第十九章:世界が選ぶ前に
戦場は、もはや戦場と呼べる形を失っていた。
陣営同士の衝突、誤爆、暴走した兵器。
すべてが連鎖し、破壊だけが増幅していく。
アリスとエリスは瓦礫の陰に身を潜めていた。
エリスの呼吸は荒く、額には冷や汗が浮かんでいる。
「……また、来る」
力の反動だ。完全に制御できていない。
アリスは彼女を抱き寄せ、額を合わせる。
「大丈夫。もう、ひとりで背負わせない」
かつて、エリスは力を“奪われ”、利用され、壊されかけた。
今は違う。ここにいるのは、選ばされる存在ではない。
遠くで、マリアが立ち尽くしているのが見えた。
彼女は銃を下ろし、指示を待つ通信機を踏みつける。
「……これ以上は、止める」
その決断は、彼女自身のものだった。
だが、世界は遅い。
暴走寸前の兵器が起動し、複数の陣営が同時に介入する。
すべてが、二人を中心に収束していく。
エリスの身体が震え、力が溢れかける。
アリスもまた、その波に共鳴しそうになる。
「違う」
アリスは歯を食いしばる。「壊すためじゃない」
彼女は剣を地面に突き立て、エリスを強く抱いた。
力を解放するのではなく、留めるために。
その選択が、奇跡を生んだ。
衝突していた力が相殺され、戦場全体が沈黙する。
完全な勝利でも、敗北でもない。
ただ、“続行不能”という結果。
世界は初めて、二人をどう扱えばいいか分からなくなった。
そして――
その隙が、二人に未来を選ばせた。




