表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/78

第77話

「……」


 ヒヅキは横目で、皿の上の野草サラダにかかったマヨネーズを、無言で見つめていた。

 別に恥ずかしがることも、遠慮することもないのにな。

 仕方ないな……。

 俺は2品目のサラダにマヨネーズをかけて、ヒヅキの前へと持って行った。


「これ も、味見 を」


 俺の言葉に、ヒヅキの耳がピコピコと動いた。


「あ、味見は必要ですからね!」


 ヒヅキはそう言うと、フォークを手に持ち、サラダの一部をひとすくいする。

 そして、大口を開けて入れた。


「あむっ! ……もぐもぐ……ん~! たまらない!」


 次の一口、さらにもう一口とヒヅキは止まらない。

 それを見ていたコヨミが、ヒヅキの耳元に顔を持っていく。

 そして、小声で囁いた。


「このマヨネーズ……実は、火を使わないで作れるっスよ」


 それを聞いた瞬間、ヒヅキの動きが止まる。


「……え?」


 ヒヅキがゆっくり顔を、コヨミの方に向けた。

 青い瞳が輝いているのがよくわかる。


「本当に……火を……使わないの?」


「そうっス。材料を混ぜるだけっス」


「……あとで……作り方を教えてね」


「もちろんっス。ただ保存がきかないっスから、作ったらすぐ食べるっスよ」


 そうなんだよな。

 どう頑張っても、手作りマヨネーズは保存がきかない。

 これは現世界でも同じことだ。


「あっ、そうっス」


 ふと、コヨミがこちらを見た。


「ねえ、ゴブくん。気になったっスけど……ゴブくんの世界の保存食って、どんなものがあるっスか?」


「俺 世界 の?」


 どんなものと聞かれてもなー。

 大体同じで乾物、塩漬け、燻製、瓶詰になるんだよな。


「えっと……基本的 あまり 変わら ない。干した 物、塩 漬け、燻製。あと、瓶詰め」


「本当に変わらないっスね。こっちの世界にない物の話、聞きたかったっスから、残念っス」


 コヨミが残念そうに肩を落とした。

 こっちの世界にない物か……。


「なら レトルト、フリーズ ドライ かな……」


「れとると?」


「フリーズ……ドライ?」


 ミュラとコヨミが首を傾げる。


「レトルト。食べ物 袋 入ってる。湯で 温めれば 食える」


「へ? それって瓶詰めと何が違うっスか?」


「袋の中 空気 入って ないし、入ら ない」


「空気が入ってない? 入らない? そんなの、蓋をしたらいいだけっスよ?」


 俺も詳しいところまでは知らんからな。

 簡単に説明するのが難しい。


「えと、それだと 中 空気 そのまま。蓋 少し 隙間 ある。レトルト、袋の中 空気 全部 無い。蓋 隙間なく 空気 入らない。特殊な 技術 なんだ」


「う~ん……」


 俺の話にコヨミは腕を組み、首をかしげる。

 明らかに納得のいっていない顔だな。


「出来そうっスけどね……まぁいいっス。あと、ふりーず……どらい? っていうのはなんっスか?」


「より 乾燥 させた物。お湯 かけると すぐ 食べれる」


「そんなにすぐなんっスか?」


「ああ、ものに よって 数秒で」


「「数秒!?」」


 コヨミとヒヅキが同時に声を上げた。


「それ、こっちで出来ないんスか!? より乾燥させた物なら、時間を置けば……」


「自然 難しい。これは 特別な 機械 いる」


「あう……そうっスか……」


 コヨミがガッカリした様子で頭を上げた。

 だが、すぐに顔を上げる。


「じゃあ、他に作れる保存食ないっスか?」


「へっ?」


「こちらの世界にある、道具や材料で作れる保存食っスよ。きっと、役立つと思うっス」


「こちらの……世界……で……」


 そんなの考えたことがなかったな。

 ふむ、それならいくつか作れるが……。


「ある。ただ、どうしても 火 必要」


 そう言うと、ヒヅキの方へと視線を向けた。

 ヒヅキは予想通り、火という言葉に動揺している。

 そんなヒヅキに、コヨミは笑顔で傍へとよる。


「大丈夫っス。ヒヅキは離れた席で見てるっス。作れそうならレシピを書くっスから、調理の人に頼んでほしいっス」


 ヒヅキは俯き、少し間をおいてから頷いた。


「わかった……ごめんね……」


「何を謝る必要があるっスか!」


 そう言って、コヨミは笑いながらヒヅキの背中をやさしく叩いた。




「まず 焼き米 作る」


 生米をフライパンの上に広げて、弱火で乾煎りする。

 米が焦げないように、混ぜ続ける。


「……わあ、いい匂いです」


 席に座っていたヒヅキが小さく呟く。


「これで きつね色 なったら 完成」


「これで? もうたべられるの?」


 ミュラの質問に、俺は頷いた。


「食べ れる。けど、硬い」


「……あじみしても?」


「いいぞ」


 ミュラは恐る恐る焼き米を数粒つかみ、口に入れた。


「カリカリ……ほんとだ……かたい……」


「食べ方 そのまま 食う、もしくは 水で 戻す」


「なるほど、乾物と同じっスね」


「次 糒」


「ほしい? なにを?」


「ほしい じゃない ほしいい。米の 干物 だ」


 炊いた米を、水で洗い、粘りを取る。

 そうしたら布の上に薄く、まんべんなく米を広げるだけ。


「あと 天日干しで 4日ほど 乾燥 させる」


「じゃあ、ほしいは今すぐ食べられないわけっスね」


『だから、ほしいじゃ……まぁいいか……』


 俺はコヨミの言葉に頷いた。


「そう。食べ方、割って 湯で戻す」


「それ、ふりーずどらいと一緒っスよ? 何が違うっスか?」


 うーん、確かにそうなんだが……でも、違うんだよ。

 どう答えたらいいんだ。


「すまない。物 違う……としか 言えない」


「ふ~む……そうっスか……じゃあ……仕方ないっスね」


 コヨミはだいぶモヤモヤしていそうだ。

 うまく言えなくて申し訳ない。


「次、肉粉末 する」


 これは簡単。

 干し肉を刻んで、すり鉢で粉状にするだけ。


「他 果実 干し魚 入れて 混ぜても いい」


 粉になった干し肉を小瓶へと移した。


「こう すれば、持ち 運べる。味付け から、溶かせば スープ なる」


「ああ、それはいいっスね。ウチもやろうっと」


「最後。料理 じゃないけど、ラー油 作る」


「らーゆ?」


「辛い 油。保存効く 調味料」


 まず唐辛子をみじん切りにして、すり鉢で粗挽きにする。

 次に、ニンニクと生姜を薄切りにする。

 切り終えたら鍋に植物油を入れて、にんにくと生姜を入れる。

 弱火でじっくりと加熱していって、にんにくがきつね色になる直前で火から離す。

 ザルに通して、ニンニクと生姜を取り除く。

 そして再度、火にかける。

 菜箸を入れて、細かい泡がすぐ出る状態になれば準備完了。

 熱した油を、唐辛子の入った器の中へと一気に注ぐ。


 じゅわっと音が鳴り、唐辛子の香りが一気に広がった。


「っ!」


 目と鼻に、突き刺すような刺激が走る。

 くーっ……何回やってもこれにはなれないな。


「っ! もう匂いで辛そうっス」


「辛い けど、少量 いい アクセント なる」


「それって、さっきつくったのにあう?」


「ああ、合う ぞ」


「なるほど……よし、その味見を含めて、夕ご飯はこの保存食を食べようっス」


 コヨミの提案に全員が頷いた。


「わかった」


「わ~い! ごはん! ごはん!」


「そうですね」


 保存食料理をヒヅキの座るテーブルへ運び、俺たちは席へと着いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ