第十四章:共闘という名の綱渡り
銃声が遠のいたあと、坑道に残ったのは崩落の余韻だけだった。
「助けが必要だろ?」
瓦礫の向こうから現れたのは、反軍組織《灰の輪》の小隊だった。軽装、雑多な装備。統制は甘いが、目だけは鋭い。
「追跡者が動いた以上、あなたたちは一人ではもたない」
指揮役の男は、そう言って手を差し出す。「一時的な共闘だ。条件は後でいい」
アリスは即答しなかった。信じられない。だが拒めば、ここで終わる。
「……期限付きだ」
「上等」
合流は、救いであり同時に枷だった。
移動の最中、エリスの足取りが乱れる。呼吸が浅く、魔力の脈動が不規則に跳ねる。
「止まって……」
次の瞬間、地面が震えた。エリスの力が漏れ、岩肌がひび割れる。制御不能。代償が迫っている。
「薬なしで出力を上げると、神経が焼ける」
《灰の輪》の技術者が眉をひそめる。「長くはもたない」
アリスは歯を噛みしめた。力は武器であり、同時に時限爆弾だ。
――その頃。
別の高所。マリアは双眼鏡越しに、二人の姿を捉えていた。
《灰の輪》と合流。予想通りだ。
「追撃は控える」
彼女は部下に命じる。「今は……観る」
引き金にかけた指が、微かに震えた。
撃てば楽だ。だが、それで何が残る?
坑道を抜け、即席の野営地に着く。
《灰の輪》は囁く。「君たちの力があれば、戦況を変えられる」
アリスは答えた。
「利用される気はない。選ぶのは、私たちだ」
エリスが、かすかに頷く。震えはまだ止まらない。
それでも、目は曇っていなかった。
共闘は始まった。
信頼ではなく、利害で結ばれた細い綱の上で。
その綱を、誰が先に切るのか。
世界は、固唾をのんで見ていた。




