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第11話解決の道標は思いがけないところにある。①

「人は貴重なものほど欲しくなるの。安売りしないで価値を高めるのよ」

「形が悪いからって捨てないで。割って小さくすればピアスとかにできるでしょ」

「あなた魔法が使えるのよね? じゃあこっちの工程手伝って」

「王都の近くのムムッチベ領で正式にこのオーアンディ石が売れることになったわ! できてるだけ持ってくから馬車に詰め込んで」


 鉱石という意味の『オーア』と『バーガンディ領』を掛けて宝石を『オーアンディ石』と命名すると、数時間前まで閉鎖を待つだけの鉱石場だったとは思えない程、従業員が総動員して鉱石を運んで、磨いて、大忙しで働いた。

 

 しかし、彼らの表情は決して不貞腐れたものではなく、額に汗を滲ませて歯を食いしばりながらも爽やかだ。



 

 リテネロエは鉱石を磨くことで宝石に生まれ変わるところに目を付け、それを売ることで食料と交換することにした。


 この国に鉱山地帯や宝石が取れる場所はそう多くない。そのため、鉱石取り放題のバーガンディ領から質の良い宝石を輸出することが出来れば、それは我が領地独自のアドバンテージとなる。


 契約を持ち掛けたムムッチベ領ではファッションがとても盛んなため、目からうろこが落ちるほどの金額で買い取ってくれることを二つ返事で約束してくれたし、直近の食料問題解決だけでなく、上手く行けば今後も利益を上げられるだろう。


「まさかこんな方法があったとは……」


「ボケっとしてないで手を動かして! これから大急ぎでムムッチベ領に行くんだから」


 オーアンディ石でいっぱいの木箱を抱えて呆気に取られているのはルクシンドだ。

 

 寂れた鉱石場に呼ばれたと思ったら、みんなバタバタ走り回っているし、リテネロエからマシンガンのように状況説明を叩き込まれるしで、まさしく目が回った状態。

 とりあえず、今は何も考えず詰め込めるだけオーアンディ石を馬車に載せている。


 実物を見せ上手く貿易の道を作れば、空っぽの明日の民の食糧をたっぷりと抱えて帰ってくることができるため、ボケっとしたケツを叩きながらリテネロエはやる気で瞳をギラギラさせていた。


「よしっ! 完了、行くわよルーク!」


――別れる前の死んだような表情は一体どこに飛んでいってしまったのか……


 感心と戸惑いだけを胸にルクシンドはリテネロエとジェットコースターのように馬を飛ばして、寂れた草原を駆け抜けて行く。



■□■□■□



「うわあぁぁっ!! 食料手に入ったんですね! 良かったです……」


「ぶへっ――ちょ、ちょっと落ち着いで……」


 食料を持ってくるために借りた大きな荷台の中を覗いて、パンデは礼儀なんか微塵も忘れてリテネロエに抱き着き、そのか細い手で今にも背骨をボキボキに折ろうとして来た。


 きっと、この数日間ずっと顔を真っ白にしながらどうしようどうしようと途方に暮れていただろうから、その安心した表情を見てなお突き放したりはせず、羽織を鼻水を拭くための雑巾として差し出したのは彼女の優しさだ。


「まだ、仕事は終わってないわよ。領民が異変に気付いて何か問題を起こす前にすぐこれをみんなに配らないと。いつも通りの明日を迎えることができた時、初めて私達は安心して目を閉じれるんだから」


「はいっ! 今すぐ片っ端から卸業者を集めます! まかせておくんなし!!」


「なんかそれおばさんっぽい」


 テンションが馬鹿になった様子が少し心配だが、この問題はもう大丈夫だろう。パンデの仕事は早くて正確なのが取り柄なのだから。


 


――ムムッチベ領とは、二つの約束を結ぶことができた。

 

 

『一つ、今回持ってきたオーアンディ石は言い値で売る条件で、貯蔵している食料を渡せるだけ渡すこと』


『二つ、他の領地に流通させない条件で、高額で定期的にオーアンディ石を買い取ること』


 

 藁にも縋る思いのバーガランド家にとっては、何とも願ったりかなったりの約定だ。


「今回は完全にリーティのお手柄ですね」


「っふん、褒めても良いのよ?」


「よしよし」


「あっ! ちょっ、なでるな!」


 そっぽ向けられるかと思いきや、赤子の頭を撫でるように髪をくしゃくしゃにされて、リテネロエは頬をピンクにしながらその手をペシっと払う。


 冷淡な顔つきに似つかわしくない、優しい眼差しがなんともむずむずした。


「そういえば、食料庫を襲ったのはやはり生屍で間違いないようです」


「そう……ここで生屍なんてめったに出ないのに、本当に運が悪かったのね」


「近くの森でそれは討伐されたのでもう大丈夫でしょう。一時的に警備も強めてます」


「うん、それが良いわ。今度ルークにお祓いでもしてもらおうかしら」


「――それはお断りしておきます」


 虫が湧かないように掃除はしてあれども、凄惨な姿と成り変わった食糧庫を眺めながら二人は大きくため息を吐く。ここ数日でため込んだ重りを一気に吐き出すように。


 改めて取り入れた空気はやけにカラッとしていて、頭の中をまっさらな状態に戻すことが出来た。



☆★☆★☆★



ご覧いただきありがとうございます!

領主の娘の腕っぷしは伊達じゃないんだぞ!


今日は二話連続投稿です。

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