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ミックスブラッドオンライン・リメイク  作者: 鳥井雫
始まりの森編

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夜の狩り場に潜むモノ2



 それは置いといて、戦況は一進一退の繰り返しと言うなかなかの好ゲーム。自分で言うのもアレだけど、こっちが霧のゴーストを倒す度にお替わりが出現する。

 これは不味いなと思い始めたのは、このイタチごっこが3分を過ぎた辺りから。この付与魔法は5分しか持たないので、どこかで掛け直さないといけなくなる。


 そんな隙など見せたくはないし、それまでに何とか倒せないかな? そして気付いたのは、敵本体のHPの減り具合だった。

 どうやらこの人魂ユニーク種、霧ゴーストを吐き出す度に自身の体力を削っているっぽい。なる程そう言う仕掛けか、ちょっと気力を持ち直せそう。


 いつの間にか例の怖い顔の霧ゴーストも、5匹目のお替わりを数えていた。それにつれて、本体の人魂の体力も半分以下へと自然減少を遂げている始末。

 ここらで時間短縮に、人魂本体にも攻撃を加えたい所なんだけど。などと考えていたら、ついに短槍に掛けていた付与が消滅してしまった。


 これはピンチと、時間稼ぎの《フラッシュ》を咄嗟に喰らわせる俺。それからバックステップで距離を置き、再度の付与を武器に掛けようと画策していたら。

 妖精のファーが、この敵もう見飽きたとばかりに光の水晶玉を投下した。思わぬ死角から、弱点属性を突かれた人魂ユニーク種は声にならない絶叫を放つ。


 ちなみにその時に限って、3匹まとめて出現してた付属のゴーストの絶叫は凄かった。光の水晶玉の爆発は、そんな壮絶な状況を造り出したと思ったら。

 あれほどに強敵だった人魂ユニーク種は、呆気無く成仏してくれた模様。何だこの(いさぎよ)い結末、いや尻切れトンボみたいな幕引きは!


 ファーは1人宙でガッツポーズ、いやいや確かに大したモノだけど。一応システム上では、俺が倒した事になっているようで良かった。

 つまり経験値とスキルPは、無事に(あるじ)のこちらへと計上されたっぽい。そうでなければ、1時間の説教コースだったよ、ファーさんっ!?


 何となくホッとしながら、スキル2Pを有り難く頂戴する。そして待望の討伐ドロップだけど、確かに琴音の言う通りに通常レア種とは全然違うラインナップ。

 止めを刺したのはファーなのに、何だか申し訳無いな。


 とにかく確かに、一風変わっているとは思う。『炎の術書』はともかくとして、『幸運の果実』とか『幽霊の呼び水』とか。果実系はステアップだから、これは幸運値が上がる訳だ。

 ステの中でも滅多に上がらない幸運値を上げる果実、売りに出せば高値が付きそう。呼び水は確か、レアモンスター出現のトリガーアイテムだったかな?


 確か学校で、誠也か誰かの『ミクブラ』ベテラン勢に聞いた覚えがある。自分の好きなタイミングで、レア種との戦闘が出来るお得アイテムだと。

 そしたらまたスキルPとかアイテムが、手元に転がり込む素敵サイクルじゃないか。凄いお得感、ちなみに呼び鈴がお助けモンスター召喚アイテムだった筈。

 似てるから間違えないでねと、琴音に言われた記憶がある。


 ドロップにはまだ続きがあって、多分当たりの『命のロウソク』と炎魔法の《キャノンボール》の2つ。『命のロウソク』は、使用するとHPが永続的に上がるとの説明文。

 それって普通に凄いお得、ユニークモンスターってサービス旺盛だなぁ。さらに《キャノンボール》は、何と中級の範囲炎魔法らしい。


 これは普通に強そうな魔法をゲットしてしまった、さてどうしよう? つまりは、新たに炎魔法を覚えるかどうかって話なんだけど。

 とは言え、さっきスキル7Pを使って魔法を2つ覚えたばかりである。そんなにバンバン消費は出来ない、ここは一旦(いったん)自重しようか。


 とにかく、『幸運の果実』と『命のロウソク』は早速使ってアバターの強化を進める事に。それから、炎の術書と《キャノンボール》は保留って形で。

 結果、幸運値は+1されてHPは10も上昇してくれた。レベルアップ時の増幅値と同じ程度上がってくれた模様で、これはちょっとしたボーナスだな。

 戦闘後の休憩を挟んで、そんな感じで自己ステータスチェックも終了。





 それにしても……トドメを持って行かれると、横取りされた感が半端無いな。別にファーを(うら)むつもりは無いが、欲求不満がフラストレーション。

 いや何を言ってんだか、つまりは発散する相手をさっきから探してるんだけど。大ネズミの集団はもう飽きた、もっと食いでのある敵を所望する!


 そう思っていたら、狼の遠吠えが夜のしじまに響き渡った。呼応するように、別の場所からも……おっと、鳴き声から察するに案外と近いのかな?

 狼は夜も出現するらしい、当然な気もするがまぁゲーム世界だからね。ゲーム内の常識って、自分には未だに備わっていない気がする。


 それはこのゲームを進めて行く上で、俺にとっては大きなマイナスには違いない。それでも積極的に、ネットやベテランから情報を取得しようとも思わない。

 あるが(まま)を受け入れる、それがゲームでも何でも長く楽しむコツだ。


 それより敵の群れは多そうなので、武器を棍棒にチェンジする。それから闇夜の支配している森を、じっと眺めやって敵の出現する気配を探る。

 《Dビジョン》での視界に限っては、すこぶる順調で良い感じ。そんな敵の群れだが、こちらの隙を窺っているのか、なかなか近寄って来ようとしない。


 どうも森の茂みを揺らしながら、数匹が円を描くように包囲網を形成している。いやまぁ、包囲されてる獲物は俺なんだけどね?

 下手に動くとド壺に()まりそうだし、ここは敵の襲撃にカウンター作戦かな? そう思って待機していると、まずは後方から動きがあった。


 まずは数匹の狼が、時間差を置いて藪の中から飛び出して襲い掛かって来た。慌てず迎え撃つ俺、まぁ予測の範囲内の行動だし焦りなどない。

 棍棒で反撃しつつ、SPが貯まったら《撃ち上げ花火》でトドメのパターン。もちろん数匹にたかられた場合は、範囲技の《ブン回し》の出番である。


 そんな感じで、いつの間にやら敵の数は残り2匹に減って行った。向こうはかなり怖気付いた様子で、再び遠巻きになって襲って来ようとしなくなった。

 こちらは毛皮を大量ゲット出来たし、別に端数は見逃してもいいんだけど。などと思っていたら、ファーがいきなり警告を発して来た。


 彼女は言葉を(しゃべ)れないので、自分の視界に強引に割って入るいつもの方法である。慌てて周囲を見回すが、ソイツは何と上空から奇襲を仕掛けて来た。

 大きな翼と真っ黒な肢体、こちらに《Dビジョン》が無ければやり難い相手だったろう。先制を取られて慌てるも、雑魚の狼たちはいつの間にか逃げ去っていた。


 つまりは数的には公平な1対1だ、まぁ敵は宙を拠点としているけど。しかもソイツは、何と今夜2匹目のレア種……変異コウモリが、まさかの横ヤリ出場である。

 全くどこから湧いたんだ、こっちは夜の森の散歩を楽しんでいただけなのに。いやちょっと違うな、索敵を含んで楽しんでいたから良いのか?


 しかし夜の森って凄いな、少し歩いただけなのにレア種の宝庫じゃないか! などと感心している場合では無い、敵の強さは未知数なのだ。

 戦闘エリアは既に形成されてしまったので、逃げ出すにはかなり手間取るだろう。迎撃の一手なのだが、宙を飛ぶ敵はかなり厄介だ。


 戦闘蜂との戦いも、真上を取られたりすると割と酷かった。ただしアイツ等は、基本の移動は一定の高さを水平移動が基本だったりする訳で。

 ところがこの変異コウモリ、飛び方がかなりランダムで狙いが定めにくい。通常タイプの蝙蝠もそうだったかな、奴らは大抵群れていたので気が付きにくかったけど。


 今いるこのレア種は、その数倍の大きさで大迫力の一言。実際、ファーでなくてもコボルト程度ならお持ち帰りされそうな大きさを備えている。

 おっと、ファーで思い出した……そう言えばさっきのレア種の止め刺しは、このやんちゃな相棒に持って行かれたんだった!


 今度こそ俺が止めを刺すぞ、なかなかの強敵だけど自傷なんか構ってられない。コイツはかなり強力な《吸血》と言う特殊技を備えていて、さっきこちらのHPをゴリッと吸われた。

 相手はそれで回復するので、闇魔法の《Dタッチ》と効能は一緒だな。


 暗闇効果は付かないけど、相手の回復技は相当きついのは確か。回復を繰り返されると、必死に削っている意味が無くなってしまう。

 しかもヒット&アウェイの戦法は、こっちが連続で殴れなくて(いら)つく。大技を当てたいが、その後逃げられれば続けての追い込みが出来ない訳で。


 どうしようかなと思っていたら、向こうから先に特殊技を仕掛けて来た。《超音波》でのダメージ込みのかく乱、前後不覚でこちらの攻撃は空振りの憂き目に。

 うおっと、本当に真っ直ぐに進めないし頭クラクラ状態だ。昨日の視ザル戦の失敗を踏まえて、ベルトのポッケに万能薬を入れてるんだけど使うべきか?


 ただこの薬、未だに交換チケットでも貰えてないし、割と貴重な気がするんだよね。その場にしゃがみ込んで、変異コウモリの次の襲撃に備えつつ。

 反撃の機会を窺いながら、じっと自然回復を待ってみたり。


 ファーが心配そうに近寄って来たが、俺は大丈夫と手の平で心配ないよの合図。闇夜の森の中に、拡がる緊張感と独特な大コウモリの羽ばたきの音。

 しゃがんでる俺にチャンスと思ったのか、真上からの襲撃がやって来た。その接近間際、今度は俺の手番とばかりに反撃の一手を見舞ってやる。


 一気に立ち上がって、今の間に交換した短槍を思い切り相手に突き刺してやる。身体の勢い込みでの一撃は、見事に変異コウモリの脇の辺りの皮膜を突き破った。

 結局は万能薬を使用しての、準備万端の待ち伏せ攻撃である。夜に適応したモンスター、しかもレア種を舐めるような真似など出来やしない。


 激しく暴れる変異コウモリの、割と怖い感じの顔と牙の並んだ口元。単にその場の思い付きで、俺はその口の中にポーチから取り出した光の水晶玉を投げ入れた。

 すると派手な炸裂音が、飛び立とうと踏ん張っていた変異コウモリの体内から響き渡った。


 そのまま二度と飛び立つ事無く、手強かった暗闇のレア種は没と言う流れに。まぁ良かったな、手柄をファーに取られなかっただけでも上出来だ。

 そしてスキル3Pと、ドロップ品を得たと言うアナウンスが。その大半は素材系で、闇蝙蝠(コウモリ)の牙と皮膜、それから定番の魔石(小)と闇の水晶玉×4個。

 最後に、用途不明の『飛竜の血』と言うアイテムをゲット。



 この飛竜の血って、ひょっとしてあの西の断崖を飛んでた奴のだったりするのかな? それを気付かず吸えるとか、何か凄い生物だなぁ。

 それはともかく、今夜2匹目のレア種討伐……魔法スキル取得に使ったスキルPが、あっという間に戻って来た。今度は何を伸ばそうか、ウキウキなのは置いといて。

 この先の探索も、充分に用心した方が良さ気な雰囲気。





 ――そんな感じで気を引き締め直して、夜の散歩を続けようか。








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