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第十七章:引き金の重さ

その光は、戦場を越えて届いた。

 観測地点の岩陰で、マリアは双眼鏡を下ろした。

 通信は沈黙し、戦況図は意味を失っている。勝敗ではない。壊滅――それだけが正確だった。


「……これが、彼女たちの力」


 訓練所で並んで剣を振った記憶が、否応なく蘇る。

 笑い方も、癖も、弱さも知っている相手を、数値と脅威度で塗り潰すことなどできなかった。


 だが、命令は来る。


『対象を確認次第、排除』

『交戦許可』


 マリアは引き金に指をかけた。

 照準の先に、アリスの背中が映る。エリスを背負い、瓦礫の中を進む姿。


 撃てば、終わる。

 少なくとも“問題”は。


 ――引けなかった。


 なぜか。

 理由は単純だった。


「あれは……逃げてるんじゃない。背負ってる」


 責任を、罪を、世界を。

 それでも歩く背中を、マリアは見た。


 彼女は知っている。

 あの二人は、選ばれた力に酔わない。

 だからこそ、危険なのだ。


「……私が追う」


 マリアは通信を切った。

 独断専行。処罰は免れない。


 それでも決めた。


 排除ではなく、接触。

 殺すのではなく、問いただす。


 ――その力を、どう使うつもりだ。


 引き金は、まだ下ろさない。

 重さを知ってしまったからこそ。


 彼女は追跡を開始した。

 かつての仲間を、そして今や世界の焦点となった存在を。


 この戦いは、命令では終わらない。

 選択だけが、答えになる。

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