4話 片思いの大好きな彼を何度だって好きになる
“あなたは俺に関する記憶を一度消されてる”
彼の言葉がぐるぐると頭をめぐる。唐突の言葉に言葉が出なかった。
「……え?」
「だから俺が目についたんでしょうね」
「……どういう事ですか…」
彼の顔は真剣そのものだった。
「あんたがあまりに俺の事を好きすぎて仕事に支障が出たから俺が記憶から消されたんですよ」
ノルディックは一度口を閉じた。少ししてため息とともに呟いた。
「……同じ事になると困る。だから俺があんたと関わっているのが他の人間にバレない方がいいと思って」
「はい……?」
「気づいてないんですか、時折あんたが俺をノルと呼ぶの」
「……えっ」
「……気づいてなかったですよね。何回かそう呼ぶから記憶が戻ってきてんのかと焦った」
え?好きすぎて仕事に支障が出る??ダリアは混乱しながら頭を整理した。確かにあり得なくはないし、好きすぎて現在も狂ってるとは思う。でも、だからってそれは記憶が処理される程の事なんだろうか?それに魔法は便利だけど何でもできるわけではない。法律だって厳しいし、よほどのことがない限り資格のある魔法医師以外は魔法で記憶を操作することなんて禁じられている。それに現代で使われている記憶操作の魔法は一度掛けても一日ともたなかった気がする。こんなに長い間、たった一人の記憶だけを永久的に消す魔法なんてダリアには心当たりがなかった。
それに、師匠であるオリヴァーにも、唯一の友達と言ってもいいエリオットにも彼が好きすぎて辛いと喋ってるし、本人たちはダリアの初恋を喜んでくれたように思う。もしもそんな大事になっていたというなら、彼らが苦い顔をしたり引き留めたりするのではないだろうか。
「……でも、その、……師匠もエリオットも何も言ってなくて」
「あんたは前、頑なに俺の事を誰にも言わなくて……周りも誰も知らなかったし信じないと思って言えなかったんです。誰にも言わないで、その………………付き合ってたので」
「付き合ってたんですか!?!?」
「………付き合って、ましたね」
ノルディックは目をそらした。
「え?誰にも言わないで付き合ってたのに、好きすぎて仕事に支障が出たって消されたんですか?誰かにバレたってことですか?ど、どういう事……?」
「一部不都合のあるやつらがいて、どうやらそいつらにバレました」
「え…?」
「……なんでまた、好きになんの」
……そんなことを言われても。
ノルディックを見るが、溜息をつきながら項垂れていて表情が見えない。
「せっかく忘れたのに」
……忘れた?
付き合ってたけど、もう今は気持ちがないのだとそう突きつけられて、ダリアは酷く頭が痛んだ。ズキズキという痛みが頭の奥の方で続く。
「……あの、ノル……ノルディックさんは私の事好きだったんですか……」
「……………………もういいでしょ」
この言葉が一番心にきたかもしれない。……頭と心が両方痛い。泣きそうだ。
「だから、一部不都合のあるやつらに知られるとまた同じように記憶が消されかねないし、もっと良くないことが起きるかもしれない。だから距離を取ってたんですけど」
「そ、そんな事言われても……きっとまた何度でも好きになっちゃいますよ。大好き過ぎてどうしようもないっていうか……」
彼はため息をつきながら俯いて、両手で顔を覆った。そのまましばらく動かなくなる。
「……なんでそんなに俺なの」
「……え、……か、かっこいいから……」
「出会った日の事ももう覚えてないんだろあんた……」
「………え、で、でも」
「………………ただのその辺にいる男なのに」
その辺にはいない!!!どれだけ同じ服の同じ背丈の軍人がいてもダリアはノルディックを2分以内に見つけ出せる自信がある。
……でも、なんだかダリアは納得していた。
これだけ好きなのには理由があったし、きっと前から彼の事がずっとずっと大好きだったのだ。思い出が全部消えても好きな気持が消えないくらいに。
「……ただ、前はあん……あなたは本当に……その、誰にも付き合っていることを言わなかったので……俺一人だけが覚えてる状態で。証拠もないし証人もだれもいないし、こんな事説明しても誰も信じられないだろうなと。俺がただのやばいストーカーだと思われ「信じます!!!!」
「………………………」
ダリアが食い気味に即答すると、ノルディックは顔を覆ったまま黙ってしまった。
「ノルディックさんはきっと嘘言いません!!大好き!!」
「………それくらい盲目的に好きだったからきっとあんた記憶消されたんだよ」
「っあ、あっあっなるほど……」
ノルディックは俯いたまま、ため息を付いてダリアにいつものようにジャムサンドを差し出してきた。
「はい。あんたこれずっと好きだったんだよ」
「……あっ、なるほど!!どうりで親しみやすい味だと思って……前からずっと食べてたんですね」
「……手作りです。俺の」
「えええええ!!!!ああああ!!!!!なるほど!!!!!どうりで世界で一番おいしいと思った!!!!わあい!!!!どうりで食べたくてしょうがないと思ったんです!!!大好き!!」
「………………………あんたってやつはさぁ……」
「おいしくなる魔法ってそういう事かぁ!!」
急にはしゃぎ始めたダリアを見慣れているのか、それを見てもやれやれと言った感じでノルディックはため息をついた。
……ジャムサンドは、前よりいっそうおいしく感じた。
「はあ………、………………………………。……………はあ……」
ジャムサンドに夢中になっている間、ノルディックから何度もため息が聞こえた。
「……俺らはほぼここで毎日昼食べてて……あなたがテーブルが欲しいというので……これらを持ってきたのは俺で」
「っあ、だからここに都合よくテーブルが!!なんか椅子も2つあるなぁと思ってたんですよ!!……嘘ぉ!!優しい!!大好き!!」
どんどん辻褄が合っていく。なぜこの使われていない図書室の隣の倉庫にテーブルと椅子があったのか。なぜここで過ごす昼休憩が楽しいとずっと思っていたのか。
……ずっとここに彼がいて、彼との思い出があったからだ。
「はい…………あの、本当に信じるんですか記憶消えたなんて。あんたのストーカーが都合よく嘘言ってるかもしれないのに」
「信じます!!あなたとの記憶が消えても舌はジャムサンドを覚えてましたしノルディックさんが魅力的な人だというのも覚えてました!!あと声も聞き覚えあるなって思って……とても好きです!!ストーカーでもいいです!!」
むしろストーカーなら喜ばしい!!そのまま連れて帰る!!一生一緒に住む!!!!魔力持ちは愛情深い人間が多い傾向にあるのだが、愛は重ければ重い方がダリア的にも嬉しい。大好きな彼にストーカーされるとか考えただけで頭が爆発しそうだ。
……もしかして、ずっとあった頭痛は、記憶が消されたのに関係しているのかもしれない。その証拠になんだか今は頭がスッキリしているような……。そう思うと余計にダリアはノルディックの話が信じられる気がした。彼が好きすぎて狂って脳が溶けそうとかではなかったのだ。きっとダリアの頭はノルディックのことを思い出したくて仕方がなかったんだろう。
しかし彼は呆れたように、長い長い溜息をついた。
「はあーーーーー……………。あの、なので、また消されたり厄介なことになると困るので…………あんま俺と関わんない方が」
「あの、私が忘れたから私たちの関係は終わったというか……私の事嫌いになったんですか?」
「………は?」
ノルディックは顔を上げた。今度は怪訝な顔をしている。
「ノルディックさんいつも私と喋る時嫌そうな顔してたので……」
「嫌そうな顔?」
「はい。すっごく嫌そうな顔してたので……きっと私が今みたいに強引に好き好き言って付き合わせてしまってたんですかね?すみませんでした……せっかくノルディックさんも私のこと忘れられてたみたいだったのに」
せっかく忘れてたのに、と言うくらいだし、やっぱり彼はそこまで好いてはくれてなかったのかもしれない。
きっと今と同じで、こちらが勝手に好きになって暴走して巻き込んで付き合わせてたんだろう。
「そんな状態だったのに、一方的に忘れた上に最近また好きとか言って……身勝手に行動もするし…………さすがに嫌になりましたかね。すみません。やっぱり大好きみたいなんですけど……」
「……っいや、強引にというか」
ノルディックは焦りつつ、とても難しい顔をしている。
「……強引ではあったんですが、……その」
「すみません、私だけ忘れて……」
「いえ、そっちの記憶が消えて、もう俺らは終わったものだと思ってて」
……終わったのかぁ。
ダリアはとても悲しかった。……はじまるどころか終わってしまっていた……。でも、彼の気持ちを考えると仕方のないことだ。理解するのに少し心が追いつかない。
「……あの、状況は分かったのですが、ノルディックさんの身体に私の魔力を流さないといけないっていうのはどうしましょう。……私は構わないんですが、一生となるとノルディックさんが大変なのでは……」
「……大変ではないです。仮にも一度付き合ってたので」
仮にも一度。ここでも彼が付き合うのに乗り気でなかった事がうかがえるが、それでも付き合ってくれてたなんてなんて優しい人なんだろう。好き。
「……えっと、あと一部不都合のあるやつらっていうのは誰かわかりますか?」
「……それが、俺も直接相手と会ったわけではないので何人がこの件に絡んでいるかわからなくて。だから下手に動けないし、誰かに訴えようにも俺はただのヒラで大した味方もいないし、俺が実は宮廷魔術師のあなたとこっそり付き合ってたなんて言った所でそっちも覚えてないし証拠もないし誰も信じないだろうし…………俺だけ忘れれば、あんたも安全だし、何の問題もない話のはずだったのに……」
その時、昼休憩がまもなく終わりを告げる鐘が鳴る。もうすぐ午後の始業時間だ。
「……あの、信じます。余計なことはしないでおとなしくします。なのでまた明日です!!大好きです!!!」
ダリアは慌ててノルディックの頭を撫でまわして魔力を流し込んだ。
「えっ、あ、あの」
ダリアの仕事部屋はここから少し遠い。急いでそれだけやるとダリアは倉庫から走って帰った。
「……はあ。」
一人残されたノルディックもため息をつきながら、軍の訓練場に戻っていった。
――ダリアは今日言われたことを思い出しながら、ひたすら魔法薬を作った。
……なんで、付き合っていたのに忘れちゃったんだろう。はああああああもったいなすぎる。こんなに大好きな彼と付き合えていたというのに。記憶を消した相手って誰なんだろう。ゆるさない……よくも幸せな思い出を……!!!!
「はあ……」
「おーいダリア!ってぇ」
いつものように仕事部屋にロシィが訪れたのだが、案の定入り口の棚にぶつかっていた。
「っわあああ、……もう、またぶつかって……」
「わりぃわりぃ。薬草が納品されたから置いとくぞ」
「ありがとうございます……」
そう言ってロシィは大きな箱を入り口の近くに積み上げた。
「……なあ、今日三班みんなで飲み会なんだけど」
「いいいいいいいいいいいいいいいかいかいかないです」
「……だよな。分かって分かってる。一応聞いただけだから」
そんな話をしながらロシィはダリアのところに歩いてきて、また頭を撫でた。
「……あ、あのあの」
「二人で飲み会するか?」
「私っ!!未成年です!」
ビクッとしながらそう言ってダリアがロシィから距離を取るが、彼は慣れたようにケラケラ笑うだけだった。
「ジュースでも飲んどけよ。俺が酒飲むのに付き合ってくれたらいいし」
「……ひ、ひひひひ人が多い所は……」
「俺んち来る?」
「いやっ!!行かないです!!!」
密室も人がいるところもロシィがいる所も全部こわい!!!!!と首を横にブンブン振る。
「はあ。……なあ、お前最近変な奴らが近づいて来てたり接触してきてたりしないよな?」
「っは!?はい?」
「心配なんだよ。お前の魔法薬作る腕ってすごいしさ」
「わわわわ私は師匠の弟子なので、ヘッドハンティングとか意味ないですよ……!!」
「オリヴァー師匠の弟子だからってのもあるんだよ。お前に取り入るほうがオリヴァーさんに取り入るより簡単って思うやつらがいんの」
ダリアはハッとした。そうか、そういう人達もいるのか。
ダリアの師匠であるオリヴァーはこの国一番の魔術師だし、ダリア以外に弟子はいないし、本人も気難しくてよほど気に入った相手でないとまともに取り合わないような性格だ。自分ではなくてオリヴァー狙いの人間がダリアを利用しようと思う可能性だってある。これまで自分の周りの敵について考えたこともなくてゾッとした。その線も考えると結構いそうだ。
……でもそういう人たちが、ダリアの恋人の記憶を消すことに何の意味があるんだろうか。……まさか、ダリアを懐柔して付き合って結婚してオリヴァーに取り入ろうとか?いや、時間もかかるし遠回りだし、わざわざそこまでしなくても……。ダリアが考え込んでいると、その様子にロシィが気がついた。
「何、心当たりでもあんの?」
「……あ、いやっ……私ってそんなに使い道あるんですか?」
「あるある。は?誰かに声掛けられたりした?」
「いえ、ないですけど……」
「ならいいけど。なんかあれば俺に言えよ。俺オリヴァーさんにダリアのことよろしくって言われてるし」
「……はぁ……」
そうしてロシィは部屋を出て行った。また入り口の棚に肩をぶつけて出て行ったので棚の薬瓶がギンギンとぶつかり合っていた。割れたらどうしてくれるんだろう。
「……師匠かぁ……」
ダリアはひとり魔法薬を作りながら新しい可能性について考えてみた。
今自分はオリヴァーの弟子だが、彼は滅多に弟子をとらない。しかし偶然が重なって、死んだ両親が師匠の親友と言うのもあって異例でダリアは弟子として現在まで世話になっているのだ。彼に弟子入りしたい人間や彼に取り入りたい大人は数多くいる。
それによく考えたら、ダリアは王宮に出入りして育った関係で王子とも幼馴染で仲良しなのだ。ダリアを押さえておくと得をする人間はとっても多いのかもしれない。今まで交友関係が皆無だし人付き合いも最低限だし考えたこともなかった。
一体いつ、何が起きてこうなってしまったんだろう。こんな事なら日ごろから日記でもマメに書いておけばよかったとダリアは後悔した。
――翌日の昼休み。ダリアはいつも通り休憩室に使っている隠し部屋を訪れていた。
「……失礼します……」
「どうぞ」
相変わらず面接みたいに部屋に入ると今日もノルディックが先に席についている。彼はダリアを向かいの席に促して、座るのを見届けると口を開いた。
「……これからの事を会議してもいいでしょうか」
「はい……」
ますます楽しい昼休憩の空気ではない。
「本当は…………実は、俺に触るの週一とか…………もう少し間があいても大丈夫です」
「え!?」
「すみません。盛りました」
……盛ったぁ????ダリアはぽかんとしてノルディックを見た。彼との記憶はないはずなのにこんなことを言うなんて違和感が……わあかっこいい顔。好き。
「……な、なんでそんなことを!?」
「そこで、すみませんが抱きしめて頂いても?」
「はい!?!?」
彼は真顔で言っている。
「嫌ですか?接触が多ければ多いほど俺がもちます」
「……もち……い、いいい意識が持つと……????」
「そうです。なので撫でるのではなく抱きしめて頂いていいでしょうか」
「……撫でると数日で、抱きしめると一週間もつみたいなことでしょうか……?」
「まあ多分そうです」
随分と曖昧だが、大好きな彼が言うならそうなのだろう。し、しかし、だ、抱きしめると言っても、そういうのは恋人とか親しい人達がやることなんじゃないんだろうか。もう終わってる自分たちがやるのはどうなんだろう。ダリアとしては喜んでしたいところだが、ノルディックはどうなんだろうか。別に元カノなら抵抗はないんだろうか……。
「す、すみませんノル……ノルディックさん。ひとつお伺いしたいのですが、私たちは付き合っていたとおっしゃいましたが、ちなみにどちらから告白したんですか」
「………………気になりますか」
「とても気になります……!!!!!!」
「秘密です」
なにそれかわいい!!!すき!!!!
「なっ、何で!!……では、その、どこまでの関係だったのでしょうか…」
「…どこまでの関係とは」
「抱きしめ合ったりとか、その時はしてたんでしょうか」
「はい」
ひっくり返るかと思った。ノルディックと!?!?ハグ!?!?!してたのに!?!?忘れたの!??!もったいない!!!!今すぐ脳を掘り起こして切断された記憶の回路を繋ぎたい!!!!
「……今はできませんか」
「あっ!!いや!!その!!よっ…!!!!で、でででできできできできできます」
喜んでー!!!!!!と言いたかったが引かれそうでやめたけど、結局挙動不審過ぎて引かれてそう。
「……でっ、できるんですが!!じゃあ明日は会わなくても大丈夫という事ですか?撫でるより効くということは、こういう事する回数も少なくてすむ、と……か……」
ノルディックがゆっくりと席から立ちあがった。思わず喋っていた口が止まる。
ダリアの隣まで歩いてきくると、手をとった。ダリアはされるがまま立ち上がる。
それから、そっとフードを外してきた。ビクッと身体が強張った。慌てて俯く。彼の顔が好きすぎて見れない。
そのままダリアは抱きしめられた。ノルディックは背があってダリアは小柄なので、すっぽり腕に収まった。俯いていたので彼の胸に額がくっつく。
………あれ?なつかしい。
自然と体の緊張が解けて、彼の背に手をまわしていた。そのまま、何回か彼の背中を撫でる。
……知ってる。この感覚に覚えがある。
背中を撫でた時、ぴくっと彼の背中が少しだけ跳ねた。
「……覚えて、ますか」
「……や、……な、なんだか懐かしい感じがします……」
「……いつも、そうやって……あんたが背中撫でてて、」
ぽつぽつと彼が喋る。しかし、それ以降言葉が返ってこなかった。
……あぁ、私本当にこの人と付き合ってたんだ。
まさかと思っていたけど確信に変わった。体が確かにこの感触を覚えている。頭を撫でたのも覚えていた。
この人の匂いも声も感触も覚えてる。なんだかとってもなつかしくて愛おしくて、苦しかった。
「……やっぱりこっちにしましょう。毎日こっちじゃないと意識が飛びそうです」
「ええ!?やっぱり毎日なんですか!?……や、やじゃないですか……?」
「可能な限り毎日で」
ダリアは驚いてビクつくが、ノルディックが腕を緩めることはなった。ずっと抱きしめられている。
「俺の事が好きですか」
「す、好きです!!!!」
「どれくらい」
「なんだかとっても大好きです……!!」
「どこが」
「ど、どこ……どこなんでしょう……全部というか……」
「…………正直俺も分かってなくて。なんでこんなに好かれてたんでしょうね」
「……ご迷惑をおかけして……」
「いえ。あなたがあなたのままでよかったと思います」
しばらく、ふたりはそのままでいた。
こうなる前は、絶対にハグなんてできない!!気絶する!!!とダリアは思っていたのだが、……いざこうしてみるとなんだか帰るべき場所に帰ってきたという感じがして、今ではずっとこのままでいたいという気持ちが強い。
そのまま目を閉じた。寝れそう。はあ!!しあわせ!!!!
「……婚約者ができるできないの話はどうなったんですか」
……いきなり突拍子もない事を言われてまたしてもダリアは目を見開いた。こんやくしゃあ!?!?次から次へとどんどん突拍子もない単語が出てきてわけがわからない!!