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5 ご加護
「大変だ!魔王が復活したぞ!」
「なんだって!?」
つい出来心で、勇者がとか魔王がとか言っただけだった。
まさか本当に起きてしまうとは……
「きっとそろそろ勇者が店に来て酒でも……」
噂をすれば勇者、戦士、魔法使い、僧侶の錚々たる面々だ。
「酒を4杯頼む」
強面の若い戦士はそういって料金を前払いで出した。
「あいよー」
しばらくして、勇者一行の方から、少年の怒る声が聞こえた。
「どういうことだ! 勇者の俺が国王命令でパーティー追放通告って!」
「落ち着いて、僕は知りませんよ」
大人しそうな眼鏡の僧侶に凄み、こんどは戦士と睨み合う勇者がなだめられている。
「魔法使い、お前じゃないよな?」
「なにがだよ? お前の追放は国王サマの指示だろ」
なんだか揉めているらしい。若いな……
彼らを見ていると俺も若いうちに冒険者挑戦してみればよかったと思えてくる。
移住して店で働いて店主から継いで、それで横道にそれる暇もなかったからな。
「邪魔したな」
一行はギスギスしたまま店を出ると、3人と1人に分かれて行った。
「魔王はあの、賢者アホに倒されたらしいぞ」
「いや、知らん。誰だアホて」