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Misson:13 講義



夕食後の講義は兵士になるに当たって知っておかなければならない基本だった。

そしてその話の大まかなところは一般人でも知っていることだった━━━ビーストと世界の歴史。


ビーストこと怪遺伝子生物は人間が誕生したのとほぼ同時に生まれた。


DNAの突然変異に寄って生まれたものだから個体数はごく少なかった。

そして繁殖能力も無く一代限りのものだったからいままで世界の表舞台に現れたことはない。


たまに雪男や宇宙人として写真に納められ新種の動物かと騒がれたりしたが、ほとんどが見間違いか捏造ということになった。


以前まではその程度の存在だったのだが最近になってビーストにも変化が訪れた。




五十年以上前に勃発した人間同士の戦争。

核が使われた影響でビーストの人口が急激に増えた。

そして人間に負けず劣らずの頭脳を持った固体が生まれ出したのだ。


いままでは突然変異でも体の構造が違うとか強靭な力を持っているとかその程度だった。


だが少数だった彼らは人間にはかなわないといままでひっそり隠れて暮らして来た。


それが五十年前までの話。


今彼らは急速に固体数を増やしつつある。


それは戦争のせいもあるが、頭脳を持った新たな種が生まれ、繁殖力のある種が生まれていったためだ。


現在では人間の約3割ほどのビーストがいると言われている。


そして彼らは団結し、いままで存在を否定され闇に葬られて来たことに怒り、人間へ復習を考え出した。



━━━それがここ十年続いている戦争だった。


「ここまでは学校でも習うことだろう。」


教官はスライドを使いながら一通りの説明をして言った。


「ここからが本題だ。」


一呼吸おいてまた説明を始めた。


現在の戦況を。


「この世界地図を見てみろ。」


スライドに写し出された地図は2色に色分けされていた。


青い地域は主に北半球に。


赤い地域は南半球に。


「青いところがわれわれ人間の領土だ。

そして赤いところは既にビーストに占拠されている地域だ。」


教官の淡々とした説明に兵達はざわついた。


赤い地域が意外に多かったためだ。


南極大陸。ニュージーランド。南アフリカ共和国周辺。ミクロネシアの島々。


それらすべては既にビーストの侵略を受けたという。


教官は兵達の反応には目もくれず説明を続けた。



「━━━そして・・・今戦場になっている場所がここだ。」


そういってスライドに新たに加わった黄色い点滅。


オーストラリア。ブラジル南部。インド洋の島が幾つか。アフリカ南部。


赤い地域と黄色い地域でほとんど南半球は埋め尽されたのだ。


「お前達は、いままで戦争とは関係なく生活を送って来たのだろうが、事態はもうそんなにあまくない。これだけの侵略を受けている現状からそう遠くない未来に、世界中が戦乱に巻き込まれるだろう。」


教官の何も感情の篭らない説明に、学生兵達は唖然とした。




そんなに切羽詰まった状況だとは全く知らなかったのだ。

世界のメディアでもあまり報道されない衝撃の事実に啓介達は言葉をなくした。


そんな兵達を見て教官は何を思ったのか、顔を曇らせて言葉を紡いだ。


「お前達学生兵が戦場に投入される日もそう遠くないかも知れないな・・。」


それを区切りに今日の講義は終了した。

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