動にどきどきした。
「でもさ、お前ってなんで本とか読んでんの? 漫画のほうが良くねえ?」
「……それは、まだ……ごめん、なさい」
本を閉じる木芽。
閉ざされた答えを聞くのは、もう何年か後になる。
その時の俺はといえば、なんで木芽が謝るのかわけがわからず、首を傾げていた。
そして、暫しの逡巡のあと、木芽はこんなことを言い出す。
「おにいさん──わたしって、一体どこにあるんだろうね」
おそらく、木芽の核心に触れた瞬間。
「ある? 居る、じゃなくて?」
しかし阿呆なことに、さっき間違いを指摘されたのを思い出しておそるおそる確認する俺。だが自分を貶める被虐嗜好趣味はないので、子供時代特有の可愛らしさであると一応弁明しておく。
「うん、わたしがある場所。わたし自身はここに居るけど、わたしのこころがある場所」
「わからない、のか?」
「うん。どこにあるか、わからないの……おにいさんは、わかる……?」
迷子の子犬みたいな潤んだ目で、俺の顔を見上げる木芽。
その言葉に、俺は──
いつの間にか走っていた。
こんなに走ったのはいつ以来だろう。白い息を吐き出して、肺に空気を送りまくって、冷たい空気が気管を刺すように刺激しても、足を前に出し続けた。
俺は、いつから走ることをやめていたんだろう。無難に歩くことしかしなくなっていたんだろう。怪我を忘れていたんだろう。
久々に転んだ。積もってきた雪で滑って、顔からそこに突っ込んだ。通行人が笑いながらこっちを見ている。すぐ立ち上がり、また走り出した。
これが痛むことだった。これが恥ずかしいということだった。目的に向かって走るのは、つまりそういうことで。
いつからか忘れてしまっていた感覚を確かめながら、俺は走っている。痛むのも、恥ずかしいのも、問題ではあるが構いやしない。十三年も遅れに遅れまくったんだ。もう待たせるわけにはいかない。
走って、走って。
そして高台にある公園に、従妹はいた。
「…………」
後ろ姿でも一目でわかった。木芽はベンチに座り、街を見下ろしている。
いつもそうだった。あいつはいつも、季節が一番感じられる場所に座っていた。春は桜が見える庭で、夏は蝉の声が一番届く縁側で。
この街で一番雪を感じられる場所は、ここしかない。ここなら街中の雪を見られる。
近づくと、被ったフードの上には雪が乗っていた。ベンチに積もった高さと同じくらい。降り始めから……或いはもっと前から、木芽はここに居たのだ。
後ろから頭の雪をそっと払ってやり、俺はつぶやく。
「悪い……遅れた」
「……おにいさん?」
びっくりしたのか、木芽は目を丸くして振り返り、俺を見上げる。
その手には、一冊の本。
「こんなとこでも本か」
「おにいさんには関係ない」
そりゃそうだ。
別に木芽が風邪を引こうが関係ないし、木芽の意思に俺が介入する権利はない。
それでも。
「んじゃ、関係ある話をするか。さあて、お前は今どこにあるんだ?」
「あ──」
少し意地悪い言い方をしてやると、木芽は小さく声を漏らした。
「ようやく思い出したよ。あの時の約束……『もし、どうしてもお前のある場所が見つからないなら、俺が見つけてやる』ってさ」
そう、約束なら違う。
二人でした約束なら、俺は木芽に干渉する権利がある。ましてや、同意の上で木芽にお願いまでされたんだ。
だが木芽は俯いて、
「ありがとねおにいさん。でも、遅いよ」
「…………」
「あれからもう、十年以上経ってるんだよ。やっぱり、遅いよ……遅すぎ。もう、終わったんだよ」
違う。
本当は始まってなんかいない。俺は遅れたけど、まだ言葉は届けていない。俺も木芽も答えを貰ってはいない。
なら、まだ木芽の場所を見つけられるはずだ。
「遅いとか早いとか、そんなくだらねえこと関係ないわ。俺は俺のやりたいようにやらせてもらうし言わせてもらう。まったく、変に哲学的な表現すっから、理解すんのに十年もたっちまった」
長い時間がかかって、かなり遠回りもしてしまったが、無駄だとは思わない。いや、無駄になるかどうかは俺次第だ。
俺に引く気がないことを察したのか、木芽は呆れるように肩を落とす。
「強引だね、おにいさんは。昔のほうが謙虚だったんじゃない?」
「遠慮し過ぎてただけだ。気づいたんだよ、もっとはっきり言わなきゃなんも変わらないし変えらんないってさ」
「くっさいなあ、格好いいと思ってる?」
「うるせ、事実だろ」
「まあ、そうだね……」
そう苦笑して、木芽は目線を街のほうへと戻した。しんしんと降り積もる雪。木芽から聞こえる息づかい。
ほとんどの色と音を覆い隠す雪のなかで、今は二人の存在だけがこの場所の全てだった。
「……あのさおにいさん。まずはあたしの話、聞いてもらってもいいかな」
「ああ」
「即答だね。……うん、ありがと」
ぽつりぽつりと、木芽は話し始めた。
「おにいさんと最後に会ったのは十年前だったよね。あのあと、高校に入る頃にはさ。気づいちゃったんだよね……変わらないと生きていけない。いや、生きてはいけるけど、気楽に生きてくのは無理だって。あたし、あんな性格だったから。おにいさん、知ってるでしょ? あたし、小学生の頃いじめられてたの」
木芽の言葉に、俺は「ああ」と正直に言った。「母さんから聞いた」と付け足すと、だろうねえ、と木芽は呟く。
「ま、中学生になると大人しくはなったけどさ。ただ、やっぱり肌で感じるんだよ、自分が周りから疎まれてることっていうのは。まあでも、あたしを守ってくれる人はいたけどね」
結婚相手か、と俺。
「うん、そういうこと。それから色々あって、『わたし』はあたしになっていって、今に至る、ってね。もう昔のあたしとは違うってこと。自分が自分なのかって、そんなことでうじうじ悩んでた馬鹿で可愛い十代のわたしはもういないわけ。今、あたしは幸せだし、結婚するし、あたしはあたしでしかないって分かってる。おにいさんの約束はもう意味がないんだよ。分かった?」
口調荒く、諭すように木芽は俺に言ってきた。確かにそうかもしれない。昨夜の木芽は幸せそうに見えたし、今の木芽は凄く快活な性格をしている。
もしかしたら俺のやってることはお節介で、余計なお世話で、無駄なことかもしれない。
だから、俺は。
「嘘だな」
吐き捨てるように告げた木芽に、笑顔で言ってやった。
「柏木芽。お前はそんな当たり前の結論で満足するやつじゃないだろ。あんなひねくれた女が、自分は自分でしかないとか結婚が幸せだとか、そんな当然のことで妥協するわけないだろうが。それに、だったら──なんで俺のとこに来たんだよ」
「それは……おにいさんに結婚報告に……」
「このタイミングでか? 相手の両親に会いに行く日だったんだろ」
「…………」
「矛盾してるんだよ、木芽。中途半端なんだ。こんなタイミングで俺の家に来て、でも俺との約束はもう意味がないって言う。これっておかしいだろ。本当は──」
一息。
冷たい空気が、喉にしみる。
これから言うことは俺の想像でしかない。事実無根で、荒唐無稽な、ただの想像。それでも、この想像は俺が思う木芽の姿だ。同一までは無理でも、近似までは行けるはずだ。似ているのなら、木芽にはきっと届くだろう。
「──今のお前は、まるごと嘘だらけなんじゃないか?」
「…………」
「ずっと、変だとは思ってた。お前はそんな明るくなくて、もっと暗くてネガティブだった。別にそれが悪いって言ってるわけじゃない。でも、それがお前で『柏木芽』だったんだ。確かにお前は幸せそうに見えたよ。明るくなったように見えたよ。でも、見えるだけだ。本当はどうなんだ? お前はあの時と変わらなくて、 自分の場所を知らずに怯えてるままなんじゃないか?」
「おにいさん、ちが──」
木芽が慌てて立ち上がる。
俺はそれを遮り言葉を続けた。
「最後まで言わせろ。そうだよ、その通りだ。お前の考えてることとは違うかも知れねえよ。これは俺が勝手に想像してるだけだし、余計なお節介ならそれでいい。でも、もし嘘で塗り固めたお前が、本当のお前のように振る舞っていて無理してるのなら、それは見過ごせないんだよ」
言い切って、両手を膝に当てて息を吸う。
言っている間、言葉を止めることはなかった。木芽が話す隙を与えてしまったら、誤魔化されてしまう気がしたからだ。肩を上下させながら木芽をちらりと見たが、俯いていて表情は分からなかった。
ずっと続くかとも思った逡巡ののち、木芽は「ねえ」と呟いた。
「……それは。約束、だから……?」
「ああ」
頷く。木芽が、安心出来るように。
今、言えることは全て言った。あとは木芽次第だ。俺の言葉が木芽に届いて、木芽が答えをくれたなら、俺もようやく自分の答えを手渡せる。
木芽はしばらく黙ったあと、「そっか」と呟いて顔を上げた。
「約束……だもんね。仕方ないか。いいよ、おにいさん。話してあげる。あたしが、ずっと無視してた、ずっと叫んでた『わたし』に気づいちゃった話を──」
微笑んだ木芽は、ゆっくりと唇を動かしていく。
──最初はね、あたしは変わったと思ってた。中学を卒業して、高校に入って。友達も出来て、明るくなって、上手く生きれるようになったと思ってたんだ。
大学に行って、女の子の真似事もした。合コンとか参加したり、サークルに入って飲みに行ったり、少なくとも周りから見ればあたしは普通の子だったろうね。いや、むしろあたしがそう思い込んでた。
生まれて初めて、告白もされたよ。そ、例のカレ。まあいいかなって思って、頷いた。元々好意だって持ってたし、素直に嬉しかったから。交際は順調に進んでたよ。あたしは浮気になんて興味ないし、彼もあたし以外に興味なかったんだろうね。
それで大学を出て少ししたくらいに、プロポーズされたの。その時、あたしは幸せだった。恋人が出来たことがじゃない。婚約をしたことでもない。
あたしが、普通の女の子みたいに人生とか、恋愛とか。そういう抽象的なものに疑問を持たないで生きてるフリを出来てたことが、たまらなく幸せだったの。幸せだと勘違い出来ていたことが幸せだったの。
気づいちゃったのは、つい最近。おにいさんには、今朝も話したよね。彼ね、すっごく優しいの。あたしがやろうとしてたこと、全部先読みしてやってくれてて、あたしがやるのは最低限のことで済むようにしてくれてた。あたしは殆ど何もしなくていい。
運転も掃除も、仕事や料理から家事全般まで。
友達も家族も気をやいてくれて、あたしはたくさんの人の優しさに囲まれて包囲されて。
おにいさん、分かる?
彼の、友達の、家族のむせかえるような優しさの中に包まれて、そこに『わたしの入り込む隙はなかった』んだよ。
嘘だらけのあたしを、嘘でしかないあたしを、みんなは本物だって思い込んで、優しくして、優しさで締めつけて……『わたし』は『あたし』なんかじゃないのに、みんなは優しくしてくるの。
不思議だよね、どうしてみんな偽物の似顔絵にばかり話しかけて、実際に隣に居る私には声をかけてくれないんだろう。
まるで、そこにいないみたいに。
ねえ、どう思う、おにいさん──
独白を終えた木芽は、寂しげな瞳で俺を見る。
「…………木芽」
俺が声を絞り出したとき、木芽は泣いていた。微笑みながら泣いていた。
俺はそれを見ている。
頬から滑り落ちた涙が、ほんの少し雪を溶かして、木芽は口を開く。
「どう、おにいさん? 変な話でしょ。でも気づいたら止められなかった、抑えきれなくなった、これが『わたしのほんとう』。もう、あたしは分からなくなっちゃった……あたしが、わたしがどこにあるのか、本当に…………」
俯く木芽を、だけど俺は、まだ触れることは出来なかった。約束を果たさないまま触れたら、木芽はまっさらに、雪のように白く、溶けてしまいそうな気がしたから。
だから。
今こそ、伝えなくちゃならない。
「……木芽。俺からも約束の答え、言わせてもらってもいいか……?」
「あ…………」
俺の言葉に、見上げた木芽の目は潤んでいて、縋るような瞳で、希望を見るように俺を捉えていた。
正直なところ、つらい。俺は木芽の希望を折らなければならない。木芽が望んでいる答えは手渡せない。見つけていないものは渡すことは出来ないから。
だから、俺は──
「お前が、ある場所。……悪いけど、俺には見つけられなかった」
「え……」
木芽の声が震えている。
俺が探そうとしていた、木芽が欲しがっていた答えは見つからなかった。木芽の『ほんとう』を見つけるには、俺はこの十年の木芽の姿を知らなさすぎた。
それを伝えてしまうのはとてもつらいが、ここで誤魔化してしまっては何にもならない。
「俺は木芽の場所を見つけられなかった。木芽があるのはどこか、今もまだ分かってない。そもそも、お前のことはお前にしか分からない。だから、俺がお前のある場所を見つけるなんて無理なんだ」
だって、そうだろう? 誰だって、相手のことなんて分からない。相手がどう思ってるか、誰も想像することしか出来ない。いくら話してもそれが本心かは知りようがないし、精々が『多分、そうだろう』という予想でしかない。
木芽の彼氏が、友達が、家族が。木芽の『ほんとう』を知らなかったように。
「…………おにいさん」
木芽が泣いている。
でも、
「だけどな、木芽」
「え…………?」
「お前のある場所を、一緒に探すことなら出来る。一つ一つ探して、何か見つける度にお前に見せて、これはどうだ、って訊くことは出来る。一緒に探そう、木芽。お前が自分のある場所を見つけられるまで。それじゃあ、駄目か?」
そう。分からなくても、それくらいなら出来る。
完全には無理でも、分かろうとして、想像することなら出来る。
だから精一杯の笑顔で。
俺は木芽に手を差し出す。
「ずっと、お前のことが好きだった。たとえお前が彼氏と結婚しても、俺はお前の場所を探し続けるよ」
それが俺と木芽の約束。
共に歩めなくとも、共に探すことはきっと出来るはず。結局、俺はずっと木芽に恋してるんだ。
約束を交わしたあの日から、ずっと好きだった。叶わなくて遅くて、及ばなかった想い。
伝えるくらいは許してくれるだろう。
「おにい、さん……」
「……悪い。今さらで、こんなタイミングだけど、伝えたかった」
「そんなこと……ない。嬉しかったよ、わたし……」
伸ばした手を木芽は握り返してくる。
冬の空気ですっかり冷えた手は、それでも俺を温めてくれた。及ばなくても、この温もりだけで十分なくらいに。
「なあ木芽。それと、もう一つ」
「え? ……なに?」
きょとんとする木芽に、俺は訊く。
「今、少しはお前は見つかったか?」
「あ…………」
次の瞬間、木芽が見せたものを、俺はずっと忘れることは出来ないだろう。大事なものは残して、悪いものは全部溶かしてしまうような。そんな、暖かい表情。
俺が、初めて見る木芽。
「……うん。見つかったよ。わたしが、一つ」
「そりゃあ、良かった」
笑顔に、照れ臭くて目を逸らす。
恋も約束も終わってないが、気持ちの整理はついた。
「──さて、帰るぞ。お前、挨拶ドタキャンしたんだろ。俺も一緒に謝ってやるから」
木芽に背を向けて歩き始める。
と、背後で間抜けな声があがった。
「……あ」
「忘れてたのか」
「うん」
「まったく、相変わらず迷惑な性格してるな、お前」
「失礼な。ねえ、おにいさん」
「なんだ──は?」
振り向いた瞬間、体が揺れた。木芽に抱き締められていた。
わけが、わからなかった。
「…………木芽?」
「ありがとう、おにいさん……正直言うと、半信半疑だったの」
それは突然のことで。なにが、と訊く声は出なかった。どうしていいか分からず、両手が所在なげに揺れて、体には木芽の体温が伝わってくる。
不意に、理解した。今から木芽が話すのは、もう一つの「ほんとう」だと。
「昔、話したよね。わたしはアウトプットが出来ない。全部、本の引用だって」
俺はああ、と言ったつもりが、声にはならなかった。それほど小さく漏れた音でも、この距離では伝わってしまって、うん、と言う木芽の息が首筋を掠めていく。
「『あたし』もその一つだった。ある本の、ある女の子の性格。元々が全部を本の引用で話してたわたしだったから、簡単に真似出来たの」
「木芽、お前……」
いつの間にか。
木芽の口調が昔に戻っていた。
春の庭先で、本を読んでいた少女に。夏の縁側で本を読んでいた少女の口調に。
それは紛れもなく柏木芽で、柏木芽の「わたし」だった。
「趣味も嗜好も行動も、それは全部物真似だった。最初はその場しのぎの演技だったはずが、いつの間にかわたしはあたしになってた。あたしが本当だと勘違いしちゃってたの。幸せも好きなことも、考えてることだって全部、他人のものなのに。なのに、なのにね……『おにいさん』だけは、ずっと変わらなかった。変わって欲しくなくて、変わってなかった。あたしに塗り潰された世界の中で、おにいさんのことだけにはわたしがずっと残ってた」
「木芽……」
やめてくれ、という心の声は伝わらなかった。これだけ近くて、かすかな声も届くのに、心で思ったことは届かなかった。
本当にやめて欲しい。
せっかく決心をしたのに、せっかく気持ちの整理をしたのに、木芽の独白は続く。
俺の声は出なくて、俺の努力は崩れていく。
我慢出来なくなって、俺は両手で木芽を抱き締めた。
「ごめんね、おにいさん。わたしずっと誤魔化してた。ずっと自分を騙してた。わたしはインプットだけじゃない。わたし自身の気持ちはずっとあった、わたし、わたし本当は──」
木芽が、腕の中で顔を上げる。
視線が交わって、想いが交錯して、思考が倒錯する。駄目だった。止まらなくなって揺れる気持ちが、居場所を求めて収束する。触れるほどに木芽の顔が近づいて、吐息が頬を撫でる。もう、戻れない。
そして──
「木、芽…………っ!」
──十年越しの想いが、重なった。