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第3幕
春の日差しが柔らかく庭を包み、桜の花びらがひらひらと舞う。
三度目の人生——今度こそ、逃げない。
彼がゆっくり歩み寄る。
こちらに向ける穏やかな瞳の奥に、あのときの優しい光が宿っている。
過去の二度の人生、会わなかった時間、避けた瞬間……
それらすべてが、私の胸の中で静かに揺れた。
「今回は会いに来たね」
彼の声は、優しかった。
心の奥に、二度目の人生で作られた余白が波のように押し寄せる。
「私ね、全部忘れてたの。でも顔を見たら思い出したんだよ。ぜんぶ。」
声が震えた気がした
二度目の人生で空白にした時間が一気に満ちていく。
避けた時間、後悔、二人の距離——
すべてが意味を持った。
彼の手が、そっと私の手に重なる。
触れた温もりが、過去の余白を埋めるようだった。
言葉はもういらない。お互い恥ずかしくて俯くだけ。
だけどただ同じ時間を共有するだけで、すべてが救われる気がした。
柔らかな春の風が二人の間を通り抜け
影も光も、過去の痛みを溶かすように静かに揺れる。




