ログイン7日目
さて、早いモノで今日のインで7日目、ゲームを始めて一週間が経過する事になる。この限定イベントサーバが始まって、丁度2週間の経過かな。
とは言え、イン前にゲーム内の告知を見たけど特に変化はない様子。いや、何かドロップ強化週間が終わって、経験値アップ週間が始まったって書いてあった。
良く分からないけど、温いイベばかりだと冒険者からは批判が上がりそう。俺は特に何も感じない、何しろ今が楽しいからね。
そう、今日はクライフ師匠の隠れ家からの冒険開始である。ここも一応は安全地帯仕様らしく、モンスターの姿もポップも皆無っぽい。
ちょっと離れた畑には、害獣はいっぱい湧くけどね。まずは相棒のファーに挨拶、そして部屋の中で何かの仕掛けを作っていた師匠にも。
どうやら獣用の仕掛け罠を造っていたらしい、器用な人だなぁ……俺も見習いたいけど、そっちも教えて貰えないかな?
まぁ、今は弓矢の上達を一番に念頭に入れて師事しないとね。
そんな訳で、最初の1時間は弓矢の練習に充てる事に決定。師匠の教えは特に厳しいって訳でも無く、むしろ放任でコメントも少ない感じ。
こちらとしては、それを胸に刻んで気を引き締めて励むのみである。何しろ、この練習に1日のログインの四分の1を費やすのだ。無駄に消費したら、罰が当たると言うモノ。
妖精のファーも、卵を窓際に運んで貰って定番の位置で俺の訓練を眺めている。これはファーが望んだ事で、どうやら余り俺とは離れたくないらしい。
卵を温めている妖精は、とても満ち足りた表情をしている……何が孵るのかって結末はともかくとして、彼女にも頑張って貰いたい。
こちらも庭の隅の的を睨んで、気合を入れて射撃の練習を始める。その格好だが片膝立ちで、まだ立たせても貰えていない。
それでもその助言のお陰なのか、昨日の1時間の練習が効いているのか。割と的の近くへと飛ぶ事が多くなって、しかもちゃんと勢いのある矢が飛ぶように。
飛躍的な進歩でこそ無いが、自分にとっては大いなる躍進には違いない。たまに矢が的の端っこに命中すると、飛び上がりそうなほど嬉しくなる。
上達するって楽しいな、それはバーチャル世界でも同じ事。
そしてある程度矢が的に近付くようになったら、師匠から『2射連続射ち』をするように言われた。なるほど、それは確かに実戦向きだ。
精密性よりは、速射性能を向上させるのは実戦では理に適っている。これも繰り返し、身体に覚えさせるのが肝って事なのだろう。
敵が近付くまでに、2射どころか3射以上出来たらしめたモノ。矢の継ぎ替えをなるべく素早くスムーズに、狙いは二の次で頑張ってみる。
その結果、再び的外れな射撃ばかりに……。
「狙いが外れて来たぞ、継ぎ替えも大事だけど的当てもしっかりな。2連射を1セットと考えて、その流れを丁寧に反復しろ。
もちろん、身体が覚えるまでな」
「はいっ、師匠……ちなみに、矢の継ぎ替えをスムーズに行うコツとか無いですかね?」
師匠は肩を竦めて、それを含めて慣れろとの仰り様。師匠も自己流なので、自分のやり易い型を見付けるのが一番との考え方みたい。
それならば、弟子である自分も自己流を極めるつもり……の前に、やっぱり身近なお手本を肌で感じ、目に焼き付けておいてみたい。
そんな訳で、師匠にお願いして片膝立ちの構えを実践して貰う事に。うわ~っ、やっぱり段違いだなぁ……速さも命中率も何もかも!
俺は再びお願いして、もう少しゆっくり“2連射”を見せて貰う。師匠の優しさにより、その型を目にしっかりと焼きつけておく。
うん、さすが流麗だなぁ……ただし、感心してばかりいられない、自分も出来るようにならないと。そんな訳で再び交替、残り時間を熱中して訓練を続行する。
与えられたノルマは、なるべく完璧にこなせるようにならないと。
やれやれ疲れた、熱の入った訓練は1時間が経過してようやく終わりを迎えた。結果はまずまず、後半は2連射と丁寧な狙い撃ちの交互での練習をしてみた。
連射の流れは、何とか身体に染みついて来たような気がする。何しろスキルをチェックしたところ、弓のスキルPが1⇒2になっていたのだ!
使い続けると上がるのは分かってたけど、まさかこんな短期間で2になるとは。嬉しい誤算だけど、まだまだ実践で使うには覚束無い腕前なのは確か。
特訓って凄いなって、素直に感心する……伊達に貴重な、イン時間を費やしている訳では無いと分かったのも、1つの収穫ではある。
それはそうと、この後の過ごし方を決めないとね。師匠から簡単なクエを貰ったので、それをこなしつつ近場の虹色の果実にアタックってところかな?
それだと、今日は南の湖の果実取りになって来る。
琴音の前情報だと、南の湖の浮島に虹色の果実が生っているらしい。更に師匠の詳しい助言を付け加えると、その周囲はゴブリンと水棲大型モンスターの狩り場らしい。
彼らの獲物は、主に小動物系の大ネズミや水鳥、それから昆虫系らしい。そして大型の水棲モンスターは、大ワニ……たまにヒドラとかも見掛けるとかマジですかっ!?
師匠も警戒する程度には、コイツ等は油断がならないのだとか。ヒドラはファンタジー系の界隈では有名なモンスターだけど、正しくはヒュドラーと言うらしい。
ギリシア神話に出て来る怪物で、巨大な胴体に9つの首を持つ強敵だ。再生能力が秀でていて、首を切り落としても新しい首が再生してしまう。
そんな設定は、ゲームにも流用される事も多いのでとても厄介。ただし、首の数に関しては、いろんな説や設定が存在する。
このゲームだと、強い奴ほど首の数が増えて行くっぽいね。
師匠が良く見掛けるのは、2本~せいぜい3本首の大蛇らしい。それでもゴブリン程度だと相手にならず、小鬼どもは一方的に捕食されて行くとの目撃情報が。
湖の付近にはワニもいて、コイツも不意打ちされると思いっ切り危険なのだそう。濁った水際には、安易に近付かない様にと注意を受けた。
そんな危ない場所の探索なんて、思いっ切り気が進まないけどまぁ仕方がない。何しろ、虹色の果実は取り敢えず5つは揃えてしまいたい。
それがこのソロエリアである、『始まりの森』のクリア条件だからね。いつでも逃げ出せる状況を確保しておけば、例の騎士団に再び絡まれても安心(?)である。
それに加えて師匠のクエ依頼の遂行が、今日のメイン活動目的だったりする。その内容は様々だけど、収集活動が主になって来る予定。
お肉を落とすモンスターからは肉の採取、それから矢羽根の材料集めも言い渡された。蔦の橋の補強もしたいので、木の蔦も買い取ってくれるらしい。
実際には、別のアイテムと交換らしいけどそれも依頼の内なので問題ない。他にも畑に植える野菜の種を探して来て欲しいとか、ついでに遭遇したゴブリン退治も頼まれている。
どうやら南の森の一帯は、ゴブリン部族の縄張りらしい。そして奴らがいなくなれば、今の騎士団と盗賊団とゴブリン部族の、奇妙な三竦みは解消されるかも。
師匠的には、望まない隣人たちには綺麗に消え去って欲しいってのが本音みたい。それに少しでも貢献出来れば、こちらとしても喜ばしい次第。
とは言え、自分程度のレベルの冒険者に出来る事はとっても少ないのが現状。でもまぁ、ゴブリン位なら自分でも相手に出来るので頑張りたい。
そんな感じで、及ばずながらも助力は惜しまない予定である。ちなみに師匠の依頼は、ちゃんと呼び出しウィンドウのクエ依頼の欄で確認が可能だった。
大樹の依頼書の時は、クリア報酬が全部???で不透明だったのだけど。師匠の依頼は、一部だがクリア報酬が公開されている親切仕様である。
それによると、ゴブリン3匹討伐で水晶玉が1個貰えるらしい。たくさん持っていて困るモノでもないので、この依頼は積極的にこなしたいと思う。
ちなみに、一番のメインクエが南の湖にある祠へのお供えだった。お供え物は師匠の育てた野菜とか穀物とか、それから少々のお酒である。
お酒は貯蔵がもう少ないらしい、さすがにお酒の自作は師匠でも無理みたい。それならと、半壊馬車から拾った果実酒を訓練報酬代わりにと寄付したら。
物凄く喜ばれてしまって、弟子としても嬉しい限り。
――その内に、ラマウカーンの祠にもお供えに行ってあげなきゃね。




