Misson:16 危険建造物
「さて・・と。俺も行くかな・・・。」
司は最後にお茶をすすって食堂を後にした。
今日は、午後から任務でアメリカに行かなければならない。
司はそれまでに済ませたいことがあった。
用のある第8セクターに向かうため、表に停めて置いたバイクに跨がる。
ここからだと大分距離が有るから、移動手段として欠かせない。
天李は昼間だと目立つため使うことは出来ない。それに朝から姿が見えないので街にでも行っているのだろう。
(いいねぇ。青春。)
そんなことを考えながら、バイクを走らせて行く。
途中、走っている啓介達を追い越したら、『乗せろー』と叫ばれた。
まぁ四人も乗せるのは到底無理な話だから、手を上げてスルーした。
10分も走らせると目的の場所が見えてきた。
森に半分隠れる形で建っているその建造物は、コンクリートでできた三階建ての頑丈そうなものだ。
広すぎるのも面倒だと思いながら、司はひっそりと佇む建物の前でバイクを止めた。
第8セクターの外れにあるこの建物は、見た目なんの変哲もない普通なものだ。
しかし、以前は金網に高圧電線が張られた危険地帯だったらしい。
柚夏梨がこの基地に配属された時、大幅に改築されたと、ベテラン達が言っていた。
司はこじんまりとした入口を潜り抜け、正面のエレベーターに乗った。
B1B2と二つしかないボタンの一方を押す。
地下と言ってもその辺のデパ地下とは訳が違う。
100mほど地下に降りなければならず、エレベーターも高速で降っていく。
ピコンと何とも間抜けな到着の合図で扉が開いた。
来る前に伝えて置いたからだろう、白衣に眼鏡の三十代くらいの男が司を待っていた。
「お待ちしていました。」
と丁寧に頭を下げる男に、司は毎回言っていることをいつものように告げた。
「俺に敬語はいらない。普通に話してくれ。」
「しかし・・・。」
「そういうの苦手なんだ。」
男は『善処します。』と言いながら、司を案内した。
前を歩く男の腰の低い様子に、今回も折れるのは自分かと小さく嘆息した。
地下二階のこのフロアは異常なくらい広かった。
白衣の人物達がせわしなく歩き回っており、巨大な機器やらコンピュータがところ狭しと並んでいる。
いつ見てもこのSF映画の秘密基地的な雰囲気は変わらないと、司は辺りを見回しながら思った。
皆忙しいのだろう、司には目もくれずキリキリ働いている。
彼らを通り過ぎ、奥に頑丈な扉の前まで案内すると眼鏡の男は去って行った。
司が自分のIDをドアの脇に付けられた機械に通すと、シュンッという音と共に扉が開いた。