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第1幕⑶
「奈々。ちかいよー」
同僚ゆうちゃんの腕にしがみつきながら施設内を見学する
さっきまで感じてた白檀はもう鼻をかすめることはない
案内係の雨ケ谷りくさん。
彼の声も頭に入ってない。
1時間ほどかけ施設を見学し、
研修室へ移動する。
そして少しの休憩時間
「やっと会えた」
その声が、私の心の奥の余白を震わせた。
私は息を呑み、目を合わせる
「覚えてるの?」
「もちろんだよ」
春の光が影を伸ばし、庭の桜の花びらがひらひらと舞っているのを感じた
柔らかい風に運ばれたその香りが、どこか懐かしく、胸の奥の記憶を呼び起こす。
手を伸ばせば、届きそうで届かない距離。
それでも、目の前にいる彼の存在が再び物語の始まりを告げていた




