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「クローネ、先日はスカーフをすまない…」
あの夜以来の、クローネの店で迎えに出たクローネに頭を下げる
「やだぁ、あれはアイシャちゃんのものよ? それに、あの後大変だったって?」
「シラーに聞いたのか?」
「うふふ、アイシャちゃんが囲まれて困ってたって、怒られちゃったわ、本当に困ったのは誰なのかしらねぇ? でも、庭の不審者追いかけたって? それにはやっぱりちょっと向かない格好だったわ、…アイシャちゃんは剣術士ですもの、今度はもうちょっと動きやすさも考えるわね」
そう言ってくれたのが嬉しくて
「迷惑をかけてすまない…」
そういうと、腕をふるえるのは楽しいからいいのと笑ってくれた…
「で? 今日は昼間のパーティなのね?」
カイの遺品…と呼ぶと私の中の彼女が怒りそうなので私物ということにしておこうか…
を、見に行くことにしたのはいいけれど、今回の騒動の内容を考えても余り大ぴらにするのは良くないと思われた。
幸いクライスの家は商家でありパーティーも頻繁に行われるということで、其れを理由に屋敷へと入り、その後問題の場所へ案内してもらうという事になった。
邸内に入ってしまえはその人の多さに、何処にいようと問題はないと言われて少し恐れをなしたけれど、それよりも問題は…。
「女性に宣伝するパーティーだから、アイシャは良いとして、シラーやクロエがパートナー無しだと餌食になるね」
にっこり笑うクライス、一人は私がパートナーで良いとしても、もう一人同伴女性が必要になるわけで…
「誰かいないのか?」
二人にそう言うと
「俺はお前が居るから良いだろう」
と、シラー
「私は…流石に医務班という訳には行きませんね、その場を離れるには…」
クロエはそう言って少し困った顔をしている
「誰か紹介しようか?」
クライスがそう言うけれど、クロエが怖いほどの笑顔で遠慮しますね、などと言っていて…
「クライス、其のパーティー女性物の商品の宣伝も兼ねていると言っていたな? どれくらいの年齢層だ?」
「うーん…若い子が多いね、だから余計君等がフリーだと面倒そうだと思うんだ」
「シラー、マリエルは? 彼女ならマナーも完璧だし、女性もの商品なら見ていて退屈はしないはずだ…、流石にクロエとは殆ど面識無いだろうから、シラーがエスコートをすれば、私はクロエとパートナーになれば問題はない、どうだ?」
「ふざけるな」
「良いですね」
全く逆の答えが同時に帰って来て、少し困る
「だいたい、パートナーなんてコロコロ変えるものじゃないだろ? 俺の相手はお前だと認識されている、それがクロエと参加なんてことになったら面倒になるに決まっているだろう?」
「それは、ちょっとどうでしょう? 彼女は貴方と付き合っているわけではないですし?
今後他の誰かとパートナー組んではいけないと決めてあるわけではありません、一度くらいアイシャのパートナーを譲って下さってももいいのでは?」
怒るシラーに、にこにこと、けれど引かないクロエ
「…私だと分からなければ、良いんじゃないか? シラーとマリエルは親戚ならば一緖にいても不思議はないだろうし、この髪を黒にして化粧すれば…いつもクローネに化粧で変えやすい顔だと言われてるしな」
「家の屋敷に来て頂ければ我が家で準備をしますよ」
「………クローネにやらせろ……それが最低条件だ、あと絶対アイシャとは判らないようにさせろよ」
何故かクロエを強く睨んで、そう言うシラーにクロエはため息を付いて
「仕方ないですね、アイシャを着飾る楽しみは、譲りましょう」
「決まったな、じゃぁ、私はちょっと行ってくる」
「ちょ、この空気に置いていくわけ? どこ行くのよ?」
「篭められた魔力放出しながら染めることもできるけど、光勿体無いし、放出してくる
最近、魔物がよく出るって言うし、一回森の警備にでも行けば…」
「付き合う!」
何故か必死な様子で、クライスが部屋を飛び出したので、そのまま二人で森を見まわった、あのカイとマリエルを助けて以来あれほどの魔物は出ていないけれど、魔変した爬虫類などは見つかるようになっていて…
目的を考えれば丁度良かったけれど、世界の綻びは心配になる。
クライスも同じ事を思ったのか
「大事にはなってしまうけれど…あの研究が本当だったら、魔物も減るんだよね…」
そう呟いていた