ログイン6日目
さてさて、インも既に6日目だ……安定の安全地帯でのログイン、すっかり慣れた光景である。ファーとの挨拶も済ませて、慣例の大樹詣でをこなす。
それからついでに、ログインボーナスチェックも忘れずに。
初の日曜のインだが、どうやらこちらの世界は昨日と違ってお昼みたい。残念なようなホッとしたような、ちょっと複雑な気持ちの中。
冒険の最初の日課を、着実に相棒と一緒にこなして行く。薬品&修繕交換チケットを大樹から入手、そしてクエ依頼書も新しいのが数枚貼り出されていた。
しめしめと内容を確認している間に、ファーがフワッと上空に舞い上がる。そして大樹の枝葉の間から、例のランダム交換チケットをゲットして来てくれた。
今回は2枚か、ナイスだぜ相棒っ! こっちのテンションを受けてか、妖精も上機嫌。それではまずは、各種交換と修繕作業から始めようかな?
チケット交換の薬品は今回、効果の高い中瓶が1本ずつ紛れていた。ちょっと嬉しいけど、その理由がいまいち判然としない。
何度も交換しているからとか、その程度の理由なら良いんだけど。修繕に関しては、例の壊れた馬車から拾った『錆びた胸当て』をさり気無く中に紛れ込ませてみた所。
クマの着ぐるみNPCは、胡乱な顔? をしながらも、それでも装備品の錆び落としをついでにしてくれてまずは良かった。
それにはホッと一安心、これで心置きなく装着出来るよ!
――護衛の胸当て 耐久6、防御+6、器用+2
んむっ、性能も微妙に良くなっているじゃないかっ! 嬉しい限りだ、取り敢えず着ぐるみNPCにありがとうと感謝を述べるも。
向こうはツンと澄まし顔、いや着ぐるみだから表情は変わらないのか? とにかく良かった、始まりから上々の出来だと自負しつつ俺は上機嫌。
その勢いで、続いてサルの着ぐるみにランダム交換をお願いする。しかし残念ながら、今回はスカばかりの結果に上がっていたテンションはだだ下がり。
その内容だが、炎の水晶玉2個とポーション(中)が2個と言う結果だった。まぁ、それに文句を言うのも筋違いだな、有り難く今日の冒険に使わせて貰う事に。
その分、ログインボーナスに関しては初めて見るアイテムばかり。いやまぁ、そんなに大したモノは支給されていない気はするんだけどね。
今回は『炎の神酒』とか『蜂蜜ジュース』という、飲み物がまず2種類ほど。『炎の神酒』は、一時的に攻撃力がアップする付与系のアイテムらしい。
その代わり、飲み過ぎると酔って千鳥足になる可能性もあるらしい。それは何とも、実に分かり易いマイナス効能だが戦闘時には致命傷な気も。
それにしても、未成年でも大丈夫なのかな……その辺は、架空世界だしセーフなのか? 特に説明文に記載は無いし、まぁ良い事にしておこう。
『蜂蜜ジュース』はMPオート回復が付与されるらしい。どちらも3本ずつの支給で、1本は今日中に使って効果を確かめておきたい所。
何分持つとか、どのくらいの上昇率かとかは把握しておかないとね。
そして最後の1種も、液体系で括られていて変なこだわりを感じてしまった。その3つ目だが、何と『聖水』が4本……う~ん、昨日欲しかった!
しかしまぁ、これは重要アイテムだと今では良く分かる。支給スロットから取り出して、ベルトのポーチにしっかり収納してと。
さて、ついでに装備も貰っておこうかな、何せ狼の革がたくさん貯まってるし。それは当然である、昨日の帰り道だけで随分と倒したのだから。
とは言え、即戦力の装備かと言われればどれもちょっと微妙。
――質素な腕輪 耐久5、防+4
――質素な帽子 耐久5、防+4
――丈夫なベスト 耐久8、防+7
狼の毛皮での質素シリーズは、これにて全部位交換して終了らしい。そして山羊の皮と交換で貰える、新シリーズは“丈夫”で括られている様子。
まぁ確かに丈夫かもだけど、質素シリーズに負けずに地味な見た目だな。この山羊皮は、洞窟の収集ポイントからの回収品で討伐からのゲットでは無い。
とは言え、洞窟や何やらの探索とかレア種の撃破の報酬で、割と良い装備も集まって来ているし。丈夫シリーズは、無理して交換する必要も無いかな。
山羊を倒しに、わざわざまた西の断崖に行くのも大変だからね。あの場所には、昨日受けたトラウマ的なアレも潜んでいるし何度も通いたくはない。
ただし、大トカゲと一緒にクエ依頼を達成しようと思ったら、もう一度あの場所へ向かうべき? 他の場所に生息していれば話は別だけど、南方面にもいるのかなぁ?
今日は時間があれば、南の森の探索をする予定となっている。まぁ行ってのお楽しみだ、それまでは山羊と大トカゲ問題は後回しで。
装備の交換も終わったし、他には残念ながらクリアした依頼は無かった。マップ探索も、昨日は西の上半分ばっかりの行動だったしなぁ。
まぁ昨日は、無事に帰って来れただけで御の字みたいな所はあったけどね。何しろ、レア種やユニーク種との遭遇が実に6度である!
その内1回は、絶対に勝てそうにない相手だったと言う。あの赤ネームとの遭遇と、刷り込まれた恐怖は当分トラウマになりそう。
ところで、今日貰ったクエ依頼書には、ちょっと変わったモノも含まれていた。定番の南のマップを埋めろとか、水ヒルを4匹倒せとか甲虫の甲殻を3個集めろはともかくとして。
手作りの料理を持って来いとか、樽桶を綺麗な水で満たせとかは初見である。さらに豪胆な依頼、レア種モンスター1匹討伐なんてのも含まれていたのだ。
愉快な依頼が勢揃い、何だか楽しくなって来た。
さてと、ここで出来る依頼は安全地帯を出る前に片付けておきたいな。おっと、昨日放置しておいた、甲殻の手甲はログアウト前に回収しておいたんだっけ?
それも今日は装備予定だ、忘れない内に鞄から出しておこう。
昨日思いがけずに、鞄の容量が軽く3倍以上に増えたからなぁ……かなりの強敵だったけど、死霊と化した“死の商人”を倒せて本当に良かったよ。
今日はどんな出会いがあるだろう、楽しみで仕方がない。ちなみに、今すぐ出来そうな依頼と言えば、やっぱりクラフト系かな?
家具の製作も出来そうだし、料理キットもあるので手作り料理も可能だろう。幸い昨日の探索で、材料はいっぱい手に入ったからね。
それらを取り出して、空き地の端っこで工作準備を始めると、ファーが興味深そうに手元を覗き込んで来た。ふむぅ、君にも助手をやって貰おうかな……例えば、料理の火の番とか。
ところで肝心の水が無いな、エリアに桶樽は置いてあるけど水を汲める場所は……そう言えば、今日のクエの中にも水汲み依頼があったっけ。
つまりはそう言う事か、少なくともこの安全地帯には水源は無いと。それは困ったな、どこに汲みに行けばいいんだろう?
琴音から貰った情報では、ここから南にかなり大きな湖があるらしい。琴音は昨日その辺りを探索して、虹色の果実を見事ゲットしたとの事。
ここを出て南下して行けば、つまりは水源に辿り着くのかな? だがしかし……クラフトを今からすると決めた手前、今からそこまで探しに行くのも大変そう。
丁度手元には、水を入れるのに良さそうな壺はあると言うのにこの片手落ち。クエ依頼の水汲みを合わせると、何往復かしなけりゃ駄目なのかも。
それも辛いし時間の無駄がなぁ、何か良い方法は無いモノか。
昨日、半壊馬車からゲットした壺を前に考え込んでいると、妖精が俺の鞄をポンポンと叩き始めた。そしてジェスチャーで訴えるに、この中に答えがあるヨとの事。
えっ、まさか俺様がそんな見落としをしてただとっ? 慌てて鞄を確認する事しばし、あっ……あった、ありましたよお嬢さん!
その名も水の宝珠《清き水》、文字通りに水を生み出す便利魔法だ。冒険と言うか戦闘には関係ないので、マルッと完全に忘れていたよ!
確かこの魔法、スキル振りを必要とせずに使えるんだっけ?
「でかしたぞ、ファー……これで大幅に、クエと料理の時間を節約出来るっ!」
――そんな俺の喜ぶ姿に、相棒も嬉しそうにサムズアップを返すのだった。




