表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/26

魔法の使えない魔法戦士って



「お前か……っ!」


 思わず怒鳴ってしまったが、それに対して妖精は申し訳なさそうに敬礼でリアクションを返して来た。意味不明だが、目をギュッと(つむ)って敬礼をする妖精はちょっと可愛い。

 てっきり精神値が下がる程度が、マイナス要素だと思い込んでいた俺だけど。あの商人の慌て様を考えるに、そんな程度で済む訳も無いのは考えれば分かるコト。


 そうだよな、少し考えれば多大なマイナスがあるって分かるよなぁ。まぁ仕方が無い……ここはスッパリ、魔法戦士の道は諦めよう。

 ってなる訳が無いだろっ、ゴラァッ責任者出て来いっ!! 今後一切魔法が使えないのか、今覚えている魔法だけが使えないのかは不明だけど。


 考えるに恐らくは前者だろう、背負い込むには重過ぎるペナルティである。それだけは勘弁願いたいので、妖精にどっか行ってくれないかとお願いした所。

 物凄く悲しい顔をされたので、謝罪と共にその言葉は撤回する事に。女性を悲しませるのは趣味では無い、例え相手のナリが小っちゃくてもだ。


 さて、それならマイナスをひっくり返す代案を考えなければ。要するに、この小さなレディが俺の魔法以上の性能を示せば問題は何もない訳だ。

 例えばだが、空を飛ぶ飛竜を一撃で撃ち落とすパワーを発揮するとか? ……うん、もう少し冷静になろうか、妄想に(ひた)っている場合じゃない。


 とは言え、実際に自分で出来る解決策などまるで思い付かない。厄介者など見切れば良いだろうとの意見もあるかもだが、それは明らかに道徳違反な気もする。

 例えば、飼っているペットが病気になったからって、捨てる様な非道は倫理的に許されないだろう。冒険者だって同じ事、自分勝手な行動ばかりだと、後で必ずしっぺ返しが来る。


 情けも同情も、決して人の為では無いのである。そんな訳で、今以上に頑張るようにと妖精に言い含めると、今度は嬉しそうに頑張るポーズを取ってくれた。

 この妖精娘って喋らないけど、色々と感情表現は豊かだなと感心しつつ。この架空世界で初めて出来た友達……もとい従者なのだと、改めて感動など覚えてみたり。


 この先、長いお付き合いになるかも知れない、素敵な名前を付けてあげなければ。安全地帯に戻りながら、俺はそんな事を考える。

 うん、お前の名前は“ファー”にしよう!



 決して遠くに行って欲しいなと言う、願望が込められている訳ではない。戦闘中や収集で呼び掛ける際に、出来るだけ短い方が良いだろうとの考えだ。

 妖精も、自分に名前が付いたのを即座に認識してくれた様子で何より。嬉しそうに俺の前で一回転して、興奮と感謝を示している様子。

 うん、喜んでくれて俺も嬉しいよ……さて、曲がりなりにも今後の方向性は決まったかな?


 つまりは、なるようになれだ! あるが(まま)を受け入れて、とにかく突き進むのみ。残り時間はまだ少々あるが、今日は早めに落ちる事にしよう。

 余計な戦闘はなるべく避けつつ、ほぼ真っ直ぐに安全地帯へと帰還を果たす。その間、妖精のファーは本当にマメに収集作業に励んでくれた。


 俺も早めに落ちるなら有効に時間を潰そうと、落ちているアイテムを拾って行く。結果、ほぼ鞄の中が変な素材や食料でパンパンに埋まってしまった。

 例えば木の実とか謎な草木とか、綺麗な石とか普通の木の蔦などなど。所持しているのが初期の鞄なので、恐らく容量が少ないのだろう。


 ファーったら張り切り過ぎ、そしてその猛威は安全地帯に戻ってからも発揮された。新しいクエ依頼書は無いかなと、大樹に近付いたら妖精も俺に追従して来て。

 遥か高い場所に飛び上がって、隠してあったらしい用紙を取って来たのだ。


「おおっ、凄いな……お手柄だぞ、ファー!」


 ウチの家族の教育方針は、とにかく褒めて伸ばすと決まっている。俺が親代わりも兼ねているので、それは決まり事としてしっかり定着している。

 ファーも嬉しそうだが、どうやらそれ以上のムーブは行なわないみたいだ。どうやら他に、この周辺には隠し依頼書の類いは無い様子。


 俺は何が書かれているのかと用紙を眺めるが、どうも交換券の類いらしい。どうやら不要アイテムを、ランダムに別のモノに変換してくれるっぽい?

 これはガチャみたいで面白いかも、しかも5枚あるので合計5回交換可能みたい。どうやら、愛嬌のあるサルの着ぐるみが交換してくれるみたい。


 早速、手元のいらないアイテムを渡すと、サルの着ぐるみは大きな袋から、いかにもランダムですよ的な感じで何かを取り出してくれた。

 妖精と一緒に、俺はそのアイテム結果を一喜一憂する事合計5回ほど繰り返す。その結果、当たりと呼べるアイテムはどうやらこの3つ。


 ――風魔法『風の茨』のカード

 ――疾風のズボン 耐久8、防御+7、敏捷+2

 ――耐魔の指輪 耐久2、耐魔20%up


 他はポーション(大)と、炎の水晶玉と言う消費アイテム5個セットだった。当たりが半分以上なのは、俺のアバターの運の良さが関係してるのだろうか。

 はたまた妖精の貢献のお陰なのか、その辺は良く分からない。とにかく儲けたのは大いなる事実で、小さな相棒と一緒に喜びながら装備のお召し替えなど。


 うん、ズボンだけはお洒落になったかな。風の魔法のカードはともかく、指輪ゲットで空いてる装備欄がまた1つ埋まってくれた。

 ついでに、今日出掛ける前に受けたクエ報酬も交換して貰った。その内容だが、4個の食材と交換に『料理キット』と言うアイテムを貰えた。

 それから5匹の敵の討伐報酬で、イヌNPCから『冒険者セット』と言うのを貰った。


 兎の皮と肉もこの際だから交換、串焼きと粗末な革の帽子を貰った。頭装備はもう正直必要無いのだが、これしかもう交換出来る品が無かったのだ。

 後は鞄の中を整理して、妖精に別れを告げてログアウト――。





 筐体(きょうたい)メットを(かぶ)って、静かな状態の琴音(ことね)は正直可愛いと思う。ただし口を開いて辛辣モードに入ると、もうこちらの手に負えない猛獣と化す。

 そんな心を読まれたら殺されそうな事を考えつつ、待つ事しばし。そして琴音の方も、数分後には無事にログアウトに至った模様。


 その表情から察するに、彼女も何とか死なずに今日の冒険を終えられたようだ。ご機嫌なのは表情で分かる、伊達に長年の付き合いでは無いのだ。

 逆に俺は、相手に心を読まれぬようポーカーフェイスを覚えた次第。


「ふうっ、お疲れ様……早速だけど、(きょう)ちゃんの方の探索結果はどうだった? こっちのアバターは、何とかレベル8まで上がったよ!

 果実も1個目ゲット出来たし、そっちがまだなら場所教えるね?」

「あぁ、うん……こっちは色々とハプニングだらけだったかな? しかし凄いな、俺の倍のレベルじゃんか……やっぱり経験者は違うなぁ」


 向こうはどうやら、初日と今日は戦闘三昧でレベル上げに務めていたらしい。安全にエリアを歩き回るには、どうしても最低限の強さが必要なのだ。

 琴音の行動だが、安全地帯の近くの敵が枯れるまで敵を狩って回っていたとの事。それから今日のインの後半に、クエ消化がてら東のエリアを散策したらしい。


 その結果、見事最終クエの『虹色の果実』1個目をゲットに至ったようだ。残り4個で、この辺は規定ルートに大きく遅れてはいないそう。

 こっちは自分のアバターの、成長の軌道修正の脳内思考で気もそぞろ状態。そのせいで、幼馴染のお節介攻撃をガードするのを忘れてしまった。


 お陰で森の東側のマップ状況は筒抜けに、盛大なネタバレを喰らう破目に。それはともかく、成長指針の良い案も出ないので成り行きに丸投げする事に。

 妖精に全ての責任を負わせるのは、余りに可哀想過ぎるとも思うし。とにかく女性には優しく、それが俺のモットーなのだ。

 ただまぁ、怒られる可能性もあるので報告はもう少し後でもいいかな?





 ――そんな感じで、日和(ひよ)る俺は毎度の逃げ思考なのであった。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ