Misson:14 覚悟
「・・・・なぁ。」
講義が終わり、部屋に戻った啓介達は、深刻そうな沈黙の中にいた。
教官が最後に言った一言は彼らに重くのし掛かった。
(戦場に行くかもしれない。)
その事実は、夏休みだけ兵士として訓練をして、また新学期が始まる時は勉学に励むことになると確信していた未来が、もしかしたら変わるかもしれない。
それはまだ成人していない彼らには重すぎた。
━家族━友達━恋人━
考えれば考えるほど自分一人で決断できるくらい優しいことではなかった。
自分のベッドに腰を下ろし、今後を考えた啓介は、深い溜め息を吐いた。
両親には反対された。しかし自分の夢を叶えるためなんとか説得して今ここにいる。
だが、もしかしたら何年も先になると思っていた本物の兵士としての仕事がすぐやって来るかもしれない。
もし招集されたらその時考えれば良いと思っていたが、現状を聞いてその時が迫って来ていると気付いた。
啓介の問い掛けに三人は顔を上げた。
加納達も複雑な表情をしている。
「俺達・・・戦争に行くのか・・・?」
沈黙に響いた啓介の言葉に、やはり彼らは無言だった。
同じことを考えていたんだろう。
これから自分が進む道について。
「僕は!覚悟しています。」
自分に気合いを入れるためか、声を張り上げて滝沢は宣言した。
啓介達は顔を上げ、滝沢に注目した。
自分のベッドで体育座りをしていた滝沢は、決意した明るい表情で皆に聞こえるように、また自分に言い聞かせるように言った。
「兵士になるって決めた時から、戦場に出る覚悟は出来ていました。ちょっと思ってたより時期が早くなるだけです。」
「・・・・そうだな。今、どうこう考えても仕方ないか・・・。」
寺内も覚悟したように頷いた。
後輩の逞しい様子に、いつまでもうじうじ考えていられないと思ったのだろう。
加納も啓介も同意するように頷いた。
「まだ決まったわけじゃないしな。当面は訓練に集中しよう。」
「さて、明日もぎっちりスケジュールは詰まってる。そろそろ寝るか。」
加納の一言で全員寝る支度を始めた。
皆が寝静まったころ、啓介は未佳とメールをしていた。
今日の講義は全員一緒に行なったが明日からは男女分かれる。
これからは簡単に会えなくなるからだ。
さっきの話を聞いて未佳がどう思ったか知りたかった。
ただでさえ心配症の未佳のことだ。辞めるよう説得して来るかもしれない。
『啓介のしたいように。私は啓介に着いていくから。』
彼女も悩んだのだろう。
いつもは早い返信が今日は二時間も掛かったから。
幼なじみの啓介には気持ちが手に取るように分かる。
小さい時から危ない事を極端に嫌う彼女だから、止められるかもと覚悟をしていたが、違った。
兵士になりたいと話した時の熱意が伝わったからと未佳は言った。
『啓介は自分の思う通りにすればいいよ。私は啓介に危ないことをさせたくないけど・・・・覚悟決めたんでしょ?私ももう決めたよ。着いてくって。啓介を守りたいから。』
啓介はその返信に暖かい気持ちになった。彼女は自分の事をよく理解してくれている。だからこそ反対はせず、かといって流される訳でもなく、彼女なりの決意が窺えた。
自分は未佳のこういう所に惚れたのかな。と啓介は考えながら眠りに着いた。