第76話
さて、野草の味は確認した。
後はこれらの組み合わせをどうするかだな。
『保存食料理に野草を足していくか……さて、どう変わるか楽しみだな』
まずはビーフジャーキーの油和えからだ。
これに混ぜるのは…………よし、ノビルとタンポポでいってみよう。
ノビルの香りと、タンポポの苦みが肉と相性よさそうだ。
ノビルの葉を細かく刻む。
香りが強いから、入れすぎないように気を付けてっと。
そして、球根の方は薄くスライスにする。
タンポポの葉も細かく刻む。
根は皮を軽く削ぎ落として、薄切りにする。
切ったノビルとタンポポをビーフジャーキーの油和えに加えて、全体を混ぜれば完成だ。
『よし、味見してみるか』
俺は指先で少量つまみ、口へと入れた。
『もぐもぐ…………うん、いける』
ノビルの香りが肉の味を引き立ててるし、タンポポの苦みがアクセントとしてきいている。
いい感じに仕上がったな。
次は切り干し大根の油和えにするか。
これに合わせるのは……ハコベかな。
大根の食感と甘みが、ハコベのシャキシャキ感と合うだろう。
ハコベの葉を適度な大きさに刻む。
そして、干し大根の油和えに入れて混ぜる。
おお、やっぱり茶色の中に緑が入るだけで全然印象が違うな。
どれ味見っと……。
『もぐもぐ……』
ハコベのクセがない分、大根の甘みを引き立てている。
シャキシャキとした食感が合わさって、食べ応えも完璧だな。
お次は干し魚の油和えだ。
これはもう決めてある。
鮭と相性のいいネギ代わりのノビル、レタス代わりのノゲシ、苦みのあるタンポポだ。
ノゲシは刻んで、干し魚の油和えに混ぜる。
その後に、タンポポの葉を少し入れて……ノビルは、香り付けのためほんの少しだけ入れる。
そして、軽く混ぜれば完成だ。
『さて、どうだ? もぐもぐ……』
うん、鮭とノゲシ、タンポポの相性は完璧だな。
後からくる、ノビルの香りがいい感じだぜ。
ナッツペーストはクレソンと混ぜてみよう。
ピリッとした辛味がナッツペーストと合うだろう……多分。
クレソンを少し粗めに刻む。
刻んだら、ナッツペーストに練り込めば完成っと。
『……いい感じになっててくれよ』
恐る恐るナッツペーストを指ですくい、口に入れた。
ナッツの甘味の後に、ピリッとした辛味が来る。
これなら、よりパンにも合うな。
『よし、最後にパン粥だ』
とはいっても、これはもう薬味としてノビルを入れるか、単純にヨモギ味にするかなんだよな。
これも実に簡単。
ノビルを刻んで、ほんの少しだけ入れて混ぜるだけ。
ヨモギも、細かく刻んで入れて混ぜる。
『……ずず……うん、ノビルは薬味になってていけるな。ヨモギの方は……ずず……うーん……ほぼヨモギの味になってしまっているが……まぁこれもこれありかな』
一通り並べ、俺は全体を見渡した。
緑色が入るだけで、やはりだいぶ印象が変わるな。
「出来 た」
俺の声に、ミュラとコヨミ、そしてヒヅキが近づく。
「わ~! さっきとおなじとおもえない!」
「やっぱり緑は大事っスね」
「そうね」
「味見 お願い」
「わ~い! あじみあじみ!」
「どんな感じっスかね~」
「じゃあ私は……これを」
ヒヅキがビーフジャーキーの油和えを少し取り、口へと運ぶ。
「もぐもぐ……あ、さっきと違う!」
それを見たミュラも、ビーフジャーキーの油和えを少し取り、口へと運ぶ。
「あむ……もぐもぐ……うう……にがい……」
ミュラが顔をしかめてしまう。
やはりタンポポの苦みは、ミュラはつらいか。
「もぐもぐ……うん、ウチは好きっスよ、この味……あっ!」
コヨミが何かひらめいたようで、手を叩いた。
「これにマヨ――」
「マヨネーズ 保存 きかない……意味 ないぞ?」
「あっ……そうだったっス……」
コヨミはガクッと肩を落とした。
「まよねーず? なんですかそれ?」
ヒヅキの質問に、コヨミが力なく答えた。
「ゴブくんが作った、すっごくおいしい調味料っス……ヒヅキも絶対気に入ると思うっス……」
「へぇ~……それも食べてみたいですね」
そういえば、双子って好みも同じになるのかな。
だとしたら2人目のマヨラーの誕生もあり得そうだ。
もしそうなって、保存できるマヨネーズを作ってと言われても困るんだが……。
「じゃあ 余った 野草 サラダ等 する? これなら マヨネーズ かけれる。保存食 無し でもいける はず」
俺の言葉に、コヨミがすぐさま顔をあげ目を輝かせた。
「それっス! お願いするっス!!」
マヨネーズとなると、ミュラ並みの反応なんだよな。
「わかった。作る間 残り 味見 して」
「は~い!」
「わかったっス」
「あ、お願いします」
さて、サラダとなると……ハコベ、タンポポ、ノゲシ、ノビル、カブが使えるくらいか。
あとはサラダとして向いていないからな。
まずはハコベ、タンポポ、ノゲシの葉を刻んで、少量の塩で軽く全体を揉む。
最後に植物油を一垂らしさっと混ぜれば1品目のサラダの完成。
次にノビル、ハコベ、ノゲシの葉を刻む。
その刻んだ上にノビルの球根を薄切りにしたのを乗せれば、2品目のサラダ完成。
最後はカブ。
カブを薄切りにして、塩を振って数分置く。
しんなりとしたところで水気を絞って、先ほど刻んだハコベ、ノゲシの葉と一緒に混ぜ込む。
これで3品目のサラダ完成。
俺は出来たサラダの皿を3人の前に差し出す。
「……くさをきって、おさらのうえにおいただけみたい……」
「それ 言うな……」
俺もそう思っていたんだから。
やっぱり、トマトとか卵とか他の色取りも欲しいな。
とはいえ、どっちも野営には向いていない。
これで我慢してもらうしかないんだ。
「とり あえず、まず この 状態 味見を」
「はい……わかりました」
ヒヅキはフォークで野草のサラダの一部を取り、口に入れる。
「……もぐもぐ……うん、ちょっと青臭いのが気になりますが、これでも十分おいしいです」
よかった。
何とかサラダの役目はしてくれたようだ。
「ふっふふ……じゃあ次はこいつの出番っスね!!」
コヨミの方を見ると、その手にはマヨネーズの容器が握られていた。
心なしか、輝いて見えるのは気のせいだろうか。
「それがまよねーず?」
「そうっス。これを、サラダにかけて~っと……さぁ! 食べてみるっス!」
「う……うん……」
ヒヅキが頷き、恐る恐るマヨネーズがかかった部分を口に入れた。
「はむ……もぐもぐ…………むぐ!?」
突然ヒヅキが目を見開き、動きを止めた。
「あ、あれ? 口に合わなかった……」
「なっなにこれ!? ほんのり甘くて、そのあとに酸っぱさがあって、こんなにおいしいの食べたことない! あ~ずっと舐めていたいわあああああああああ!!」
ヒヅキの獣耳とモフモフの尻尾が真上に上がった。
そして、その場でピョンピョンと軽くジャンプし始めた。
すごいテンションの上がったヒヅキを、俺とミュラはただただ茫然と見つめた。
一方、コヨミだけはニコニコと笑っていた。
「ああああああ――ハッ! …………こほん」
それに気が付いたヒヅキはジャンプを止め、誤魔化すように軽く咳払いをして姿勢を直す。
「まっまあまあ、おっおいしかったです」
獣耳を上下にピコピコと動かし、モフモフの尻尾を左右にブンブンと振っている。
反応がコヨミの時と全く同じ、流石双子……。
『2人目のマヨラーが誕生してしまった……』




