1/7
第1幕
春の日差しがまだ柔らかく、少し肌寒い午前。
私は会社の入社5年目研修で、地元のお寺が運営する複合施設の敷地に足を踏み入れた。
入り口の石段を上ると、左手には老人ホーム、
右手には火葬場の大きな石壁と墓地が控えていた。
奥には葬儀場の重厚な建物が、まるで時間を押し留めるかのように存在している。
お寺というかもはやお城だわ
足元の砂利を踏むたび、心が少し引き締まった。
ここは静かに過ぎていく日常と、決して戻らない時が共存している。
私はこの静けさが好きだった
空間に浸っていたかった
のに
うしろから響くだるーいめんどーいという若い声
「ゆうちゃん…静かに歩いて
雰囲気だいなしだよー」
後ろで騒いでた同僚を諌める
「わかったよー!あーあ、また奈々の小言
シワ増えるからね!シワ!!」
あ、お線香かな?
暖かく、静かな白檀の香りが鼻をかすめると
同僚の悪態は耳をすり抜けていった




