罠だらけの遺跡ダンジョン1
狩り場認定された夜の広場に、再び顔を出すのはやっぱり怖かったのは事実。3つ目の半壊馬車を探索する気力も当然湧かず、まだ半分時間はあるけど俺は帰路に着く事に。
本当なら、洞窟の探索にもっと時間が掛かっている筈だったんだけど。そんなに広くも無かったために、予定より大幅に時間を残してしまう破目に。
取り敢えず危険なこの場所は離れて、森の中でやる事を探そうかな? それとも安全地帯に戻って、早速クラフトに掛かるのも悪くないかも。
材料は充分に集まったし、下ごしらえだけでもやっておきたい気も。
そんな事を考えながら、夜の闇が覆う断崖を眺めて不審な点が無いかチェックする。何しろ、ここはエリアボスやユニオンボスの狩場っぽいからね。
危険がないのを充分に確認しつつ、俺たちはそろっと洞窟を出て歩き出す。落石が一段と多い地点を迂回して、いざ森の中へと逃避する。
そんな逃げを決め込もうとしたら、いきなり相棒のファーが騒ぎ出した。これこれ、心臓に悪いからいきなり顔に飛びつくのは止めなさい!
えっ、断崖の上部に何か違和感があるって……逃げ出す準備は万全だ、何しろあらかじめ備えていたから。なぬっ、見付けたのは敵じゃないって?
なら何だ……何ナニ、崖崩れの起きた場所に穴が開いてるって? ふむふむ、それはもしかして、未発見の洞窟って事なのかっ!?
それは凄いぞ、ちょっとだけあの巨大キメラに感謝だな!
とは言え、あの時の恐怖心はまだ完全に払拭されてなどいない。少しでも自信を取り戻すため、それから気分転換に新しいスキルでも覚えるかな?
魔法は今夜はもう、光と風と2つも覚えたので却下である。それよりも、少々物足りなさを覚えていた短槍の武器スキルを覚えてみようか。
さっき新しい盾を回収出来たので、別に盾スキルでも良いんだけど。やはり強くなるには攻撃が大事、そんな感じのとても単純な発想である。
なるべく使い勝手の良い、良い感じのスキルよ来いっ!
――おめでとうございます、短槍スキル《捻り突き》を覚えました!
うん、無事に新しく技を覚えたっぽい……まぁ何だ、ランダム取得も悪くないな。新しいスキルを覚える時の、ドキドキ感が癖になりそう。
これって運が良ければ、たまにレアスキルなんかも覚えるらしい。ただし今回覚えた《捻り突き》は、完全に初級の技みたいでちょっと残念。
その名の通りに捻って突く感じの技で、攻撃力が1.3倍程度に増えるらしい。SP6ポイント消費の、まぁ安い技には違いない。
初級技と言えど新しい戦力だ、今後は存分に活躍して貰おう。
苦労して崖を登る途中の、まぁ生きた心地の無さと言ったら! 海辺の洞窟でロープを降りた時とは違う、何しろここは推定大物レア種モンスターの狩り場なのだ。
そんな訳で、ファーの示す洞窟の入り口に、何とか滑り込んだ時には心底ホッと胸を撫で下ろした。そしてその人工的な造りの壁や天井に、多少ド肝を抜かれた次第。
ここはひょっとして、遺跡型のダンジョンと言う奴なのかな? 試しに用心して進んでみるが、残念ながら例の『未踏破ボーナス』のアナウンスは無かった。
残念、ちょっと期待してたんだけどな。
と言う事は、既に誰かここを見付けた冒険者がいるって事か。あの巨大キメラに腰を抜かした人が他にもいるって事実は、想像でもちょっと笑える気もする。
同志だよね、ある意味あの地獄を生き残った事は賞賛に値する。それとも単に、別ルートでの発見に至ったって事もあり得るのかも知れない。
それはともかく、この仄かに温かくて薄明るい人工遺跡は新鮮でいいな。誰が何のために造ったかは、全く以て定かではないけど。
何かがありそうな雰囲気、異様な気配に限ってはビンビンである。下の洞窟で肩透かしを喰らった分、こっちは果たして期待出来るのか?
そんな遺跡型のダンジョン内だが、敵は早速チラホラと姿を現して来た。自然洞窟じゃないので、そんなに配置されて無いかなとか期待したんだけど。
とは言え、敵の種類はほぼ見慣れた連中ばかりだった。そのラインナップだが、まずはダンジョン内では定番の敵、スケルトンとスライムに遭遇。
スライムは雑魚だけど、不意打ち的に廊下の天井近くに空いた穴からヌルッと飛び出して襲って来る。それさえ気を付ければ、まぁ何て事の無い相手だ。
スケルトンは2種類いて、片手武器を持ってる奴と弓矢持ちが存在していた。海辺の洞窟でも体感したけど、やっぱり遠距離攻撃はかなり厄介。
自分でも弓術を覚えたいなぁとか思いつつ、距離を一気に縮めて対応するしか現状手立ては無い。ただしコイツ等は、不意打ちとかじゃ無くて普通に廊下に配置されている。
そしてドロップ品も、そこそこ良いモノを落としてくれる。
雑魚では大ネズミも登場したが、どう考えてもコイツ等は勝手に棲みついたパターンな気が。そして雑魚トップ2の大ネズミとスライムは、ドロップが無いに等しい程に貧弱。
その点、スケルトンは錆びた武器や魔石(微小)や骨の欠片、極たまに銀のメダルや錆びて無い武器や防具を落としてくれる。
その中でかなり当たりの部類かなと思えるのが、骨製のナイフ類である。これは投擲にも使えそうなので、俺としては少し数を集めたい所。
現状、投擲に仕える武器は石斧と手槍だけだからね。
――骨の鋭利なナイフ 耐久3、攻+4(投擲可)
普通は気になる、武器の耐久力の低さとかはこの際どうでも良い。弓矢が使えないなら、臨時に遠距離武器の代わりが欲しいだけなので。
出来れば3~4本欲しいんだけど、もうちょっと落としてくれないかな。この遺跡は結構間取りが広そうだから、配置されてる敵の数も多いんだよね。
実際、こんな広いダンジョンは『ミクブラ』を始めてから初のような? だって通路の分岐まであるし、マップ見ながら探索とかいかにもゲームって感じがする。
そしてその節目の分岐点に配置されているのが、小型のゴーレムだった。下で倒した奴より小柄で、その分動きがやや速い気がする。
もっともタフさ加減で言えば、宝箱を守ってた奴の方が数段上だけど。その宝箱の中身はショボかったけど、コイツはただの通せん坊役と言うね。
落とすアイテムも、精々が土の水晶の欠片位のモノで残念な敵ではある。取り敢えず、コイツは硬い敵を倒すための練習台だな、うん。
付与魔法を武器に掛けて、弱点的な部位は無いかと色々と殴っては感触を確かめる。結局この試みは失敗に終わり、特に弱点らしき場所は発見出来なかった。
顔とか股間とか殴っても、平気の平左っぽい魔法生物である。
この遺跡の通路や壁は、しっかり人工物で場所によっては紋様とかも入っていた。用途不明のスリットや、通風孔のような穴も一定間隔で窺える。
そこからスライムが出て来たり、下の穴は大ネズミが通路に使っていたり。妙な仕掛けが満載で、最初はそれを織り込み済みで対応していたのだけれど。
通路の奥に進むにつれて、そのスリットから罠の仕掛けが設置されてる事が判明した。まずは単純な、槍や炎の飛び出しトラップが幾つか発動する。
俺は喰らってもダメージだけで済むけど、相棒のファーは体がちっちゃいので本当に危ないな。呑気に飛んでいるけど、スロット前だけは注意してくれよ?
実際に喰らってみた感じだと、罠のダメージ平均は10~20程度かな……今の俺のアバターの体力だと、HPの2割以下なのでまぁ許容範囲内だ。
それでも罠を避ける努力は、勿論頑張ってしてみるのだけど。しかしこの手のトラップ、通路の突き当たりに設置されていて厭らしい造り。
分かれ道もそれなりにあって、事件は2つ目の分岐の先の探索中に起こった。突き当りの小部屋に、小型ゴーレムが宝箱を守っている定番配置を発見したのだ。
意気揚々とそいつを倒し、いざ宝箱をチェックしようとした瞬間。宝箱に興味津々のファーが、その上に乗って何かを作動させてしまった。
噴射される霧状のナニかと、それを思い切り浴びてしまうお気楽妖精。
――うおっ、とうとう恐れていた事態が起きてしまった!?




