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ミックスブラッドオンライン・リメイク  作者: 鳥井雫
始まりの森編

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日曜日のホーム結成



 何にせよ、ようやくゲーム仲間に引きずり込めたと2人の喜びようは半端では無かった。こっちも相談があるのに、ゲームの濃い話を始めようとする始末。

 まぁ、さっきの現実の会社立ち上げ話を延々とされても困るけどね。


 取り敢えずは、今晩の内に決めてしまいたい事柄が幾つかあるのだ。それだけでも一応は、皆に周知してから決定しておきたい所。

 賞金の分配云々(うんぬん)は、まぁ半分以上は冗談としてもだ。いや、この際だから最初の内に決めておくのも良い案なのかも知れない。


 せっかく議題として出たのだし、後でお金の問題で揉めるのも莫迦(ばか)らしい。例え賞金を取るのが、果てしなく低い確率だとしてもだ。

 おっと、その前に……俺の妹たちのイベント参戦問題もあるな。琴音の爺様から、今週中に配達物が到着すると連絡があったのだ。


 つまりは、俺達兄妹3人分の筐体(きょうたい)が揃うのは確定の事実。後は妹の楓恋(かれん)杏月(あんず)の意思を確認して、ベテラン勢が受け入れてくれるかの有無を問わなければ。

 丁度渡されたお握りを食べ終わったのを見て、楓恋がおかわりを持って来てくれた。杏月にも声を掛けて、我が家族集合で即席会議スタート。


「実はな、琴音の爺様にゲームの筐体を買って貰える事になって、それでお前たちもゲーム出来る環境が整っちゃうんだ。あっ、ゲームってのは俺もみんなもやってる戦闘アリのバーチャルネットゲームの事な?

 んで、どうせなら一緒に懸賞付きイベントやってみないかって話なんだけど……」

「ほあぉ~~!? 凄い、これで置いてけぼり感を味わなくて済むねっ、楓恋ちゃん!?」

「まぁそうだけど……それって、年齢制限とか無かったんだっけ? ゲーム始めるとしたら、みんなでグループを組んで遊ぶの?

 私たち思いっ切り初心者だし、足手(まと)いにならないかな?」

「おおっ、2人もとうとう『ミクブラ』始めるのか……そう言う話なら、俺らも妹たちも大歓迎だぜ! なっ、明日香……!?」


 もちろんですとの返答は、エプロン姿の京悟の妹の明日香から。それを聞いて、琴音がダッシュでこちらに突っ込んで来た。

 焼いてたお餅を放置とは、これはハイパーモード突入かっ!?


 しまった、先に琴音に話を通しておくべきだったか。案の定ウチのお爺が何したのよと、要約すると俺が琴音の部屋からログインをしなくなる事への不満らしい。

 とは言え、連日ゲームのために女性の部屋に参るのは色々と不味い。インの確保時間も限られて来るし、何より世間体もあまり(よろ)しくない。


 聞く所によると、京悟も美樹也も夜の遅い時間に兄妹でインするのが習慣らしい。時間を合わせようと思ったら、夜更け過ぎに琴音の部屋に行く破目になってしまう。

 さすがにそれは無理だろうと、何とか理性を取り戻すように琴音を説得に尽力するも。いつもの(ごと)く、幼馴染の我が(まま)理論は暴走気味で納得して貰えず。


 それからは周囲の加勢も手伝って、何か訳の分からない条件でようやく集約に。つまりは俺が悪いのだから、今後琴音の我が儘条件も絶対に従うように的な。

 ちょっと待て、どうして俺が全面敗訴な流れになってる? まぁ、琴音の暴虐(ぼうぎゃく)の人身御供(ごくう)に差し出されるのは、確かにこれが初めてではない。


 納得は行かないが、まぁ致し方ないと思う他無いな。結局は次の休みに2人切りでお出掛けする事で、どうやら手打ちとなったっぽい。

 釈然としないけど、こちらも筐体の入手とログイン先の変更を黙っていた引け目もあるし。まぁ、確かに琴音がゴネるかなぁと一抹(いちまつ)の不安は確かにあった。


 そのために、孝明(こうめい)老の提案の件は避けていた話題だったんだけどね。この程度の刑で済んで、良かったと思おう……特に実害も無かったし。

 それよりその後の、様々な取り決めの決定の早い事!




 分配は取り敢えず、順当に頭割りで決定した。リーダー手当てどうすると振られたけど、こちらは初心者兄妹3人での参加である。

 当然ながら、受け取る程の活躍が出来るとも思わない。そもそも賞金に手が届くとも思わないが、それは流れに水を差すので口には出さない事に。


 妹たちに関しては、最初の合流の関係で『人間』族か『妖精』族で始めるのが条件らしい。他の種族でも良いが、それだと俺との合流が遅れるっぽい。

 京悟や美樹也とその妹達も、初心者の楓恋と杏月の面倒は見てくれると請負(うけお)ってくれた。ただしイン時間が違ってくれば、それも不可能となってしまう。


 なるべくなら、俺と一緒の時間に調整してインからの冒険が望ましいとの事。そういう微妙な時間調整は、家族での方がやり易いだろうとのアドバイスである。

 それから後は、パーティ人数的な問題もあるらしい。


 つまりは京悟と美樹也と明日香と芽衣で、既に4人パーティが出来上がっている。俺と琴音を合わせると、綺麗に上限の6人で行動に支障は無い筈だったんだけど。

 プラス2人となると、4人パーティ2組の方が今後動き易い。こちらの方が初心者3人と大変だけど、妹たちも俺と一緒の方が安心出来るだろうとの判断である。


 こちらもそれに(いな)は無いし、妹達もその案で了承してくれた。市川(いちかわ)兄妹と東雲(しののめ)兄妹は、普段のイン時間は10時前後と割と遅いらしい。

 美樹也と芽衣は店の手伝いもあるし、京悟もバイトをしている手前。放課後は予定も合わないのは当然で、今後は俺達がそちらに合わせる工夫もしないと駄目かも。


 他にも色々、今後のゲーム内での細かい計画を煮詰めて行って。2つのパーティが合流するまで、各々でイベントやクエ依頼を頑張って行く事に。

 それからお互いのゲームの近況も報告し合って、その後の行動の指針も述べ合う。向こうは京悟と美樹也が『魔』族で始めて、『獣人』族の明日香と芽衣を迎えに行っている最中らしい。


 今後の主要な活動は、今いる“中間の街”ベルベスでするらしい。ただしその街は、PKやら何やらで不穏な状況でなかなかに大変だとの事。

 そのために、後衛ベースの妹たちの安全は兄2人で最大限に考慮するとの事。なるほど、紳士代表として俺もその辺は見習わなくては。



「それじゃあ俺も、早目に琴音と合流しなくちゃなぁ……ってか、俺も強力なレア種に遭遇したりで、毎回死にそうな目に遭ってるんだけど。

 あまり人の心配してる暇は無いけど、スキルPとか報酬の入りは良いんだよな。それから弓の師匠に出会えたから、弓術を習得するまでは始まりの森に滞在しときたいんだけど。

 そんな訳で、出来ればもう少しこっちで冒険してていいかな?」

「恭ちゃんはそれでいいんじゃないかな……こっちは元サーバの知り合いの女の子いたから、しばらくは一緒に行動しようって事になってるから。

 3人パーティだからちょっと不安だけど、危ない場所に近付かなければ何とでもなるだろうし」

「明日香と芽衣も、始まりの街で2人パーティだけど不便は無いって言ってたぞ。もっとも、街ごとにPKや裏街の勢力の強弱はあるだろうけどな。

 俺ら魔族の街の裏の住人は、割と大人しかったよな、ミッキー?」


 そうだなと答えたミッキー、もとい美樹也は何となく渋い顔。アバター名を呼ばれて照れているのかも知れないが、元々口数の少ない奴なので敢えてスルー。

 向こうはもうすぐ、4人が合流して安泰のパーティ編成になるらしい。そこからレベル上げなり冒険者ランク? なるモノを上げるなり、とにかく活動に打って出るとの事。


 それで余裕が出来れば、こちらのチームを迎えに来てくれるそう。なかなかに面倒臭いが、街間の移動が危険な上に時間も程々に掛かるそうなので。

 万全を期して(のぞ)まなければ、危うい目に遭う確率も高いそうなのだ。


 お前の心配はお前がしろと、つれない返事の京悟はともかくとして。互いの通信の手筈だけは整えようと、建設的な意見が美樹也から出た。

 琴音もそうだねと、ゲーム環境が整ったらフレ申請を互いに出そうと提案する。今までそれが出来なかったのは、ひとえにイン時間のちぐはぐさによるものが原因であるらしい。


 つまり同一時間内に相手がいなければ、フレ申請は出来ないみたい。本当は同一場所の方が望ましいのだが、この限定サーバは初っ(ぱな)がソロエリアと言う極悪仕様なのだ。

 同じ時間にインしているなら、名前を調べてフレ申請を飛ばせるらしい。琴音もそうやって、俺とフレ登録を初日に結んだ模様である。


 今の所フレ登録から出来る事は、メールの遣り取りのみだけらしい。それだとやはり、イン時間が一緒じゃないとあまり有効活用は出来ないみたい。

 とにかくチームとしての方針は、各々が力をつけて中間の街以降の街で合流する事に決まった。それから今週内にイン時間を合わせて、フレ登録作業を行うと。


 そんな決まり事が、琴音の仕切りでポンポンと決定されて行く。俺たち男性陣は、差し出されたぜんざいを食べながらそれを聞いているだけ。

 俺がリーダーと言う話だが、事前ミーティングでは用無しらしい。文句は全然無いのだが、ついでにゲーム内でも琴音が仕切った方が話は早い気がする。


 サブリーダーの明日香は、ノートを取り出して律儀に内容を書き(しる)している。しっかり統制が取れてるし、俺が出る幕も無いと思う。

 まぁ、向こうが必要とするのなら、俺も力を貸すのに(やぶさ)かでは無い。そんなスタンスで良いと思う、突っ()ねているのではなく信頼の問題だ。


 俺は琴音の手腕を疑っていないし、仲間達のチーム力も信頼している。バーチャル世界では新参者の俺などが、出る幕も無いんじゃないかと考えているだけだ。

 それでも俺が必要になれば、勿論(もちろん)その時は精一杯力を貸す所存。


 そんな事を考えていたら、隣で餠に(かじ)り付いていた京悟がこちらの現在のレベルを訊いて来た。向こうは既にジョブ替えしていて、初級15レベルに到達しているらしい。

 これは周囲の冒険者に較べても割と高い方らしく、移動に時間を割かれているにしては上々の出来との本人談。ただし装備に関しては、金も無いし酷い有り様との事。

 あちら立てればこちらは立たずの、まぁ良い見本ではある。


「そっちはレア種を相当に倒してるって話だし、出遅れを差し引いても順調なんじゃね?」

「そうでも無いぞ、今日なんか精霊の(ほこら)造って半分終わったし」





 ――本当に、冒険者稼業って(まま)ならないモノである。








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