北の樹海と妖怪モンスター1
妖狐の攻撃パターンは、言ってみれば実にシンプルだった。距離が離れれば狐火飛ばしで、間合いが近くなったら噛み付きとか飛び上がり体当たりって感じだ。
魔法扱いの遠距離攻撃に関しては、鎌鼬の方が強かった気がする。両方とも見事に喰らった俺が言うのだ、間違いはないと思う。
ただし近距離攻撃の威力は、妖狐に軍配は上がる感じかな? 体格も妖狐の方が一回り大きいし、体力もその分だけ多かった気がする。
とにかく何とか倒せたモノの、この北の森の妖怪軍団は一癖も二癖もあると実感した次第。待ち伏せ上等で、攻撃方法も多岐にわたると言うか。
遠距離系の攻撃魔法っていいなぁ、喰らってみて初めて実感するその有効性。こちらは射程の短いのと、足止め魔法しか今の所は所持していない。
風や炎系の魔法を伸ばして行けば、その内に手に入るかなぁ?
肝心の敵のドロップだけど、鎌鼬も妖狐も牙や毛皮の類いは全く落とさず。その代わりに風の水晶の欠片や炎の水晶の欠片、それから魔石(微少)と言うアイテムをドロップした。
何となくだけど、水晶の欠片は範囲攻撃の水晶玉に加工出来るんじゃないかなと想像。魔石の類いは、お金の代わりだったり合成に使えるんだったかな?
とにかくモノが小さいので、鞄の場所を取らずとても有り難い。
それはそうと、ダルマ狩りに夢中になっていたせいで、地図のチェックをすっかり忘れてしまっていた。虹色の果実の回収を、そろそろ念頭に入れておかないとね。
安全地帯に戻る予定も、しっかりと活動時間の中に入れておかないと。後で大慌てする破目になってしまう、以前ヤッちまった失態だから尚更慎重に行かないとね。
そんな訳で、地図と睨めっこして虹色の果実の予想地点を割り出してみる。ってか、やっぱり“樹海”の中央付近にあるんだろうなぁ。
樹海の大きさが判然としないが、地図の情報から割り出すとおおよその見当は付く。好き勝手に動き回っていたから、今は東方面に多少ずれている感じだろうか。
半分はファーのお茶目のせいとは言え、少し行けば中央付近に到達出来そうな好位置である。良かった、これも幸運の導きの為せる業だろうか?
冗談は置いといて、さてそれでは怪しい場所を探そうか……今までの経験から言って、1本だけ目立った樹が生えていたりするんだろうな。
とにかくこの樹海は、なかなかに油断がならない。移動が厄介だし視界は悪いし、その上不意打ちが得意な敵が至る所に潜んでいるのだ。
残り時間は気になるけど、ここからは更に気を付けながら進む事にしよう。進むべき方向を定めて、俺たちはそちらへと慎重に移動を始める。
それより先程の失点を気にした妖精が、やけに収集に力を入れてるのが気掛かりだ。少し叱り過ぎたかな、あまり離れ過ぎないように注意しておこうか。
と思った矢先、ファーったら変な色合いのキノコを採って来た。
「おおっ、何か凄い奇抜な色合いだな……食べられるのか、コレ?」
俺の戸惑ったコメントに、妖精も首を傾げてさあ? ってなゼスチャー交じりの返答。君キミ、食べられないモノを採って来るんじゃありません。
うん、説明欄を読んでみても不明食材としか書かれてない。見た目で判断をするなら、完全に“明らかな毒キノコ”なんだけどなぁ。
ひょっとしたら食べられるのかも、自分は無理に食べようとは思わないけど。ファーはちょっと不満そう、まだまだ向こうにいっぱいあるらしい。
とにかく彼女は、自分の得た収穫物を褒めて欲しいっぽい。そうは言っても、連れられて来たこの空間……毒々しい色のキノコとか、やたら大きなカタツムリしかいない。
いやいや、カタツムリを捕獲しろって……そもそも君は肉食と違うでしょう? これも食材らしいけど、俺だってこんなの食べたくない!
妖精はちょっと残念そう、何でだっ!?
気を取り直して再度収集に励んだ結果、ファーは普通に食べられそうな果実類と、割と素材に良さ気な木切れ類を発見してくれた。
良かった、これならちゃんと褒めてあげられるよ! ちなみに、さっきの食材用(?)カタツムリは、ちゃんと野に放ったので安心を。
束の間妖精が、突いたり持ち上げたりして遊んでいたけど。フランス人で無い俺は、それを見て美味しそうとは全く思わなかった。
いやでも、架空世界だし試してみる価値はあるのか?
そんな下らない事で1分少々悩んでいたが、残念ながら試す時間は無かった。さっきまで止んでいた妖怪の襲撃が、再び断続的に始まったのだ。
魔除けの香炉を使えば休憩も取れるけど、やって来る経験値をむざむざ逃がす手は無い。まず目に入ったのは、初見の植物系のモンスターだった。
てか普通に根っこを足代わりにして歩いてますけど……洞が目と口に見えるのは定番、蔦を伸ばしてこちらを絡め取ろうとして来る。
射程内に入ると不味いので、止む無く移動するとして。どうやら見事におびき出された様子、俺が背にした捻れ大木から、大量の何かが降って来た。
慌てて確認すると、そいつ等は薄青色染みた妙な色のヒル型モンスターだった。どうでも良いけど、コイツと植物タイプは妖怪カテゴリーでは無いような?
ただし、身体にくっ付いてるヒルはどうでも良いなどでは済まされないっ! ソイツはみるみる、朱色に色を変えてふっくらと膨らんで行った。
思いっ切り血を吸われてますけど……いや、減ってるのはMPも同様みたい。つまりコイツ、体力と魔力を同時に吸ってるみたいだな。
これは嫌な敵だな、その分機動力は無いみたいだけど。後ろの腰の付近に貼りついてるので、振り落とそうにも武器の狙いがつけにくい。
その内に、貼り付けなかった奴らもジャンプで再挑戦を敢行して来た。しかも植物型モンスターのトレントも、樹林を縫ってこちらに近付いて来た。
これはピンチと思いきや、慌てていたのはファーも同様だったらしい。躊躇なく水晶玉を使用して、貼り付いていたヒルを取り外してくれた。
おやっ、今日は俺……水晶玉を渡してないけど、何で持ってる? 何しろ昨日の激戦で、水晶玉は綺麗に使い切ってしまっていたのだ。
俺が今持っているのは、海賊レア種の落とした闇の水晶玉が数個だけ。ひょっとして精霊に貰ってたのは、この光の水晶玉だったのだろうか?
とにかく、この隙を逃すと相棒に笑われてしまう。まずは地面に落ちたヒルの群れを、モグラ叩き宜しく棍棒で順番にノシて行く。
このヒル型のモンスターは、幸いHPは低い敵らしく簡単に倒れてくれた。よしっ、これでトレント到着前にフリーになれそうだな。
――後は、割と大きな樹木型モンスターをゆっくり倒すだけ。




