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「ちょっ…、痛いシラー!」
「お前が雑な乾かし方するからだろ、其れに一回限りと言った」
洗いっぱなしの乾かしっぱなしの髪をブツブツ言いながら、けれど、器用に繊細な手つきで解しながら黒かった髪が徐々に金色になっていくのを眺めつつ
「そう何度も色を変えるのも大変だよな」
呟いたら、何の事かと聞かれた
「クロエがまた行きたいって言うから、そのうちまた色を変えないといけないが、いちいち放出と染め直し繰り返すのもな…」
そう答えた途端今まで繊細に解されて居た髪が急に引っ張られて、思わず声を上げると、そんな風に不機嫌な口調で返された
クライスの屋敷を出て、変装を解く為にクローネの店で服を返して、髪のコテと化粧を解くのに浴室を借りた。
そして部屋で一息ついていると、髪に魔力を入れると言いながらシラーが入って来た。
お互い疲れて居るし明日部屋に向かうと言うも、お前は座っていれば良いと言って私の後ろに立ち、髪を触られる感触に諦めて任せる事にした
「そんな事言ってないだろ?私だと判らなければ問題は無いはずだ、まぁ、お前が関わらない外出にクローネは使えないから、腕の良いのを探す必要は有るが…」
「あいつの正式なパートナーになる気か?」
「そういうの私にはよく判らない、ただ、クロエが行きたいというのならシラーの迷惑にならない範囲で協力はしたいと思っている、お前だって、私にそれを頼むのは他に頼むと面倒だからというのと、挨拶の間放っておける人間が良かったからだろ? …って、だから痛いっ」
話ながら、又私の髪を梳く手つきが乱暴になるのに悲鳴を上げる。
こんな仕事をしていれば怪我などはしょっちゅうだし、痛みに弱いほうだとは思わない
けれど、こんなふうに髪を引っ張られる痛みは特殊で、ぴりぴりとしたその痛みは妙な鋭さがあって耐え難い。
すると、シラーは一度手を放し何やら大きくため息をつくと、今度はまたゆっくり私の髪を手に取った
「そういえば、私物の方はどうだった?何か収穫はあったのか?」
「あぁ…だが、お前には話せないことになった」
「なんだ、それは?」
驚いて、背後のシラーを見上げると、前を向いていろと言いながら、その後の話をしてくれた。
私物の洋服を抱きしめて、しばし無言のまま固まるルーニアの様子にシラー達はそれはカイの物に間違いがないと確信したという。
その後出てきた幾つかのノートと書籍はカイの日記と私的な研究のデータで、それを知るとルーニアが私の耳に入れないで欲しいと言ったという。
カイの気配を感じる以上いつか出会う彼に顔向けができなくなると、けれどカイと出会うために必要なら、それを読むことは私は黙認するといってルーニアは、珍しくスルリを私の意識の奥に下がったらしく
「だから、お前にも言うことはできない」
困ったようにそう言うシラーがおかしくてくすりと笑う
「なんだ?」
「いや…、ありがとう」
最初の話し合いの時に問答無用でルーニアを消そうとしたシラーは、結局私の望みを聞いて彼女を消すのは諦めて、手間のかかる方法を選んだ私に協力した上に彼女の話を願いを聞いてくれていて…。
そう思うと、自然と感謝の言葉が零れた
「…あの時、俺の短慮な行動をお前が止めていなければ、事は世界の根幹に関わる所だったかもしれない、もうあんな乱暴なことはしない、悪かったな」
そう言いながら丁寧に髪の毛を金色に染めていき
「クロエと出かけるならクローネを使え、髪の染めなおしくらいはいくらでも付き合ってやる、だから…俺のパートナーもこのまま続けてくれ」
「何を言ってるんだ? そのうち本当にパートナーにしたい人間が現れる迄、私でいいのなら付き合うつもりではいるぞ?」
「なら…それでいい、俺はお前が俺のパートナーであるなら……終わったぞ」
最後の一房を金色に染め直すと
「疲れているのに悪かったな、クロエが馬車で待っている、俺は本家に寄って帰るから、お前は早く帰ってゆっくり休むんだな」
そう言って部屋を出ていった。




