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第36話

 今日は週一の朝市の日だ。

 その為、港町は賑やかで活気に満ちてはいるが……。


『……ん?』


 今日は、さらに騒がしかった。

 大きな木材を積んだ荷馬車が何台も走り、町人達も忙しなく動いている。

 どこからか太鼓の様な音もドンドンと響いてくる。


「……なんか やけに 港町 騒がしい ような……」


 俺が首をひねると、隣を歩いていたコヨミが口を開いた。


「そりゃあそうっス。明日、この港町でお祭りがあるんスよ。年に一度、海の恵みに感謝する祭りっス」


「へぇ……そう だったのか」


 なるほど、祭りがあるのか。

 それなら、港町が騒がしいのも納得だ。


「おまつりがあるの?」


 ミュラが嬉しそうな声を上げる。

 目をまん丸に輝かせ、俺の袖をぐいぐいと引っ張って来た。


「いきたい! ぜったいに、おまつりいきたい!」


 祭りという事は、かなりの人が集まるのは目に見えている。

 出来る限り、人込みを避けたいが……このミュラの顔を見ると、駄目だなんて言えないな。


「コヨミさん どう?」


「ウチは全然、問題ないっス。ちゃんとゴブくんのフォローもするっスよ」


 コヨミもこう言ってくれているし、仕方ないか。


「……わかった。明日 祭り 行こう」


「やったー!」


 ミュラは飛び跳ねるように喜び、港町の喧噪に負けないくらいの声を上げた。


「あ、そうっス」


 コヨミが思いついたように俺に話しかけてきた。


「ゴブくんの世界の祭りって、どんな感じなんっスか?」


「へ?」


「あっ! ミュラもきになる!」


 ミュラが右手を上げる。

 まぁ別に話したところで、何の問題も無いか。


「えと、お神輿 という物 担いだり、食べ物 遊び そういった事 出来る屋台 たくさん 並ぶ」


「ほうほう、そのおみこし? って言うのが気になるっスね」


「ミュラは、たべものがきになる! どんなのがあるの?」


「お神輿 神様の乗り物 練り歩いて 地域の災難 穢れ 取り除く。食べ物……たこ焼き お好み焼き 焼きそば 唐揚げ わたあめ リンゴ飴 その辺り 定番」


「災難と穢れをか……こっちだと、それは舞になるっスね。やっぱり、世界が違うとやり方もそれぞれっスね~」


「おお~……どれもきいたことない……おいしいんだろうな~」


 コヨミは興味深そうに右手を顎に添え、ミュラは笑顔で涎を垂らしている。


「ねぇねぇ~さいしょにいってた、たこやきってあのタコをやくの?」


「違う。小麦粉の生地 中 タコ 入れて、丸い形 鉄板 焼く。外カリッ、中トロッ っとなる」


「なにそれ!? すごくおいしそう! たべたい! ミュラ、たこやきたべたい!」


 ミュラが目を輝かせて、俺の裾をまた引っ張る。

 うーん……作ってあげたいが……。


「すまん。専用 鉄板 ないと 作れない。丸く 焼けない」


「えぇぇぇ……そっか~……」


 俺の言葉に、しゅんとするミュラ。

 そんなにガッカリするとは。

 んーどうにかして作ってあげたいが……あ、そうだ。


「タコ 入り お好み焼き なら どうだ? たこ焼きに 近くて おいしいぞ」


 一応粉物として一緒ではあるから嘘ではない。

 人によっては、一緒にするなと怒られそうだが……。


「……おこのみやき?」


「そう、それだと 材料 買えば 作れる」


「おおお! じゃあ、それたべたい!」


「コヨミさん それで いい?」


「もちろんっスよ」


 よし、昼飯はこれで決まりだな。




 食材を買い、俺達は食堂へと戻って来た。

 買って来たの豚肉100g、キャベツ1玉、小麦粉1袋、タコの足3本……だけでは寂しいと思い、エビ5匹とアサリ5個を追加してシーフードお好み焼きにする事にした。

 そして、欠かせない物として乾燥トビウオ2匹、乾燥シイタケ1本、乾燥コンブ5g。


「よし 作るぞ」


 まずは乾燥トビウオ、乾燥シイタケ、乾燥コンブをすり鉢に入れて粉末状にする。

 これで即席のアゴの粉末だしの完成だ。

 本当は1から出汁を作りたかったが、急遽決まったからそんな時間は無い。

 なので、今日はこれでいくしかない。


 次に、豚肉とタコの足を食べやすいサイズで切る。

 キャベツは粗い千切りにしておく。


 材料を切り終えたら器に小麦粉100g、卵1個、出汁は無いので水を120ml、粉末だしを入れる。

 そして、粉気がなくなるまで混ぜ合わせる。


「ゴブくん、その作った粉でおいしくなるんっスか?」


「必須 だ」


 粉物は出汁の味が重要。

 ただ……いつも市販の粉末だしを使っていたから、この手作り粉末だしは若干の不安はある。

 どうか、うまくいきますように……。


「…………ふぅ……このくらい かな」


 混ぜ終わったらキャベツ、豚肉、タコ、エビ、アサリを加えてまた混ぜる。

 これでたねの完成だ。


「後 これを フライパンで 焼く」


 フライパンに油をひき、たねをお玉で流して広げた。

 じゅわっと音を立てて粉物特有の香ばしい匂いが広がり、ミュラが目を輝かせる。


「いいにおいだぁ!」


 片面が焼けたら、ヘラで生地をひっくり返す。


「わぁぁぁ! おいしそう~!」


 上にきた焼き目を見て、ミュラが歓声をあげる。

 この感じで、こんがりと両面を焼けば……。


「お好み焼き 焼けた」


「ゴクリ……はやくたべようよ!」


「まだだ ソース つける」


 とは言っても、お好み焼きソースなんて物はこの世界には無い。

 なので、お好み焼きソースが無い時に使っていた物で代用だ。


 俺はケチャップ、そしてマヨネーズを取り出した。


「そ、それはマヨネーズじゃないっスか! その料理に使うっスか!?」


「そう けど そのままじゃ ない」


 小皿にマヨネーズを大さじ2、ケチャップを大さじ1入れて混ぜ合わせる。


「これ オーロラソース」


「オ……オーロラソースっスか……ゴクリ……」


 個人的に、このオーロラソース味も悪くないと思っている。

 オーロラソースを、焼きたてのお好み焼きに塗り広げれば……。


「お好み焼き 完成!」


「わあい!」


 ヘラで切り分けて皿に盛り、席へと持って行った。

 ミュラはすぐさま椅子に座り、フォークを手にした。

 そして、待ちきれない様子でお好み焼きに突き立てて口へと運んだ。


「……あ~ん! もぐもぐ……っ! おいしい! シャキシャキのふわふわ! タコもコリコリしてるし! ソースもあますっぱい!」


 ミュラは口いっぱいにほおばる。

 口にあって良かった。


「じゃあ、ウチもいただくっスよ」


 コヨミもお好み焼きにフォークを刺し、口に運んだ。


「はむ……モグモグ……んんっ! おいしいっ! とくに、このオーロラソース……! ケチャップの酸味とマヨネーズのまろやかさが合わさって独特の味が出ている……! まさか2種類を混ぜただけで、これほどのソースが出来上がるなんて……恐るべし!」


 うーん……お好み焼きの味より、オーロラソースに反応しちゃっているよ、これ。

 お好み焼きの感想を聞きたかったが……まぁこっちもこっちで口に合っている様だし……いっか。


 外のざわめきが続いている。

 この様子だと1日中……いや、夜遅くまで続くだろう。


『……明日の祭り、楽しみだな』

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