第弐話:『○スさま。』な展開。
夕日が眩しい窓際に一人の少女がグラスを片手にたたずんでいる。
『私の名前は知恵…私の一日の終わりは一杯のウォッカで締め括られる…』
そうして私はグラスの中の液体を一口、口に含む…
『美しいあの夕焼けに…乾杯っ』
「ちーちゃんなにしてるの?」
彼女…東雲知恵が声の聞こえた方を見るとそこには康介、縁、杏の部活のメンバー三人(プラス背負われた唯)がいた。
「あっ縁ちゃん!どうどう?さっきの私?まさにハードボイル度MAXって感じじゃない?」
杏は背負っていた教師…唯をソファーに寝かせながら得意気にしている知恵に言った。
杏「アホかお前は…つかハードボイル度ってなんだよ」
「うん!かっこよかったよ~」
「やっぱり!?だよね!」
杏の言葉が届いていないのか、二人はきゃいきゃいと笑いあう。
「あ、でもそれ本当にお酒なの?」
縁が知恵の持っているグラスを指差し問う。
「お酒じゃないわよ?ただの麦茶、縁ちゃんも飲む?」
「あっちょうだ~い」
二人は麦茶をのみながらはしゃいでいる。
杏は諦めたように話題を変えた。
「はぁ…もういいや、ところで康介、今日の活動はどうする?」
「ん、俺は…」
「ハイッ!ハイハイ!」
康介の発言を遮り知恵が勢いよく挙手をする。
「…誰か意見は?」
「なぜ無視するかー!? あたしの意見も聞いてよー!!」
知恵は怒りをあらわにするが、杏はため息一つ。
「お前はロクな発言をしないからな、聞く価値がない」
「なっなにをー!?そういう事はまず意見を聞いてからいってよね!」
知恵は『もしかしたら素晴らしい内容かもしれないじゃんっ!』と言うが、杏はまたため息を一つついた後、
「なら一応聞いてやるから言ってみろよ」
「よーし、聞いて驚け!題して『東雲探検隊が行く!うーま、チュパカブラ探し』!!」
………… 。
縁はよくわかってないようで思案顔、康介はニコニコしていて、唯は爆睡中。杏はジト目で知恵を睨むと、またもため息をついた。
「はぁ…」
「えっ?ダメ?」
「当たり前だ!というか『うーま』じゃなくて『ユーマ』だ」
「えー…」
納得がいかないのか知恵は康介に助けを求めた。
「康介先輩はどう思いますか?」
すると康介はまんざらでもなさそうに
「俺は別に構わないよ?案外面白そうだし」
「いくら康介が許可してもコレはダメだ!第一こんな時間に散策に出掛けたら帰りが暗くなるし、もし道に迷ったらどうするつもりだ?」
「うっ」
ギクッ
「あはは、残念だけど杏の言っている事は正しいし仕方ないね」
知恵は『自信あったのになぁ…』と呟いたあと、何事もなかったかのようにつぎの提案をした。
「じゃあチュパカブラ探しは保留ってことにしておいて今日はのんびりするって方針で!」
それを聞き杏は疲れたようにソファーに座り込んだ。
「結局今日もそれか…康介、今日の活動記録よろしく…俺は寝る」
「あぁ、わかったよ」
「ねぇねぇ、ちーちゃん一緒にゲームしようよ~」
「別にいいよ?なにする?」
「じゃあじゃあ、この伝説のガンシュー『デ○さま』を…」
「『デス○ま』!?」
「「うわぁ!?唯ちゃんがおきた!」」
ぎゃーきゃー
康介はそんな三人の姿を眺めながらいつもと同じ内容を活動日誌に書き込む。
『今日も平和に楽しく活動』と
☆ ☆ ☆
杏は侮っていた、東雲知恵という人間の行動力と諦めの悪さ…そしてこの部活のメンバーの流されやすさを…
次回に続くはず