クラフト依頼・武器
安全地帯の中央の大樹から、例の如く薬品交換券と修繕チケットを回収する。水汲みクエも今日の分が受けれるみたいだ、これも早速受けて報酬を貰おう。
ポーションに加えて、これで聖水と万能薬が増えてくれた。今日はパウダー系も貰えたし、薬品類の補充はこれでバッチリである。
MP回復薬は、あまり使わないから良いけどストックはあった方が良いに決まっている。HPが100超えした現在、ポーションの大瓶も無駄にならない。
ポーション瓶(大)で、丁度HP100回復だからな~。いつの間にかって感じだ、最初はこんなの無駄に勿体無いって戸惑っていたのに。
装備の修繕も無事に終わって、これで戦闘中に武具が壊れる悪夢も回避出来た。物凄い強敵が出て来て、戦闘が1時間近く続くとかなら話は別だけど。
その時は多分、装備より先に命が尽きてると思う。
それから長い事未クリだった『NPC3人との会話』クエ、ようやく終わったよ! 依頼を貰ってからクリアまでの道のり、本当に長かったよ。
そのNPCの中に、あの憎たらしい騎士団の連中が入ってるのが微妙に業腹だけど。クリア報酬が良かったら、そこは水に流そうと思う。
んむっ、冒険スキル『交友』ってのが貰えました。効果は交友関係が拡がり易い……ってほっとけ、どうせこっちは魅力度低いよ!
壊滅的だよ、ステータスの不足はスキルで補えってか!
別に良いよもぅ、俺にはファーがいてくれるし……クライフ師匠だって、ちゃんと師匠になってくれたんだ。街に行けたら即売ろう、二束三文でも構わないから。
そして今回も、マップ補完クエはクリアさせて貰えないと言うね。どんだけ精密にマップを埋めればいいんだよ、1週間歩き回ってんだよ、こっちはっ!?
むうっ、俺の文句にも素知らぬ顔をされてしまった、やるな着ぐるみ。もちろん皮集めも全く進んでいない、山羊は西の断崖にしかいないようなので。
ドロップ確率アップ週間が終わった今、簡単に枚数が集まる保証も無いし。大トカゲと水ヒルの討伐も、依然と全く進んでいない有り様。
あれっ、水ヒル……森ヒルは確か北の樹海にいたよね、水ヒルは湖の近く? それとも海辺の方面かな、いた記憶は無いんだけどな。
それなら湖の近くなのかな、後で行った時に確認してみようか。
大物クエストである、レア種1匹討伐も未クリである。あれだけ倒した一昨日の偉大な記録は、昨日のインには全く活かされていなかった様子、残念。
甲虫の甲殻も集まってないね、コイツも生息は北の樹海だったかな? 海岸の洞窟にもいたような、もっともそいつは手甲の材料にしてしまったけど。
ふむぅ、素材系で使えるドロップ品なら、ついでに狩りに行くのもいいんだけど。今日の予定は既に決まっているので、今はパスするしかないね。
ってか、クリア出来そうなのは鳥の羽根の交換だけみたい。確か矢束が貰えるんだっけ、それは俺にとっては一応タイムリーではある。
ただし師匠のクエ依頼と被っているので、これもこの安全地帯ではパスだなぁ。そんな感じで確認した結果、新しいクエ依頼は今回たった2つだった。
クラフト系の『手製の武器製作』依頼と、意味不明の『手合せ:単数』と言う依頼……なんだろうねこの依頼、手合わせの方は戦闘がありそうで怖いんだけど。
武器製作も、深読みしたら完成度で報酬が変わるのかも知れない。いや、良く分からないけどね……でもどうせなら、攻撃力の高い物を作ってみたいかな?
出来合いのモノなら、木の槍とか既にあるんだけど。
それを提出してオシマイは、ちょっと物足りないと言うか手抜き感が激し過ぎる。丁度作りたいなと思っていた、大腿骨を使った両手棍を試してみようかな。
提出して戻って来なくても、骨の武器なら別にそれでも良い。骨製の物を使うのって、ちょっと勇気がいる。ぶっちゃけると、蛮族感が出て恥ずかしい。
だってそうでしょ、骨の武器で相手を殴るって……。
それはともかく、クエ依頼書で貰った『手合せ:単数』の効能がやはりとても気になる。依頼の出所は、猫のマークだから猫の着ぐるみNPCだなぁ。
手合せしちゃうの、ここでいきなり? 不安だから、取り敢えず先にクラフト依頼を済ませちゃおうか。ついでだから、お試しに精霊に貰った“時の狭間の香木”を使ってみよう。
効果は確か、20分間の時間の停止だったっけ? それ込みで確かめるべく、いつも工作をする安全地帯の隅っこでいそいそと工具を広げてクラフト準備。
それから取り出した魔除けの香炉に、例の香木をくべてみる。そしたらあら不思議、本当に周囲の時間が止まっちゃったよ!
驚いた表情のファーが、悪戯でも思い付いたのか着ぐるみNPCの方へと飛んで行こうとした。ただし途中に壁みたいなのがあって、それは阻まれてしまった。
なるほど、恩恵を受けれるのはこの香炉の範囲内だけっぽいね。それでも凄く便利には違いない、特にクラフトをする際には重宝しそう。
アバターのスキルビルドとかで悩む時は、別にオフラインでも構わないけど。何かを造ろうと思ったら、もちろんオンラインで時間は過ぎて行く。
4時間縛りの限定サーバでは、本当に強力なアイテムには違いない。
ファーは、思うように飛び回れなくてちょっと不満そう。それでも俺がクラフトを始めたら、楽しそうにそれを眺め始めてくれた。
そして途中で、以前に造った妖精の巣箱を出してくれとのリクエスト。どうやら寝転がって、リラックスしながら作業を眺めたいらしい。
片手間に造ったモノだけど、有効利用してくれるなら俺も嬉しいかな。そんな事を考えながら作業を続けて、まずは1つ目が完成した。
と言っても、最初に手掛けたのは手甲の改装だったんだけどね。お手軽な作業でまずはウォーミングアップ的な感じ、ちなみに改装部分は手甲の裏側。
そこに針金を使って、投げナイフの鞘みたいなモノを取り付けてみたのだ。ポーション瓶もそうだけど、鞄から薬とか交換武器を取り出すのはそれなりに時間が掛かる。
戦闘中は、そのタイムラグが手痛い結果を招くのだ。このゲーム、敵のドロップ品は自然にアバターのストックに入るのに、アイテム使用は割とシビア。
それを解消するために、投げナイフを手に取り易い場所に括り付けた格好だ。ナイフはポーチに入れる訳には行かないので、まぁ次善策かな?
一応2本持っていたので、2本とも手甲の裏にセットしてしてみた。バランス的にも良い感じ、簡易鞘だけど使い勝手は悪くないと思う。
さて、次は本命の骨を使った棍棒を作ってみようか。つまりは本番だ、元が棍棒サイズなので加工はナイフで削ったり持ちやすくしたりがメイン。
ついでに尖った骨を先端に括り付けると、蛮族感が溢れ返らんばかり。丈夫な木の蔦と精霊に貰った松脂の余りで、無理矢理にくっ付けた感じだがどうだろう。
普通は養生の期間を置くんだけど、今回は納品する予定だからいいよね? それにしても、我ながら野蛮な武器を作ってしまったな。
妖精のファーも、これは無いわぁみたいなゼスチャーでの批評。うん、これは無いな……自分で使うのは、ちょっと躊躇われるレベルのワイルド感だ。
これはもう、戻って来なくていいや……鑑定した結果、攻撃力は12もあって割と良い感じなんだけどな。両手での使用だと、何と15と言う傑作品である。
う~ん、このフォルムじゃなければ自分用に取っておくんだけど。
悩みながらも時計を見ると、香木の効果時間はあと5分ほど残っていた。ここは有効利用に、もう1品作ってみよう。何を作るかは、もう既に決めてある。
師匠の畑を守るガーディアン、その名も“案山子”である。ただ突っ立っているだけの、程良いコストパフォーマンスの孤高の戦士だ。
うん、ちょっと良く言い過ぎたけど、案山子は案山子だ。それ以上でもそれ以下でも無いが、愛情をこめて作ってあげたいと思う。
まずは棒切れを十字に括り付けて、基本の骨組みを完成させる。顔はいらない布地を丸めて作成、そこに定番のへのへのもへじを炭で書き込んでやる。
それから、もう使わない装備を選んで適当にコーディネイトして行く。これには、寝転んで見学していたファーも積極的に参加してくれた。
コレを使ってとかコッチの方が可愛いとか、熱心に意見を述べまくって来た。仮にも女性だからな、その意見を無下には出来ない。
そんなこんなで、なかなか素敵な案山子が完成。
時間はちょっと過ぎたけど、何とか目的の3品は出来上がりを見せた。案山子はコボルト並みの大きさで、持ち歩くには凄く不便ではある。
それでも何とか魔法の鞄には収納出来て、そこはホッと一安心。良い出来でもあんな奇抜な人型の物体を、冒険の先に持ち歩きたくなどは無い。
妖精のセンスは、やはり常識の枠からはみ出してる感じが漏れ出てるね。師匠からクレームが出ないと良いけど、そこだけが唯一の心配。
動き出した時間の中で、さてクエ依頼を消化しようと俺は着ぐるみNPCに近付いて行く。それから、いつも武器や防具を修繕してくれるクマの着ぐるみに、造ったばかりの骨の棍棒を奉納する。
クマNPCは、俺から手渡された武器をいろんな角度から眺め始めた。それからしばらくして、恐らく満足した表情で頷いてくれた。
それからクリアの音楽が鳴り響いて、どうやら無事にクエを達成した様子。そして報酬には、何と骨の素材セットを貰えてしまった。
まぁ見た事の無いアイテムばかり、奇妙な頭蓋骨に野蛮な大腿骨、三色珊瑚に白い甲羅、骨の欠片はスケルトンが結構落としていたけど。
骨の矢束は攻撃力5の消費アイテムだけど、これが20本セットで貰えた。極めつけは『骨工ギルドの推薦状』で、つまり渡した武器の素材の結果でそうなった?
うわっ、これは素材の選択を失敗したかな……自分的には、木工細工が本命だったのに。骨の細工とか、全然これっぽっちも興味が無いんですけど。
木工だったら、消耗品の矢弾の製作とか需要は色々とあったのに。でもまぁ珍しい素材も入手出来たし、良い事にしておこうか。
いや、待て待て……ひょっとして木製の武器を渡していたら、珍しい木材の素材を貰えていたとか? うわっ、勿体無かったなぁ、攻撃力を求めたのが裏目に出ちゃったよ。
ちなみに、納品した骨の両手棍は戻って来ませんでしたとさ。
――それは織り込み済み、いやでも失敗したなぁ……。




