表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/26

海辺の洞窟・隠し通路1



 なんとまぁ、あんな場所に抜け穴が存在するなんて……自由に飛べる妖精のファーでなかったら、まず見つけられなかっただろう。

 その結果、依頼達成ならずで再び(カラス)モドキにこの洞窟に押し返されていた可能性も。そんな事にならずに済んで良かった、少々登攀(とうはん)が必要だけど何とかなるかな?


 凸凹(でこぼこ)のかなり多い岩壁だから、慎重に登って行けばあの横穴に辿り着けそう。ここは1つ、依頼達成の為にもうひと踏ん張りだなぁ。

 ファーにお礼を言いつつ、俺はまだ敵のいそうな横穴へと苦労して辿り着く。物理的にファーが松明を持てないので、登攀中の灯り対策には相当に苦労した。


 懐中電灯とまでは言わないが、ランタンみたいなモノは欲しいかも。松明は燃えてる炎の部分が()き出しだから、取り扱いにどうしても慎重になってしまう。

 まぁその分、振り回せば武器にもなる利点もあるけど。


 要するに、登攀中の武器兼明りとして松明を使おうと思っていた訳である。幸いそんな不利な状況での襲撃は起きず、まずは安心して横穴の平地に到着出来た。

 それから松明を掲げて奥を窺うと、(かす)かに妙な音が聞こえて来た。何だかドロッとした液体が流れるような、ゴボッとかそんな低い響き。


 海辺の洞窟なので空気は湿っているが、水の流れる音ともちょっと違う気が。音の発信源を探っていると、地面の(くぼ)みに妙な軟体生物を発見した。

 先程の広間のアメフラシモドキとも違う、コイツはひょっとしてあの有名なモンスター? ってか、スライムに遭遇して感動するなんて妙な話ではある。


 スライムは、勿論(もちろん)だが架空の軟体生物である。某初期RPGで有名になっただけあって、俺もそのモンスターの存在は知っている。

 琴音が子供の頃に、クラシックゲームにハマっていた時期があったのだ。そのせいで、俺にも随分熱心に色々と教えてくれたりしたモノだ。


 モンスターの設定としては秀逸だと思う、消化器官が外に()き出しなのはアレとして。何でも体内に取り込んで消化してしまうと言うのは、敵として対面すれば怖いのかも?

 いや、果たして本当にそうなのだろうか……動き自体はそんなに速くないし、待ち伏せ以外は餌を捕らえる能力は(いちじる)しく低い気がするのだが。


 軟体を利用して壁の隙間から(にじ)み出るのは脅威だが、体内器官ってばそもそも弱点じゃないのか? 松明の火を近付けてみると、案の定怯みまくる軟体生物。

 やっぱり火は弱点か……妖精のファーも、興味深げに近付いて観察している。君はもうさっきの事故を忘れたのか、危ないから不用意に近付かない様に。


 とにかく実験は続く、女王蜂の短槍……は壊れちゃったんだっけ。ナイフを取り出し、その切っ先で透明な器官を傷つけようとするが、ゼリー状のソレは上手く切り裂けない。

 どうやら斬属性には、微弱ながらも耐性があるようだ。


 これは突攻撃も無理かな……いやいや、中央の核が分かり易い弱点だったみたい。それをナイフで突き刺すと、呆気なくスライムは昇天してしまった。

 代わりにこちらも、表皮を触ってしまってダメージをちょびっと受けた。確かに触るだけでダメージは厄介だけど、弱点が分かり易いのは完全にカモだなぁ。


 動きも鈍いし、肌に直接取り付かれなければ何て事は無い敵には違いない。まぁ、不意打ちだけ気を付ければ問題にはならないだろう。

 雑魚だけあって経験値も少ないだろうし、構うだけ時間の無駄かも。




 そんな感じで横道を進んで行くと、穴の幅は段々と入口から広くなって来た。そしてすかさず、さっきと同じ蝙蝠(こうもり)の襲撃がやって来る。

 ってか、さっきより敵の数が倍近くて対処が大変なんですけど! 視界がコウモリの翼で埋められて、耳から入る情報も奴らの羽音のみと言う酷さ。


 こちらは棍棒を振り回し、奴らの撃ち落としを頑張るだけ。ファーの安否が気掛かりだ、身体が小さいので連れ去られて無いと良いけど。

 それよりこれだけ密集していると、狙いを定めなくても敵に攻撃がヒットする。それでも、こちらもすれ違いざまに少なくないダメージを受けていたり。


 それに(あせ)って、変に動き回って相手の体当たりを避けようとしたのが不味かった。どうやら俺の足元に、大きな窪地があったみたいだ。

 松明も同様に振り回していたので、そこに落っこちるまで全く気が付かなかった。落下と言うか転倒ダメージは、恐らく無かったように思う。


 それより妙な感触にド肝を抜かれ、しかも急に息が出来なくなったパニックに襲われる。それがスライムが密集して作られた池だと気付いた時は、既に遅かった。

 慌てて武器を捨てて、顔にひっ付いている奴を取り()がそうとするも。当然の(ごと)く全く手応えが無く、指ではどうやっても掴めないのが分かっただけ。


 後から考えれば、松明で攻撃するのが正解だと気付いたのだけれど。パニくっている状態では、そんな思考も働かないのが当然だと思う。

 視界が変に赤いのは、HPが危険域を知らせるアラームだったか。


 ほとんど生き延びるのを諦めかけた時、俺の視界が更に赤く染まった。それから派手な破裂音と、炎のエフェクトが周囲に拡がって行く。

 それと同時に、嘘のように窒息感が収まったのに気付いた。どうやらファーが、炎の水晶玉を投擲してこの窮地を救ってくれたようだ。


 それよりついさっきまで(あなど)っていた敵を相手に死に掛けるとか、どう仕様も無く恥ずかしい。猛省しつつ、必死()いて窪地から脱出を図る俺である。

 それから近くを飛んでいたファーにお礼を述べて、投げ捨てた棍棒を慌てて拾い直す。それから何とか落ち着きを取り戻し、洞窟内を飛び交っている残りのコウモリの群れを駆逐する。


 下手に動かず、すれ違いざまを殴りつける戦法が功を奏した模様。辛うじてそれ以降は、被害を最小限に戦闘を終えられて何よりだった。

 ホッと一息、後は窪地に残ったスライムを松明で焼き払うだけ。



 さっきから足元で、粘液が移動する音が響いていて心穏やかではいられなかった。さっきの二の舞は御免(こうむ)りたい俺は、敢えて地面からのダメージを無視していた次第。

 お陰でHPは半減以下の酷い有り様、しかも装備の耐久値が軒並み減ってしまっていた。特に上着と靴の数値が酷い、元から粗末な腕装備も同様の有り様。


 装備の替えなど無いと言うのに、今回は本当に踏んだり蹴ったりだ。しかし海辺とは言え、まさかスライムで溺死しそうになるとは間違っても琴音には言えない。

 ファーに水晶玉を渡していて、本当に良かったと過去の俺と小さな相棒に感謝。近くの岩場に腰掛けて、小休止しながら心からそう思う。


 忘れない内に、お代わりの水晶玉を幾つか渡しておこうかな? 笑顔でそれを受け取る妖精は、今や本当に心強い相棒である。

 ついでにエリアで収穫した果実も渡して、お互いにスタミナ回復など。残り時間は余り無いけど、下手に焦ってヘマをするよりはマシだ。


 ついでに休憩時間を使って、パワーアップもしておきたいと思う。まぁ、武器に関しては短槍が壊れてしまったので、両手棍を上げる一択なんだけど。

 早く魔法が使えるようになりたい、そのためには受けた依頼を完遂しなきゃ。


 さっきレベル7に上がったので、またスキルPが増えてしまっている。今日だけで3つも上がったので、その分のスキルを使ってもバチは当たらない筈。

 さてと、それでは4Pを両手棍に振り込んで新たにスキルを取得しようか、あれっ、変だな……スキルPが少ない気がするぞ?


 えっと、この洞窟に入る前に8Pだったのは覚えている。そこから投擲に3P使って、新たな補正スキルを覚えたんだっけ。

 そこからレベルが1つ上がった訳だから、8-3+2で7Pになっていないと駄目な筈。ところが実際は6Pしか貯まってなくて、残りの1はどこに行ったと言う話だ。





 ――ちょっと待って、怖い……バグとかそんな類いの災いだろうか?








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ