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アイシャ  作者: 萌葱
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「それで、今日の頭はそんな風に結われているのですね」

 居心地の良い暗い部屋で、ぐったりとソファーに凭れていると、スラリとした立ち姿、私のうねった髪とは違うストレートの黒髪、優しげな少したれた目に、優美な線を描く頬のライン、男であることは知ってはいるが、女の私よりも美女に見えるクロエが、クラナス茶を入れたカップを私に渡しつつ微笑んでいる。


 クロエも私と同じ頃このスクォーラに入学した闇の術士。

 光が魔を払うものなら、闇は魔を緩和及び安定させて広がらないように保つ。

 そして、闇は人を心身ともに癒す力があり、その事から合わせて医術を学ぶ術士も多く、クロエも闇の術と共に医術も身につけている


 そして昔から 剣術士だというのに光が苦手で闇を好む私は、修行後用事がない時は殆どここに居る。

 そう、シラーが染めた金髪が黒くなってしまうほどに

「しかし、何処で覚えてくるんだこんな技、まぁ、あいつに髪を触らせろと言われて断る女も少ないだろうから、練習には事欠かなそうだが…」

 貰ったお茶をの香りを楽しみつつそう呟く

「シラーはそういうタイプではないと思いますよ、流石にちょっと気の毒では?」

「練習しなくてできるのか?こんな複雑な…」

「問題はそこではないと思いますけどね…そういえば、どうでした?」

 いたずらっぽくクロエに微笑まれて溜息をつく

「ばれたよ」

「やはり」


 実は先ほどシラーに、指摘された黒髪の一部は元は赤かった。

 ちょっと大掛かりな裏山の除草を手伝うのに、火の気を取り入れて剣術でなぎ払ったら、庭師にはたいそう喜ばれたけれど、髪の一部をかなり赤くしなくてはならなかったから。


 私が12歳まで住んでいた村には、一線を引き引退したのでここに住みたいとやってきた剣術士が居て、私はここに来るまでは彼に術について教わっていた。

 彼は私に、剣術士なんてものは幾らでも汎用性があるもの、を自分たちでその可能性を狭めていると嘆きつつ、私には積極的に他の能力を取り入れ、利用する方法を教えてくれた。


 修行を終えた術士はそのままスクォーラ所属になるものもいるし、フリーで全国各地に散らばってるものも居て、小さい村にもかかわらず、師匠を訪ねて村に来る術士は、各種取り揃えて結構な人数が居た。

 私は師匠を慕って術士が来るたびに、様々な色に髪の色を変え、剣と組み合わせて利用することを練習した。

 広範囲の除草に剣に炎の力を込めて、なぎ払った途端火の粉が飛ばない程度に散らばった葉先を燃やすやり方、金気を嫌う野菜の収穫の時に剣に水の気でコーテジングして収穫する方法、疳が強く眠らない子供に闇の気を纏った剣で布地を裁断し、それで作ったぬいぐるみなどを持たせると、しばらくは落ち着いた眠りが訪れる…。

 色々なものを試すうちに、媒体は剣でなくても力を込めれば多少はその性質を持たせることが出来るということも、この時に学んだ。


 だから、12歳になりスクォーラに入学した時は驚いた。

 殆どの剣術士は光以外の属性を纏うことはなく、媒介させるのは剣のみ、ここでの師匠であるマルティン師など数人の村の師匠を知っている人は、彼の名前を出すとあの人らしいと笑ってくれて、私が剣術士らしくない力の使い方をしていることも黙認してくれているが、聖剣術士としてはあまり公にしないほうが良いと言われている。

 けれど、ずっとこのような力の使い方をしていた為、こっそりとお世話になっている寮の人間などには、スクォーラの外へは広まらぬよう厳重に口止めをお願いした上で、力を使わせてもらっている。

 光以外の他の属性の使い方を忘れてしまうのはどうしても嫌だったから……


 一般的な剣術士は聖剣術士と呼ばれるだけ有って、光以外の気を取り入れられることが広まることを好まない。

 ましてや、私のような生活の知恵的に能力を使うと価値が下がると思っているフシがあり、全くくだらないプライドだとは思う。

 けれど、元々剣術士としては数少ない女で、しかも、ここでは少数派となる平民出身である私をクロエやマルティン師が心配してくれているのも判ってはいるので、今までは違う能力を使い、髪の色が変わってしまった時はシラーに頼んでいたのだけれど…。

 ふと、私の髪に黒い色が交じるのは皆、見慣れている(一色であれば光が抜けた元の色が其れであると通常は思う)ことを考えてクロエに頼んでみた。

 光で赤を上書きするより、闇の黒で上書きする方が力は少なくて済むんじゃないかと思ったから。

 なにより、光で上書きする場合は火の気を殆ど逃してしまわなければいけないが、この場合は残ってても分からない、色の問題だけじゃないでしょうと呆れるクロエに、どうせ気の入り雑じっているこの場所で、個人の気をそんな細かく判るのは居ない、そう笑ったのだけれど。


 流石優秀な光の術士であるシラーに、一対一で髪を触られたら瞬殺で、ただでさえ妙なまだらの頭を、更に斑にするなとため息をつかれた。

 これならいちいち手間をかけずに済むし、シラーも余計な力使わなくていいんじゃないか、そう言うと

「俺の力を舐めるな」

 そう、皮肉げに笑われて終わりだった。

そんな経緯を話すと

「でしょうね」

くすくすと笑われてしまった。


 まずは、登場人物紹介と行ったところです。

 説明っぽい部分が多くて申し訳ないです。

 


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