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森の精霊からの依頼1



「ふむ、その妖精がお主に与えている、魔法阻害の効果を何とかして欲しいとなぁ……なるほど、しばし考えるから待っていておくれ」

「は、はぁ……」


 森の精霊はそう言うと、しばらく黙り込んでしまった。まるで遠くの誰かと通話している感じ……いやいや、そんなメタな事は無いとは思うけど。

 しかし良かった、妖精の呪いだったと言われないで。どうやら妖精には、《魔法阻害》と言う特性が付いているらしい。そのお陰で、俺は魔法が使えなくなったみたいだ。

 はてさて、この森の精霊の『偉さ』の上限は如何程(いかほど)……?


「……良いだろう、その条件でこちらの依頼を受けて貰おうではないか。ただし、これは飽くまで成功報酬と言う事になる。

 厳しいが、魔法ナシで今回は頑張って貰うが……?」

「おおっ、それはもちろん……って、つまりは依頼と言うのはやっぱり戦闘アリ?」


 どうやらそうらしい、彼の話では海辺の()()()()洞窟内に、悪いモノが棲みついてしまったとの事。それは(よど)みで、悪くすれば森全体に拡散する恐れもあるそう。

 なるべく早急に、その原因となる悪いモノを排除して欲しいとの依頼内容だ。ただ、そこに辿り着くには何か長いロープの様な物が必要らしい。


 そんな訳で、良い感じの物を持ってないかと確認されてしまった。調べてみたが、鞄の中にあるのは木の蔦が少しと『冒険者セット』に入ってた5メートル程のロープのみ。

 (カラス)モドキはしばし考えた挙句、木の蔦をもう少し集めるようにと言って来た。しかも依頼のアナウンス付き、これもクエスト形式となるようだ。


 代わりにロープにして貰えるのなら、こちらも願ったり。早速腰を上げて、俺は近くを探索し始める。ついでに張り切って手伝う、妖精(ファー)のエモノ発見の早い事!

 彼女のお陰で、ほんの数分で目標の長さが溜まってしまった。戻ってみると、精霊ラマウカーンもその手際の良さには満足げ。


 報酬はすぐに渡された、魔法のような所業で木の蔦は頑丈そうな細いロープに早変わり。そして何故か、一緒に500経験値も貰えたとのログ報告が。

 これは手頃なモンスターを、5~10匹倒したのと同じ程度の経験値に値する。得したなと思いつつ、案内を買って出た(カラス)モドキに続いて更に東へと移動する俺達。


 やがて周囲には潮の匂いと波の音が、どうやら海岸線は近いようだ。見知らぬモンスターも出て来たけど、精霊の力なのかこちらに寄って来れないみたい。

 何とも凄いな、こんな事も普通に出来る精霊ラマウカーンって。


「着いたぞ、ここから崖を降りるのじゃ。そこの樹の枝にロープを(くく)り付けて、そこから下へ降りるが良かろう」

「えっ、ここから……マジでっ? うわ~っ、こりゃ凄いなっ。普通に覗いたんじゃ、この下に洞窟があるなんて分かんないや」


 ここの海岸線は何と言うか、20メートル程度の断崖が連なっていて白い砂浜など無縁である。従って、波打ち際で海水と(たわむ)れるのは絶対に無理。

 波の音は聞こえて来るし、敵も海辺のモンスターばかりだけど波打ち際に近付くのは自殺行為だ。この周囲の植生も、松の木が目立って何だか日本の海岸っぽくもある。


 ロープを結べと言われた枝も、ズバリ松の木だったのは確認済み。こんな高所から海にダイブしたくない俺は、入念に結び目チェック。

 海に転落して死亡なんて、ちょっと人聞きが悪過ぎるもんね。


 妖精が先行して、ここに入り口があるよと教えてくれてるのが心強い。割と降りる距離が長い気もするが、あまり下を見ない様に俺はロープを持つ手に力を込める。

 こんな行動にも、ひょっとしてアバターのステータスとかスキルが関わって来るのだろうか? などと考えながら、俺は慎重に断崖をロープと自分の筋力を頼りに下って行く。



 幸い、変な邪魔も妙な不手際も起きずに、俺は無事に洞窟の入り口に到着出来た。そんな安堵も束の間、不気味に広がる真っ暗な入り口と湿気た臭い。

 それもそうか、明るい洞窟なんてこちらの都合でしか存在しないし。困ったな、一応クエ報酬で松明っぽいモノは鞄の中に入っているけど。


 それはそれで、大丈夫なのかなとその効果と有用性を疑ってしまう。だってモロに片手が(ふさ)がるし、敵からしたら恰好の標的じゃんか。

 こっちの居場所を知らせているようなモノだし、向こうは恐らく暗闇が得意だろう。なんて考え込んでたら、妖精が頑張って光ろうとしてくれてた。


 いやいや、そこまで切羽詰まってないから……ってか、君は羽根を震わせて光る事が出来るのか。しかし残念ながら、明るくなる範囲はほんのちょっと。

 元々のサイズが20センチ程度だから、それは致し方が無い。取り敢えずはお礼と感謝を述べておいて、俺はいそいそと鞄から松明を取り出す。


 散々と考え込んでも、これだけ暗いと流石に何も出来ないからなぁ。そうしていざ灯りで照らされた洞窟内は、海水の侵入でかなりジメジメとしていた。

 ひょっとして、潮が満ちるとここは海の中に沈没してしまうのかも知れない。そうなると滞在時間も気にしないと駄目になるし、ちょっと厄介かも。


 でもまぁ、プレイの4時間縛りも元々あるし、関係ないと言われればそうなのかも。そんなに深くない事を祈りつつ、俺とファーはいざ奥へと進んで行く。

 そして一歩踏み出した途端、異変は訪れた……ってか、いきなり聞き慣れないアナウンスが。『未踏破ボーナス』なるモノが貰えたらしい、1000経験値とスキル『地図形成』って何だ?


 他にも薬品箱と、『水の術書』に加えて《水中呼吸》と言う水呪文のカードが。薬品箱にはポーションパウダーとかマナパウダー、それからスタミナパウダーや万能薬のセットが。

 何か凄いな、ってかパウダーってどう使うんだ?


 水の術書は、どうやら水スキルを1P上昇させてくれる使い切りの本らしい。呪文カードは2個目なので、まぁ保留……ってか、この先《水中呼吸》を使う必要が出て来るのかな?

 『地図形成』は、どうも冒険スキルと言うカテゴリーらしい。有用そうだが扱い方が要領を得ないので、琴音にメールを飛ばして質問する事に。


 薬品系のパウダーに関しては、説明を読んで何となく使い方は理解出来た。つまりはこれ、丸いボールの中に粒子状の薬品が入っているらしい。

 戦闘中にも使いやすいように改良されたもので、握り潰して身体にふり掛ければ効果があるっぽい。その代わり、回復量はそんなに高くないとの事。


 それでも有り難い、早速幾つかズボンのポッケに突っ込んでおく。使わない薬は元の薬箱へ、だって出して収納すると鞄の容量を圧迫しちゃうから。

 ってか、今更気付いたけどスキルPが結構貯まってる!



 危険と不安が満載っぽい洞窟探検の前に、パワーアップを忘れるとは何たる失態。さてどうしよう、どれにポイントを振り込もうか?

 魔法スキルは論外として、予定通りに短槍か棍棒を伸ばすか……投擲もアリだな、うん。投擲はいつもピンチを救ってくれてるし、前に入手した石斧もまだ使えていない。


 よしっ、ここは投擲に3P振り込んでスキル取得してみようか。って意気込んだのは良いケド、実際に入手したのは《投擲威力20%up》と言う微妙なモノ。

 これはどうも補正スキルらしく、説明文を読むと常時発動が売りらしい。つまり必殺技みたいな瞬発力は無くて、それでも下手な攻撃スキルを取るよりはマシみたい。


 琴音がそっち系のを先に入手したらしく、そんな事を話していた記憶がある。もちろんそうだ、例えば攻撃力倍加の補正スキルとかあれば派手な必殺技など必要ない。

 いや、必殺技は戦闘にメリハリがつくし、派手なアクションとか嫌いでは無いんだけどね。そんな事より、これで一応準備は整ったかな?


 片手に松明を掲げ、利き腕には棍棒を持って何とか格好はついている筈。それよりも、左右のズボンのポッケに入っている、パウダー系の薬品と投擲用の水晶玉が心強い。

 おっと、ファーにも水晶玉をお裾分(すそわ)けしておこうっと。


 この先の暗闇に、何が潜んでいるかなど全く分からないからなぁ……視界の悪い洞窟内だし、用心はし過ぎる位で丁度良いかも。

 ついでに足場も(よろ)しくない、ゴツゴツしていて歩きにくいうえに濡れていて滑り易い。更に岩の(くぼ)みが多過ぎて、何気に死角も多くて神経を使わされる。

 そんな訳で、俺たちは慎重に奥へと進んで行く事に。





 ――しかしこの洞窟エリア、果たして苦労に見合う報酬はあるのかな?








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