九時までの一時
街中にある整骨院や歯医者が入った雑居ビル。
その中に、A型作業所「ルピアス」はある。
控室のドアを開ける。
まだ誰もいない。
テーブル席にリュックを下ろし、座る。
9時。仕事開始まで、まだ1時間ある。
バスの混まない時間を選ぶと、この時間になる。
早すぎるのは分かっているが、その方が楽だった。
時間があるので、地下の喫煙所に向かうためエレベーターに乗る。
半年前までは、1階の立体駐車場の前で吸えた。
だが入居者の苦情で、地下の喫煙所に変わった。
地下は空が見えず、窮屈だ。このご時世、仕方がない。
喫煙所に着く。
六畳ほどの四角い部屋。コンクリートの壁が冷たい。
パイプ椅子が六脚。入口の角を除いた三つの隅に、二脚ずつ置かれている。
入口の対角にある、奥の椅子に腰を下ろす。
タバコを吸っていると、同じ事業所の年配の男が入ってきた。
挨拶はない。
目も合わない。
彼もバスの都合で、出勤が早い。
少し早いが一服したのでじいさんをのこし控室に戻る。
控室のドアが、少しだけ開いている。
隙間から光が漏れていた。
中に、ピンクの服を着た若い女性の姿が見える。
ドアを開けると、すぐに挨拶をする。
「おはようございます」
「おはようございます」
小さく返事が返ってきた。
それ以上、会話は続かなかった。
作業開始まで、あと30分。
作業室への入室ができる時間になる。
ロッカーに荷物を入れ、辞書とノートを取り出す。
そのまま作業室に入った。
これから15時まで作業だ。
適度にがんばろうと思った。




