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Misson:8 エースの最後の部活

天気は快晴。まさに陸上日和な朝。


司達は競技場でアップをしていた。

今回全国大会に出場するのは、高跳び、三段跳び、中距離、短距離に個人。団体でリレーだった。


高跳びには啓介が、短距離には司が出場する。


未佳は、司の足首にテーピングを巻いていた。

三日前に練習ではない所で足を痛めてきた司は、もちろんコーチにこっぴどく叱られた。


司が、少しびっこをひいて練習に来た時も、テーピングを巻いたのは未佳だった。


本人はちょっとこけただけだと言っていたが、マネージャーの未佳にはそうは見えなかった。


仕事がら足首を捻った部員逹を沢山を見ていたから、司の足が他とは違うように見えたのだ。


折れているわけではないのだが、腫れが酷かった。

とても一日前に捻ったとは思えないくらい赤く腫れ上がっていたのだ。紫に変わり始めていたそこは、ヒビぐらい入っていそうだった。


みかは、司に病院で見てもらったほうがいいと言ったのだか、本人はまったく平気そうな顔で“大丈夫大丈夫”と笑っていたので、それ以上は何も言えなかった。


その後の練習でも危惧されていたタイムダウンはなかったし、次の日には足首の腫れはほとんど分からないくらいになっていた。


それでも未佳は気になっていた。あの足をどこでどうやって痛めたのかを…。


先週の事もそうだ。


〔大量出血による貧血〕


いったいどうしてそんな怪我をするのか皆目検討もつかなかった。


あのあと、輸血した司は、全くいままで通りで、自分を含めて部員達は皆困惑していた。


怪我の理由を聞いてもうまくはぐらかされてしまい、結局原因はわからなかった。






みかにしっかりとテーピングを施された司は、優秀なマネージャーに礼を言ってストレッチを始めた。


最初に足首を見せたときに、みかには何をしたのかと問い詰められた。

転んだくらいじゃこうはならないと。


良く見ているマネージャーだと思う。病院に行けと、もしかしたらヒビが入っているかもしれないと。


司は内心で舌を巻いた。全くその通りだったのだ。


訓練中受け身に失敗して、おもいっきり足がへんな音をたてた時はやばいと本気で思った。

治療所で鷹幸に、骨にヒビが入っていると聞かされ、後のことを考えて血の気がひいた。


固定しようとした鷹幸に断っていつものように言い争いを繰り広げたあと、どさくさに紛れてそのまま部屋に戻った。

明日には腫れが引いてくれればいいと思っていたが、そうはいかず、おまけに昨日より痛みが酷いときた。


ヒビなんて日常茶飯事だからあまり気にしていなかったが甘かったようだ。

平静を装って歩く事も出来ず、部活開始早々コーチの雷が落ちた。


みかのテーピングのお陰で走れるようにはなったが、いままでの自分の速さで走るのは正直辛かった。

本気で走らなければならなかったし、少し角度を間違えれば酷い激痛が襲う。


それでも、回復力の高い司は三日後の大会には、ほとんど治していた。


「足、平気なのか?」


足首をグリグリ回している司に話掛けたのは、啓介だった。


「おう。もう絶好調だぜ!!」


「そのわりには、痛めてない方の足ばっか回してんな。」


「うっせーな。椎野が無理矢理テーピングして回せねーんだよ。」


「あーあいつ、心配症だかんなあ。」


「おっ、時間だ。彼氏さん、ノロケなら、終ったらいくらでも聞いてやる。」


啓介の呟きに、司はニヤニヤ笑いながら言って歩き出した。

後ろから赤くなった啓介の『彼女じゃねー!』と言う声が聞こえてきたが、司は軽く無視してスタートラインに向かった。


結果から言うともちろん司の圧勝だった。


三日前に足を痛めたとは思えないくらいの軽やかな走りで予選、決勝とぶっちぎりだった。

他の出場部員もみな、ベスト8は確実で、啓介は三位入賞だった。



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