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第75話

 コヨミがお風呂から出てきて、野草の入ったザルを厨房の台の上に置いた。


「寒冷地や砂漠以外には、だいたい採れるものっス」


「ありが とう」


 俺は、野草の1つを手に取った。


『……で、これは何だ?』


 俺には、ただの雑草にしか見えない。

 匂いを嗅いでも、青臭いだけだ。

 手に取ったものを元に戻し、コヨミに声をかける。


「味見 して、いい?」


 とはいえ大事なのは味だ。

 それぞれの特徴を覚えないとな。


「もちろんっス」


「あ、ミュラもあじみしたい!」


 ミュラが目を輝かせて、手を上げる。


「いいっスけど……基本苦――」


「じゃあ、いいや!」


 コヨミの言葉が終わる前に、ミュラの手が一瞬で降ろされる。

 一応ピーマンを克服したけど……まだまだ苦いのはダメか。


「わかったっス。あっヒヅキ、ちゃんと野草を覚えるっスよ?」


「うん、わかった」


 頷くヒヅキを見てから、俺は先ほどの野草を手に取った。


「これ は?」


「それは、ハコベっス」


 ハコベか……春の七草の一つで有名な奴だな。

 ハコベの葉をちぎり、口へと入れた。


『もぐもぐ……柔らかくて、シャキシャキ感があるな』


 青味はあまり感じない。

 ほんのり甘くて、クセはほぼないな。

 えぐみのない水菜に近い感じがする。

 へぇ、こんな感じだったのか。


 俺は次の野草に手を伸ばす。

 お、これは匂いですぐにわかったぞ。


「ヨミギ か?」


「正解、ヨモギっス」


 この独特の匂いはヨモギしかないからな。

 味は想像できるが……一応食べておこう。

 ヨモギの葉をちぎり、口へと入れる。


『もぐもぐ……うん、ヨモギといったら、この独特の苦みだよな』


 俺は次の野草を手に取った。


「それは、ノゲシっス」


「ノゲシ……」


 初めて聞くな。

 どんな味がするんだろう。

 ノゲシの葉をちぎり、口へと入れた。


『もぐもぐ……ほぉ、こんな味なのか……』


 苦味の弱いレタスやサニーレタスに近いな。

 これは扱いやすいかも。


「これ は?」


「クレソンっスね」


 クレソン、これも聞いたことがないな。

 クレソンの葉をちぎり、口へと入れた。


『もぐもぐ……おお、なんだこれ』


 ピリッとした辛味と苦味がある。

 まさに、今まで食べたことのない味だ。


「これ は?」


「ナズナっス」


 ナズナか。

 これも春の七草の一つだな。


『どれどれ……もぐもぐ……水菜に似て、シャキシャキ感があるな』


 さっき食べたクレソンのように、ちょっとした辛みと苦味がある。

 これは大根の葉に近いな。


『ん? これは……』


 白い球根のついた、細長い葉を手に持った。

 この匂いって……。


「ネギ……?」


 この匂いは間違いなくネギだ。

 しかし、こんな形はしていないよな。


「それは、ノビルっスよ」


「ノビル……ああ!」


 これが、よく聞くノビルか。

 ネギと同じ匂いと味、だけど毒のあるスイセンと似ているから間違えて食べて病院に……って話は有名どころだ。


「……これ スイセン じゃない……?」


 俺は恐る恐るコヨミに質問した。


「スイセン? いやいや、ノビルで間違ってないっスよ!」


 コヨミが自信満々で言っているんだ。

 ……そこまで言うなら、ノビルなんだろう。

 俺はまず、葉の方を口に入れた。


『もぐもぐ……おお、本当にネギだ』


 これ、普通にネギとして出されても、全然わからんぞ。


「球根の方も食べられるっスよ」


「あ、ああ」


 そういえば、球根もらっきょうの様な味らしいな。

 俺は、ノビルの球根を薄く切り、口へと入れる。


『もぐもぐ……本当だ……』


 らっきょうに似た辛味と甘味がする。

 すごいな、ノビルだけで2種類の味が楽しめるなんて思いもしなかった。


「ん? これ は?」


 葉とただの根っこが置かれている。

 何だろう。


「タンポポっス」


 あー、そういえばタンポポって食べられたな。

 そして、その味がすごく苦いのも有名だ。

 俺は恐る恐る、タンポポの葉を口に入れた。


『もぐもぐ……うう、苦ぇ……』


 予想通り苦い。

 毒と言われても、不思議じゃないぞ、これ。


「葉は苦いっスけど、根は意外と甘いっスよ」


 コヨミは笑って根っこを切り、俺に手渡した。

 甘いというが、根っこも苦そうにしか見えないんだがな。

 俺はそう思いつつも、根っこを口に入れる。


『もぐもぐ……根っこだから、硬いな……』


 確かに、苦味の中にほのかな甘さがある。

 けど、風味的にはごぼうに少し似ているかな。

 まぁ……使えなくもないか。


 今度は、ウズラの卵の様な球根を手にした。


「これ は?」


「それは、小型の野生カブっスよ」


「え? カブ!?」


「そうっス。野生化したカブや、その近縁種は非常に強いから、結構採れるっス。けど、栽培の様に大きくなる様に育てていないから、そのくらいのサイズになるっス」


「へぇ……」


 それはそうか、八百屋とかで売っている丸い白カブが、そのまま自然になっているわけないか。

 他の野菜だってそうだ。

 品種改良されて、ああなるように育てられているんだからな。


『まずは……球根の方だな』


 カブを薄く切り、口へと入れる。


『もぐもぐ……うん、小さくてもカブ独特の甘みと食感はそのままだ』


 今度はカブの葉を口に入れる。


『もぐもぐ……うん、これも大根の葉に近いな』


 全ての野草の味見をし、俺は並んだ野草をじっと見つめた。

 これなら、保存食で作った料理の味も見た目も大きく変わるぞ。

 俺は自然と口角が上がっていた。

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