2姫よ死ね
「いらっしゃい」
「おう、買いにきたぞキーユ」
彼女は最近ここの辺りに引っ越してきた若い娘で、知り合いの店主のところでよく働く顔なじみだ。
ここらでは珍しい水色の髪をしている。隠しているんだろうがどこぞの裕福な家の出だろう。
「またな」
昼のマーケットへ酒のつまみを探して早20分、どうしたもんか……
じとーっとした視線。店から出た時からある。本当にどうしたらいいんだ?
衛兵にそうだんなんざ笑われちまう。こんなくたびれたオッサンにストーカーなんてありえない、自意識過剰、しかし感じる。
銀髪のクソデカドリル縦ロールの女。あきらかにどっかの王女様。
なんでゴロツキに襲撃されてないんだ。ついこの前は近場で女2人が殺されてたけどこの街は治安いいのか!?
「オイオイなんでプリンセスがその辺に歩いてる?」
つい独り言のような距離で口から飛び出た。まさか、モテないからとうとう……俺にだけに見えてる幻覚?
「ノナン・ソンモイナ帝国の第2王女、ソキッツウですわ」
「帝国なら皇女なんだが妙だな……最近の子は語彙力低下してるらしいからなのかなぁ……」
「ゴホン!ウェッフン!」
明らかに動揺して、怪しい姫はクソデカ咳払いをした。そしてどこからか取り出した林檎を俺に投げつけて逃走しやがった。
「大丈夫ですか!?」
林檎が直撃する前に不思議な円盤でガードしてくれたらしい。それはどうやら鏡のようだ。
「ああ、嬢ちゃん助かったよ」
「私はサーシャ・クーです。それでは……」
黒髪の女は忽然と姿を消した。買い物どころじゃあない。早く酒場に戻ろう。
「おかしいよなあ……」
「あ?」
「その辺にどっかの王女がうろついてたんだ」
「その年でボケちまったか……」
客がはけた頃、あわただしい足音がした。
「助けて……」
噂をしていた銀髪の女が泣きながら店に逃げ込んできた。
「私……継母に殺されそうなの。りんごは毒があって」
おかしい……こいつがリンゴを投げつけた事は水に流すとして、なんだ?
外をうろついていた時から継母から逃げてるならともかく、あの時のテンションは命を狙われてる雰囲気とは違うぞ。
急に殺されそうになったからとかならまあ、それでも王族が一人外を徘徊なんざありえねえんだが。
「しらねーよ!よくもオレに林檎を投げつけてくれたな!」
本当は怒っていないが、どうにも信用ならない。しっしと店の外に出す。
「聞いたかい? どっかの王女様が殺されたらしい」
「胸糞悪いぜ」
昨晩、俺が追い出さなきゃこんなことにはなら……「スノゥ王女……うぅ…」
「え?」
村の青年が泣いている。それより、誰だそれ?
俺関係ないのか、よかっ……よくないが、それならオジサン目覚めだか寝覚めだかは良いなァ?
「女の子は皆、お姫様」




