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海辺の洞窟・隠し通路2



 困った時の琴音頼りだが、今回は切羽詰まったメール送信だったのは仕方が無い。返事は割とすぐに帰って来て、理由はそれで呆気なく判明した。

 何とミックス(ブラッド)の宿命だと書かれていて、つまりはそう言う事らしい。どうやら混血度が高いと、成長が速い代わりにスキルPの入手が減る事態がたまに起こるのだとか。


 以前琴音(ことね)の言っていた、ミックスBの怖さと言うか弊害だ。逆に純血種の場合、成長が遅い代わりにステータスやスキルPがたくさん増える事があるらしい。

 そう言うゲームバランスらしいので、文句を言う筋合いでは無いっぽい。そんな訳で落ち込んでもいられない、とにかく探索を続けないと。


 って、余りのショックで本題を忘れる所だった……新たに両手棍のスキルを取得しようと思ってたんだっけ、そうそう4P支払ってと。

 そんな訳で、今回覚えた必殺技は《撃ち上げ花火》と言う名前らしい。アッパー系の打撃を敵目掛けて撃ち込むみたいで、威力は当然通常の攻撃よりは高い筈。


 よしよし、今回は派手な必殺技を取得する事が出来たな。気を取り直して早速使ってみよう、こうなると松明を持つのももどかしいよね。

 何故なら、棍棒のスキル技は両手で持たないと発動しないから。そんな事を思っていると、続きの洞窟の前方に陽の明かりらしきものが見えた。


 洞窟の左の壁に亀裂が入っているみたいで、うっすらと陽が射しこんでいる様子。完全に周囲が見渡せる程の光源では無いが、さっきまでの暗い洞窟内よりは遥かにマシだ。

 それを素直に喜びながら、俺は真っ直ぐその場所を目指す。


 てか、さっきから雑魚のモンスターすら出て来なくなってるんですけど? こっちが、新スキル技を試したいなあって思った途端にこれだよ。

 まったく、こちらの心の中を読んでいるような敵の配置には腹が立つ。実際そんな事は無いんだろうけど、その広場はちょっと異質だった。


 潮の匂いと(かす)かな陽光、その中央に(そび)え立つどこかで見た葉を茂らせる一本の樹。あれあれ、これって『虹色の果実』の()れる樹じゃないか?

 ファーが早速飛んで近付いて、すぐにピュッと言う感じで戻って来た。何らかの危険を察知したらしい、それと同時に樹の上の一点を指し示しての警告。


 そこに目的の果実があるのか、はたまた待ち伏せしている敵がいるのか……恐らく両方だろう、そんな気がして俺は戦闘準備を開始する。

 今度は不意打ちなどに驚いてやるモノか、逆にこちらから驚かしてやる。まずはずっと出番の無かった、投擲用の石斧を手に取って、と。


 そしてスキル4Pでの投擲をお見舞い、投げ込む先はファーの適当な指差し案内のみ! それでもその成果は絶大、当たったナニカが派手な音と共に樹の上から落ちて来た。

 凄いぞ俺、投擲攻撃で外した事無いんじゃないかっ!? それより落ちて来た脅かし役の大蛇、悲惨な事に既にHPが半分しかない有り様。


 可哀想に、すぐに成仏しておくれと初使用の《撃ち上げ花火》をお見舞いしてやる。怒涛の連続攻撃に、哀れな大蛇はこちらをタゲる事すら適わず。

 ふむふむ、確かに軌道は下からの(すく)い上げ攻撃だな。何だかアッパースイングの打者みたい、もしくはゴルフのショットに似ている。


 当たった瞬間、何か火花が飛び出すのが可愛くて良いな。面白いダメージエフェクトは良いとして、その攻撃力も結構えげつなかった。

 さすが両手武器の必殺技だ、可哀想過ぎる大蛇は既にヘロヘロ状態な有り様。そしてこっちは噛まれる事無く、無傷で倒し切ってしまう結果に。


 もうちょっと新しく覚えたスキルを試してみたかったけど、まぁ仕方が無い。打撃後の硬直時間も、範囲技の《ブン回し》と同じ程度だろうか。

 一撃の強さは、やはり新スキルの方が強いと思った。技を受けた相手も一瞬硬直するので、囲まれていない限りはそんなに隙が出来るとか気にせずに済むと思う。


 必要SPも10と、範囲技よりは軽くて済んでるのも良い点かも。レベルアップによって、俺のアバターのSPも順調に増えているしね。

 連続使用も恐らく問題無い、ただし振り上げた棍棒をいったん下に降ろす時間は必要だけど。それより石斧投擲も、初めて使ったけど良い感じだな。


 効果も高いし、強敵や複数の敵相手には初撃はこれでって手もアリかも。もちろん木の槍もあるし、水晶玉ももう少しストックはある。

 戦闘に関しては、まだまだ戦術は拡がりそうな気はする。




 おっと、それより肝心の虹色の果実は()ってるのかな……松明をかざしてみるけど、木の葉が重なって樹の上の方は良く見えない。

 ここでゲット出来れば、待望の3個目なんだけどな。そう思っていたら、働き者のファーが再びフワッと飛び上がって行った。


 本当に頼りになる相棒だ、こちらは固唾(かたず)をのんで見守るだけ……おっと、戻って来た。ってか、不必要に慌てているのはナゼ?

 その小さな両腕で必死に抱えているのは、まさしく虹色の果実だった。喜んだのも束の間、妖精のファーを追って2体の飛行生物がこちらに接近して来る。


 うおっ、やたらと大きな甲虫だなっ! それを目にした俺は、松明を投げ捨てて慌てて臨戦態勢に入る。どうやらレア種でも何でも無い個体のよう、多少は安心して迎え撃つ準備。

 そうして棍棒で殴り掛かった途端に、手が痺れる程の衝撃……コイツ無茶苦茶硬いな! こちらも交差した瞬間、角で(えぐ)られて少なくないダメージを受けてしまった。


 クソッ、大蛇を始末して安心していた所に不意打ちとは敵もやりおるわい。少々余裕があるのは、敵の表示を見て通常モンスターだと判明したから。

 いや、断崖の樹の上で大蛇に苦戦した例もあるから、(あなど)ってる場合じゃないんだけどね? それでも『大猪』『大蛾』のレア種2体との戦闘を経験した手前、俺にとっては騒ぐほどの相手では無い。


 戦闘訓練を踏まえつつ、せっかく2つに増えたスキル技を連続して使ってみる。何事も鍛錬だ、SPはフルに貯まっているのでイケる筈。

 まずは2匹が重なった瞬間を逃さずに、両手棍の必殺技|《ブン回し》を振る舞ってやる。狙い通りに両方にヒット、こちらも傷を負うが(ひる)まずに次の打撃に備える。


 攻撃を受けた敵は、逃げて行く個体と突っ込んで来る個体へと分離。その内の、突っ込んで来る甲虫に狙いを(しぼ)って、思い切り《撃ち上げ花火》を喰らわせてやる。

 こちらも見事にヒットして、硬そうな敵相手にもダメージも上々。連続スキル技の凄さを体感して、俺もテンション爆上がり中である。


 両方喰らった甲虫は既に虫の息、いや元から相手は虫なんだけどね。そいつは何とか生き延びようと、戦闘空域をヨタヨタしながら飛び去って行く。

 これで魔法でもあれば、追撃で華麗に撃ち落とせるのに残念な限り。早くこのクエを終わらせて、失った魔法を取り返したいモノだ。


 レベルアップに伴って、体力もそれなりの上昇を見せた結果。この程度の敵の攻撃では、戦闘途中に慌ててポーションを使用するピンチには至らなくなった。

 もう少し装備を整えれる事が出来れば、更に安全に戦いを進められると思うんだけど。今の所、装備を買う場所もその資金も無いと言うもどかしさ。

 その辺は焦ってもどうにもならないし、地道に行くしかないか。



 戦闘は何度かの交錯の果て、硬かった甲虫も無事に撃ち落としに成功した。素材らしき『甲虫の甲殻』は硬そうだし、装備のパーツに使えるかも知れない。

 『甲虫の角』の方は……う~ん、悪くは無いけどこの形は振り回すのに恥ずかしい。ってか、こちらも硬くて良い素材だが、武器に持って歩くのに勇気がいりそう。


 何故そう思うのかは不明だが、形状にオモチャ感が(あふ)れ出てる気が。まぁいいや、また何か思い付いたら合成素材に使ってみよう。

 それより順調過ぎな、虹色の果実の収集である。ファーがはいっと渡してくれて、1日で2個集まると言う快挙を成し遂げてしまった……いいのか、本当に?


 まぁ良い事にしよう、今後どうなるか分からないし保険的な意味合いも兼ねて。それよりこの先の道はどうなってるのかと、俺は薄暗い洞窟を透かし見てみる。

 おやおや、まだ先は続いてるみたいだな。


 洞窟は次第に広くなって、天井と言うか壁面の亀裂も何か所か存在していた。そのせいか、潮の匂いと打ち寄せる波音がその隙間から響き入って来ている。

 この明度なら、松明が無くても何とか進めるかな? それよりその薄闇の中で、(うごめ)く影がさっきから気になっているんだけど。


 そいつ等は結構な数がいるけど、決して日向(ひなた)には出て来ようとしない。そいつ等の形状を説明すると、血の底から響くような呻き声と潮とは違うすえた臭い。

 血色は良くない、と言うか恐らく既に血は通っていないのだろう。





 その習性も納得出来る――奴らは軒並み、ゾンビだった。








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